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流山市の教育課題、小1プロブレムに対峙していくために ~その⑤:意欲や楽しさ、非認知能力をはぐくむ保育園~森のまち ひなた保育園~を視察

流政会では 流山市の教育課題である小1プロブレムに対する対応策として、幼・保・小の円滑な連携に向けての課題を整理し、改善策を提案するため、特に、流山市にある民間の保育園や幼稚園に足を運ぶ活動を行っており、7月4日は南流山にある、森のまち ひなた保育園を視察、小沢えみり議員におつなぎいただきました。
森のまち保育園グループのホームページは「こちら」です。

意見交換の様子

森のまち保育園のなりたちと法人の理念

2009年、不動産会社を立ち上げ、2014年 社会福祉法人正心会を立ち上げるに至り10年が経過。やりながらビジョン、ミッションをブラッシュアップし続けてきた。最近はクリニックの事業も開設したが、法人本位での経営ではなく、地域全体の福祉をサポートできるようにしていきたい(多角化経営しているからこそ実践できる側面も)。保育園や小児科を整備していきながら、いずれは常勤ドクターを配置して、子どもたちの健康状態をみていただける環境づくりを目指している。流山市の福祉向上に貢献していきたい。

「知識量だけがあって選べない、考えられない」ではこれからの時代を生き抜くことは出来ない。知識が足りないと感じたら自分で気づき、学びたいという意欲や楽しさ、非認知能力を育てることが大切であることから、これに貢献したい。


各議員からの質疑

Q.1 歳児クラスで丸いシール使っての創作活動を見たが、どのような活動か?保育のめあてのようなものがあれば教えてほしい。

A)シールをはがす、つけるなどの指先の運動を兼ねています。1歳児はまだ指の感覚が未発達なので、はがしやすい環境を整えています。しかし、強制はせず、子どもの状況を見て、興味を持っている子どもたちに対して誘いかけながら取り組んでいます。自分でシールを選び、貼るという行為を達成することで、自己肯定感が育まれます。

歳児クラスで丸いシール使っての創作活動

Q.2 水遊びの光景をみたが、全員が参加しているわけではなかった。どのような活動なのか。

A)日常生活の中で手洗いは日常化していますが、1歳児は水に興味を持ち始めると、水道を出しっぱなしにする子もいます。しかし、水に対する自然な興味を持つことは重要です。興味を持った子どもには、「水を持ってきてみる?すると、洋服がぬれちゃうよね、ぬれてもいい洋服がいいよね」と声をかけ、水の扱い方を教えます。水に興味がない子どもには、色水などを使って興味を引き出します。その子の成長発達段階を見極め、興味を持つところから水遊びへとつなげ、遊びを通して学ぶことを大切にしています。

Q.3 なぜロボットを導入しているのか?

A)子どもたちが大人になる頃を見越した幼児教育を考えたとき、ロボットがあった方が良いと感じました。将来、子どもたちが大人になる頃には、ロボットと共に生活することが普通になると考えているためです。

Q.4-1 専務理事(森のまち おおたかの森ナーサリースクールの園長先生)のこれまでのキャリアは?

A)都内の某私立小学校で教頭まで勤めました。9年間、海外で保育を実践した経験もあり、プロジェクト保育という考え方を取り入れています。また、保護者からのニーズもあり、子どもたちが一生付き合える友達(生涯スキル)に出会ってほしいという思いから、習い事との連携事業を始めました。

Q.4-2 どのようなシステムか、詰め込み教育にならないのか?

A)お子さんが選択したいという意思が前提です。詰め込みにならないように、保育士が丁寧にサポートします。登園後に習い事の会場にお連れし、時間になったらお迎えに行きます。習い事の会場がショッピングセンター内にあるため、便利です。また、鰭ヶ崎にあるそろばん教室とも連携を始めました。
このシステムは早期教育を目的としたものではありません。例えば、人生の中で多くのストレスを感じるときにピアノを弾くことで解消されるなど、人生における友人を見つけられる機会を提供することを目指しています。共働き家庭では、平日に習い事ができないと土日が忙しくなりますが、平日に習い事をすることで、土日を家族とゆっくり過ごせるようになります。

