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「流山市における公立幼児教育施設の存続を求める陳情書」不採択を主張した流政会の質疑・討論~2024.6議会~

この記事でお伝えしたいこと

 流政会では、以前の議会で「流山市幼児教育支援センター附属幼稚園廃園方針(こちら)」の見直しを求める陳情書が採択されたことを受け、私立幼児・保育施設が95%を占める流山市の幼児教育・保育の理想像を見出すため、様々な調査を行いました。限りある財源を効果的に活用すること、すでにある私立園の良さを活かして、住宅近くの園で質の高い幼児教育・保育を享受できる全市的な「子どもファースト」の実現にむけて、舵を切るべき時と判断し「流山市における公立幼児教育施設の存続を求める陳情書(こちら)」について、流政会は不採択といたしましたが、陳情は18:9の賛成多数で採択されました。議論の経緯を文字起こししたので、紹介いたします。

教育福祉常任委員会での議論
「全編(こちら:執行部の見解以降休憩があり)流政会質疑(こちら)」。
「公明党質疑(こちら)」「日本共産党(こちら)」「矢口委員(こちら)」「阿部委員(こちら)」「自由民主党」(こちら)」
「討論:矢口委員(こちら)」「日本共産党(こちら)」、「阿部委員(こちら)」
本会議(準備中)


流政会質疑

質疑①:陳情に要望されている公立での年間事業費は?私立の約5.6倍

(質疑)陳情書に書いてある習志野市の認定こども園に関して、2点質疑します。

まず最初に、陳情1で提案されている習志野市の公立の認定こども園、6園、定員数534名分、の運営費用について会派で調査したところ14億5,930万8,180円であることが分かりました。定員1名分の運営費用に換算すると、約273万円となります。流山の私立の認定こども園の定員1人当たりの運営費用をお答えいただけますか。また、公立が私立(わたくしりつ)の何倍になるかもあわせてお答えください。

 (答弁)令和5年度には、市内には私立の幼保連携型認定こども園が3園あり、3園の定員の合計は549人で、運営に係る費用の総額が、約7億7964万円、単純に定員数で割ると、在籍児童一人当たり約142万円となりますが、保護者が負担する保育料や国・県の負担額を除き、市の負担額にすると、一人当たり約46万7982円となります。

(質疑)ご質疑いただきました習志野市の例は、職員の人員構成や施設規模等が異なること、保育料や地方交付税による歳入の情報が無いことから、一概には比較できませんが、先ほどご提示いただいた約273万円は、約5.8倍となっています。公立と私立では毎年運営するだけでも、市の財政負担が5.8倍も違うということですね。

質疑②:公立の改修費・設立費の市の負担は?:新設の場合10倍以上

次に、習志野市で新設された公立の向山子ども園ですが、新設に13億2,455万1,000円かかっていることが分かりました。すでにある公立の保育園と合わせて認定こども園化するにも、給食設備などが足りないなど、さまざまな改修が必要だと思いますが、私立に比べ、市の負担が大きくなるとの認識でよろしいですか。

(答弁)国庫補助である「就学前教育・保育施設整備交付金」では、私立保育園の創設の場合、補助対象経費のうち、国の負担割合が2/3、事業者の負担割合が1/4、市の負担割合が1/12となり、改修の場合、国の負担割合が1/2、事業者の負担割合が1/4、市の負担割合が1/4となりますが、公立の場合、ご指摘のとおり市の負担が大きくなることが見込まれます。

質疑③:附属幼稚園の総括

(質疑)先日開催された意見交換会では、10年間の総括がないというご指摘がございました。これについて2点質疑します。
1点目、流山市幼児教育支援センターの附属幼稚園については(附属幼稚園というくらいですから)すでに実践園として果たすべき役割もあったと思いますが、幼児教育の推進及び、関係諸機関にどのように貢献できていたのでしょうか。問題点に焦点をあて、詳細をご答弁ください。
2点目、入園者数減っているとのことだが、増やすために何をやってきたのか、なぜ増えなかったのか、しっかりご答弁いただきたい。

 (答弁) 流山市全体の幼児教育の充実、推進に十分に貢献できなかったことは認識しております。幼児教育支援センター設置時から、専門職員の配置や業務の方向性等、その目的を達成するに十分な状況ではなく、結果として、市内私立幼稚園への情報発信が保幼小関連教育研究会等、一部のものに限られてしまいました。そのため、流山市の幼児教育の課題を共有する機会を積極的に設けることができず、市全体の幼児教育の実態把握と整理を困難にしていったと考えます。

その間、国からの要請や共働き家庭の増加など、社会ニーズが変化し、園児数が減少していき、附属幼稚園においても特別な配慮を要する子どもの割合が増えていく中で、流山市の比較的大規模な定員を持つ他の私立幼稚園に対し、同規模での実践研究の成果を提供することは困難であり、研究機関としての本来の役割を果たせない状況にもかかわらず、対策を講じることができなかったことは問題だったと考えています。

