#058 『天使にラブソングを』(1992)
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『天使にラブソングを』(1992)(100分)
原題:『Sister Act』
名作にちゃんとレビュー。伝統と革新による組織のありようについて感じました。
使徒の名前を言える人?の質問に「ヨハネ、パウロ、エルビス!」と書いてしまう幼少期のデロリス。
大人になり、歌手として活躍していたデロリスは、ギャングのビンスの愛人をしていたが、彼から離れるため仕事を辞める決意をしたところ、殺人現場に出くわしてしまう。
警察に逃げ込んだ彼女はビンスを訴える間、警察から修道院に潜むことを提案される。
デロリスはしばらくの間マリア・クラレンスとして振る舞うこととなる。
修道院長の指示で聖歌隊に入ることになり、彼女が輪の中心になっていく。
ある日のミサの後、神父様はいう。「音楽が、美しい歌声が、人を呼び寄せた。修道院は活気あふれてくる。」
もちろん。名作。まずは音楽やそのシーンの演者の笑顔。快活に動くデロリス!シリアスな場面でもコミカルなのは観てて楽しい映画だ。
冒頭に書いた通り、個人的には組織変革とか影響とかをすごく感じる物語だった。異物を受け入れることの大事さを教えてくれる。
舞台が修道院だが、会社だろうがどこでも同じ。デロリスという異物は自分の歩んできた、良きものをただ自然に、自然に伝えるだけであった。ただそれだけで賛同する人が1人また1人と増えていったのである。
僕が本作で1番好きなシーンはデロリスと院長と話すシーン。院長が長くいた修道院を離れることをデロリスに言う。
「役に立つところに行くのよ。長くいすぎて、時代遅れになったのです」
「一度遅れたってまた進めばいいことでしょ?せっかくいいことをたくさん始めたんだから院長先生も、参加すればいいことでしょ?」と返事をするデロリス。
僕がフォローするわけではないけど、院長のことも大事にしなくてはならない。変化は大事なんだけど、伝統も大事だ。院長先生を嫌われものにしてはいけない。だが院長が強くありすぎてもならない。
お互いが寛容に"いいものを選ばなくてはならない"のだ。
"来るもの拒まず、去るものを追わず"とは言うが、僕は無言で去られるのは悲しいと思ってる。精根尽きるまで戦う必要はないのかもしれないけど、変革を恐れている相手に恐れることではないと話してあげることは大事なのである。
舞台が修道院というのはそういう意味でとてもいい。話を聞くという力が誰にも備わってるからである。「出て行け!」「出ていく!」なんて話にはならない。
ただ現実の世界、特に日本人という民族意識のもとでは、異物が受け入れられるのは難しいことだ。伝統を重じて、異物へ歩みよりも少ない。
異物は取り込んで、新しい伝統を作る努力こそが尊く、1番の発展なのではないかなと思うのである。
付け加えていうと、異物ばかりを取り込みすぎてハンドリング出来なくなることにも気をつけなくてはならない。異物を入れればいいんだろ?それが望みなんだろ?というのはヤケクソであり愚かこの上ない。異物だからいいという変な価値観を受けいれるのもまた、何も考えていないのと同じである。