Q.5 医療ケア児は何人受け入れているのか。

要配慮児童は2名おり、3歳児2名の受け入れを行っています。しかし、医療的ケア児については、看護師の配置が実現できていないため、現在は0人です。今後受け入れることが可能かどうかについては、職員配置的には問題ありませんが、児童の定員がいっぱいで受け入れが難しいという側面があります。1クラスに要配慮児童が5人いるとクラスとして機能しないため、5歳児、4歳児、3歳児などクラス別に配分することも必要です。

経営者の視点から見ると、収入面で常勤の看護師を雇用するのは難しいです。非常勤の場合、離職などで安定しないため、常勤看護師の配置ができるよう配慮が必要です。介護施設の看護師に兼務してもらいたいと考えていますが、多くの人は自分の専門領域でしか働きたがらない傾向があります。そのため、安定的な受け入れ体制を作るのは難しいです。

保育園については、人気の園とそうでない園で顕著な差があります。当法人は多角化経営で支えられていますが、園児の配分については、経営が確立できるよう園児の割り当てを調整しなければなりません。入園率が低い園への支援が必要です。保護者が駅近くに住んでいる場合、駅と反対方向の園に子どもを連れて行き、駅に戻って通勤するのは現実的ではないため、保育園の設置基準についても考えるべきだと思います。

医療的ケア児を受け入れるためには、収入面で必要な看護師配置を安定的にできるよう、行政の補助金の使い方を工夫してほしいです。

Q.6 要配慮児や医療ケア児受け入れに必要な看護師を常駐するには、どのくらいの金額に必要なのか。

A)看護師を常勤させるには、年収として400~450万円が必要です。全額の補助は難しいと思いますが、その半分を補助してほしいのが本音です。
もしそれが難しい場合、流山市では保育士に対して家賃補助(67,000円)があり、処遇改善1, 2, 3がありますが、看護師に対して充てられるものが少ないため、保育士並みの処遇改善ができれば嬉しいです。看護師も保育士並みの収入が得られるようにしたいです。現在は保育事業者の出費で実現していますが、みなし保育士としての認定基準を設け、それに対する補助をより検討していただきたいと考えています。

Q.7(保育士)職員の定着率はどうか。

A)3園の平均で離職率は10%を切っており、離職率が0%の園もあります。人と向き合うことを原則としており、向き合ったらその課題や問題をしっかりと拾い上げるという方針が全員に浸透しています。困難を抱えそうになった職員がいれば、必ず救い上げるようにしています。

Q.8 地域との関係について。地域の自治会もいろいろな行事が経営されている、当法人と地元と交流関係あるのか?

地域の自治会(木自治会、南流山自治会など)のお祭りに協賛させていただいたり、子どもミュージカルやロードレースに積極的に参加しています。まずは金銭的な支援が中心ですが、今後は保育士も参加できるようにしていきたいと考えています。

また、地域の方々を巻き込んでカレーフェスを実施しました。これは、カレールーをたくさんいただいたことがきっかけで、子どもたちと保育士たちがカレーを作り、保護者や地域の皆様に配りました。職員から主体的に地域向けの活動提案があったことは嬉しいことです。近隣の方々にお声がけし、園庭開放という取り組みも行っています。地域の方々と保護者が一緒に子育てができる環境を提供し、こもりがちな方々が集える場を作りつつ、地域とのつながりを築いていけたらと思います。

園内は夏祭りの様相でした

Q.9 法人側からも自治会へ積極的に話しかけるということが必要だと思うが、、

A)当法人が持っている特別養護老人ホームでは、廊下や共用部を広く設計しており、災害が発生した場合に避難場所として確保できるようにしています。この地域にも、母親一人でお子さんを見ているご家庭があり、そういった社会的弱者の方々の居住状況を極力把握したいと考えています。

福祉避難所としては、通常、老人ホーム分の備蓄を用意していますが、余分に備蓄を用意しています。地域で誰が避難する可能性があるのかを把握できると、さらに支援がしやすくなります。地域自治会と連携し、情報を整理し合うことで、より効果的な支援ができるよう努めていきたいと思います。

Q10 園として困ったな、面倒みづらい、というご家庭、お子さんはいるか?具体的な事例を教えてほしい。

当園では、暑苦しく向き合うことを前提としていますが、事情があるご家庭について、入園後に初めて分かったことがあります。入園前に行政が教えてくれれば、もっと支援できたと感じました。