(答弁)定員数を増やすための運営改善が行えなかったと認識しています。具体的には、令和元年からの幼児教育・保育の無償化、令和2年からのコロナ禍の影響、さらに共働き世帯の増加など、急激な社会環境の変化があった中で、適時適切な対策を行うことができませんでした。3年保育、送迎バスの運行、給食提供などを検討しましたが、すでに実施している私立幼稚園も園児が減少し、定員充足には至っていないことから、市が取り組んだとしても成果に結びつかないと判断しました。
 魅力ある情報発信について、ホームページや園が発行する紙面の充実にも取り組みましたが、具体的な成果を上げることはできませんでした。
 就労や転居などの時期的な問題で就園先を見つけられない家庭や、様々な課題を抱える家庭の子どもたちを受け入れてきましたが、他の幼児教育機関や関係各課と十分に連携することができず、市全体の幼児教育の実態把握に努めてこなかった点は反省すべき点であると考えています。

(質疑)なぜ改善につながらなかったのでしょうか。当面附属幼稚園を存続できない理由になりますか。
(答弁)先ほど述べた問題に対しては、学校教育部が主体的に対応すべきでしたが、附属幼稚園の運営予算、管理、指導を担当する部署が2部3課にまたがっており、私立幼稚園の取りまとめは子ども家庭部が担っていたため、課題意識を持つことができず、依存する状況が続いたと認識しています。
さらに、この現状はあるとき突然発生したわけではなく、センター設置以前から続いていたものと考えています。
現在では、私立幼稚園の令和6年4月時点での充足率は7割程度まで下がっています。ここ10年間で公立においても、私立においても最も充足率が低い状況になっていることから、附属幼稚園の廃園方針の決定はやむを得ないものと考えております。

質疑④:総括での反省を踏まえ、今後の対策を整理

(質疑)1点目、流山における未就学児は何人いるのでしょうか。2点目、流山市の私立幼稚園を視察されたと思うが、どのような状況だったのか。幼稚園は幼稚園教育要領に基づき運営されていると思うが、公立と私立の違いをどのようにとらえているのか。

(答弁)流山における未就学児は1万4千人になります。市内すべての私立幼稚園を訪問したところ、すでに、各園の特色を生かし、時代のニーズを反映させながら、良質な幼児教育の推進が図られていることが確認できました。例えば、特別支援教育の専門家である大学教授を招へいし、園の職員への研修を行うだけでなく、当該保護者とも直接面談を行うなどして、幼児の支援にあたっています。
 また、すべての幼稚園において、特別支援コーディネーターもしくはそれに代わる役割を設置し、特別支援教育の実践方法について啓発指導を行うとともに、職員と保護者とのコーディネートを行っています。
さらに「個別支援計画」等が整備されているところも数多くあり、当該幼児の状況について、療育施設や、就学時の小学校との連携をしっかりと行っていることも確認できました。
 こうした現状に加え、公立も私立も幼稚園教育要領に基づき運営されていることから、私立園それぞれに建学の精神はあるものの、幼児教育の基本的実践については、大きな違いはないものと考えております。

質疑⑤:公がやるべきことは?

(質疑)流山市は、私立幼稚園、私立保育園が多い。先ほどご答弁いただいた流山市における未就学児、約1万人弱に対して、子どもファーストの観点から、公がやるべきことは何と考えているのか。

(答弁)施設類型を問わず、良質な幼児教育・保育を実践するために、幼児に関する相談支援や幼児に関わる職員の人材育成の支援、流山市版幼児教育の指針の作成、幼児に関する調査研究を行い、その結果を全市に広げる活動を一刻も早く始めることであると考えています。
 市としては、これまで、私立幼稚園への介入をしてこなかった実情がありました。しかし、効果的な財源措置を行い、相談役・指導役としての市と、私立園とで、幼児教育に関する課題を共有するとともに、私立園に対し、財政的支援や、相談支援、人材育成支援等を行い、連携を強めていくことにより、全体の幼児教育の質の底上げにつながり、流山市全域の子どもたちが質の高い幼児教育・保育を享受できる環境に向けて舵を切れると考えています。

質疑⑥:副市長に2点質疑

(質疑)困難さを持つ子どもたちが幼稚園に入れないという問題が発生していたと思うが、配慮を必要とするすべての子どもを私立幼稚園で受け入れることに向けて、どのような策を考えているのか。
(答弁)金銭面については、障害者手帳や療育手帳を所持している子どもさんで保育園ではなく幼稚園に入りたいと希望される方については、身近な幼稚園で対応ができるよう私立幼稚園協議会と協議中。
(質疑)要配慮児対して、流山市はどのように対応していくのか。流山市も財政が厳しくなってきていますが、しっかり確保していきますか。
(答弁)公立幼稚園が最後の砦ということがない用に、加配援助に対して財政支援していく。

