ヤギの街のおはなし◇5◇

私は、この家の中を見せてもらうことにしました。
その濃い茶色のドアに手を掛けて、開いたときにはもう、わたしはここで暮らすことを心に決めていました。
こじんまりとした、そんなには広くない家でしたが、わたし一人が暮らすのには、十分でした。窓からは、森の様子がよく見えました。
そして、テーブルといすも、もう用意されており、それもまた、優しい茶色の木でできたものでした。
わたしは、とても、気に入りました。
「この家はとてもステキです。そして、とても心地がよい場所です。ここで、暮らせるのなら、こんなにうれしいことはありません。ありがとうございます。」
ヤギは、言いました。
「それは、よかった。わたしは、この森の番人のようなものですから、困ったことやわからないことがあれば、なんでも話してください。
わたしは、あなたが心のなかで呼んでくれれば、いつでもここに参ります。
でも、さきほど話した、《わるいもの》には気をつけて。心を開いてしまったら、私にはどうすることもできません。それは、あなたが自分でそのことに向き合い、どうすればいいのかを考え、自分のちからで選んだ道を進んでください。
大丈夫、あなたは、ヤギの街に、馴染むことができるから。」

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