①家庭環境を細かく共有していただければ、より暑苦しく向き合えるのに、できないジレンマを感じることがあります。
②ご兄弟が違う保育園に通っているご家庭があります。できれば同じ園に通えるよう、行政のサポートをしてほしいです(ご家庭の事情を把握した上で問題を明確にする必要があります)。
行政からの情報提供やサポートがあれば、さらに効果的な支援ができると考えています。

Q11「要配慮児かもしれない」と、保育のプロからみるとわかる子も、認定をうけてらっしゃらない(認めたがらない保護者)の方も多いと思うが、そのあたりについてのご苦労、具体的な声をいただけると嬉しい。

A)私たちから見て気になる子どもが数名います。ただ、保護者に日々の様子を丁寧に伝えていくことが大切だと考えています。「言葉の教室などは特別なことではない」ことを地道に伝えることが重要です。保護者がどのように受け取るかを想像しながら、一緒に子どもの今のベストな環境を見つける姿勢が大切で、それができれば保護者もすんなり受け入れてくれることが多いです。「障害があって専門施設に行ってほしい」ではなく、「この子のベストを見つけよう」という考え方が、実は健常児を含めどの子どもの育ちに対しても重要です。要配慮だからと特別視するのではなく、寄り添う姿勢が重要です。

また、流山市の小学校は大規模な学校もあるため、集団での学びに上手く適応できるよう療育に頼ることのメリットを伝えています。療育を受けることで、1年生に順応しやすくなることを説明します。文脈を伝えずに療育を勧めると、「うちの子は障害児なんですか?」という反発が生じることがあります。そのため、行政にはマッチングの部分に力を入れていただきたいです。

マッチングの質も重要です。例えば、おとなしい子が話すことを目的に療育に通ったのに、重度の子どもたちが多くいる場所では話さないで済む状況になるとミスマッチが発生します。そのため、療育先を変え、江戸川台に新しくできたところにつなぐことで、言葉が出てくるようになりました。

身体の平行感覚を養う遊具

Q12お一人一人のお子さんに向き合う保育・幼児教育の体制が、あたりまえになっていくことが理想だと思うが、どうすればよいか。

A)幼・保・小の関わりを全体的にもっとオープンにする必要があります。保育園や幼稚園が自分の園の運営だけにとらわれていると、井の中の蛙になりがちです。また、小学校も忙しく、カリキュラムを発信する機会が少ないため、保育園と小学校が互いに行き来することで、お互いをより理解できるようにすべきです。行政を通じて相手を知る取り組みが重要だと思います。一般的に、自分たちの園の当たり前を続けていると、園長先生もそれしか知らないため、一斉保育のまま進化しないことが発生しがちです。

民保協に加盟している園は77園ありますが、保育の内容などをより議論できるように、地域ごとに分散し、小集団保育などの具体的な保育の発信を交換できる環境整備が必要であると考えます。流山市の保育の向上につながる改革を行うためには、意識改革も重要だと考えております。

Q13  職員マニュアルについて。使ってはいけない言葉について(保育中に使わない方が良い言葉の一覧)整理されており、すばらしい。クリアファイルで整理されているのはなぜか?

A)時代に合わせて内容を変えていくため、赤ペンを入れたり、ページを入れ替えたりできるようにクリアファイルを使用しています。大切なお子様をお預かりする中で、全員がきれいな部屋で質が高い保育ができるようにマニュアル化しています。現在いる保育士のスキルを見ながら、必要なことを随時追加していきたいと考えています。

Q14 八王子市では架け橋期のよりよい教育を行っていくため行政でガイドラインをつくり、216園ある幼児・保育施設を行政がまわり理解を得る努力をしている。また各地域ごとに幼・保・小連携の日を設け、未就学児と小学校の学びの実践の理解をしあう機会を設けている。このような取り組みは有効か。また例えば、実践園として連携していただけるか。

A)このような取り組みは非常に有効ですし、連携も可能です。民間のノウハウを活用してお手伝いできることはたくさんあります。

また、私は小学校の教頭として従事し、幼・保・小連携についても携わった経験があります。教育は幼児教育から変わっていく歴史があります(小学校に受け止められていく)。小学校の先生方に働きかけ、小学校入学前に一度子どもたちの様子を見に来てもらうなど、連携の仕組みづくりに貢献できたら嬉しいです。

応援頂けると、他自治体への視察や研修費、専門家にアドバイスを求める、同じ思いを持つ議員さんに直接会いに行き対談する等、活動量を増やすことが出来ます。まっとうな政治を行うためのサポートよろしくお願いいたします。