流政会の討論

(討論概要)

私立幼児・保育施設が主流の流山市の現状を踏まえ、習志野市など他市の事例を調査し、公立と私立の財政的な差異を明らかにしました。公立施設の高コスト維持が困難であること、現時点での民間の実践を尊重し、全市的な「子どもファースト」「子育て家庭ファースト」の仕組み構築に舵を切った方が良いと判断したため、不採択としました。

(討論全文)

「陳情第5号 流山市における公立幼児教育施設の存続を求める陳情書」について、流政会を代表して、不採択の立場で討論いたします。
 
私たち流政会では、以前の議会で「流山市幼児教育支援センター附属幼稚園廃園方針」の見直しを求める陳情書が採択されたことを受け、私立の幼児・保育施設が95%を占める流山市における幼児教育・保育を推進するための理想の姿を見出すため、私立保育園・私立幼稚園の現場や、民間の児童発達支援センター、保・幼・小連携を推進している先進自治体である八王子市をはじめとした他自治体事例、陳情にもある習志野市などを調査してまいりました。
 
視察した私立保育園では、幼稚園教員としての経験を持つ園長先生が、11時間子どもを預かる生活の場としての環境づくりに苦心され、子どもの成長の土台を育てるために、子どもの「やりたい」を極力尊重する環境づくりを行っていました。
集団になじめない子どもを目の当たりにし「早期に支援する環境整備をしたい」と私費を投じて児童発達支援施設を設立されたうえで、個別の支援と集団教育の行き来を実践し、インクルーシブ環境を目指していこうとする私立幼稚園もありました。
 
北部には医療ケア児も安心して預けられる民間の児童発達支援センターが開設され「誰一人取り残さない子どもの育ちの環境実現に貢献したい」と夢を持っておられました。
 
保・幼・小連携を推進している先進自治体の八王子市では、216ある幼児・保育施設(うち9割が民間)の実践を尊重しながら、全体を牽引するためのガイドラインを作成し、その理解を得るため各施設を丁寧に回り顔の見える関係を行政が率先して作っていました。小学校の校長先生で組織された協議体で保・幼・小の連続性を担保する授業カリキュラム具体例を自らで動画を作成し公表するなど、小学校側も主体的に取り組んでいました。行政は、お互いの保育・教育実践を共有し相互理解を図るための幼・保・小連携の日を設け、全体の質の底上げを図っていました。民間の実践園では、医療ケア児が健常児と一緒にインクルーシブな環境で生活をする中で、健やかな成長を遂げている現場も見させていただきました。
 
視察したすべてにおいて、目の前の子どもに向き合い環境を整えようとする民間の試行錯誤があり、またそれをサポートしようとする行政の関わりがありました。「公立でなければできない」という発想を超えての実践があり「子ども真ん中」が実現できている感じました。
 
習志野市においては、公立の認定こども園の毎年の運営費について調査したところ、公立では国庫補助が増えることはないからか、流山市の私(わたくし)立園と比較すると、約5.8倍もの財政負担があることが分かり、習志野市の覚悟が感じられた一方、約6倍にもなるコストを維持していくのは流山市では難しいと思います。

「教育はお金では測れない」という主張は一定理解できるものの、財源は限られており、私たちは流山市全体の幼児・保育の持続的な運営に向けた予算配分について責任を持っています。
 
流山市の附属幼稚園は、流山市全体の幼児教育の充実、推進の実践園として、十分に貢献できなかったという答弁がありました。理由は、国からの要請や共働き家庭の増加など、社会ニーズも激変しており、園児数が減少し、附属幼稚園においても特別な配慮を要する子どもの割合が増えていく中、流山市の比較的大規模な定員を持つ他の私立幼稚園に対し、実践研究の成果を提供することは困難であること、附属幼稚園の運営予算、管理、指導を担当する部署が2部3課にまたがっており、私立幼稚園の取りまとめは子ども家庭部が担うという体制で、課題意識を持つことができなかったという総括がありました。この状況は、センター設置以前(13年以上も前)から続き、問題は徐々に大きくなっていったように思います。
 
私たちが視察した市内の私立園は、時代の変化に対して独自の工夫をし、財政的にも頼らず主体性をもって努力し続けて来られましたので、附属幼稚園が私(わたくし)立園の実践園としての牽引役を果たせるかというと難しいと考えます。
 
一方、委員会審議では「私立幼稚園に対し受け入れを強制できない」というご指摘がありましたが、私たち流政会は「強制はすべきでない」と考えます。子どもが持つ困難さは多様であるからこそ、子どもの特性と、各園が持っている多様な資源を適切にコーディネートすること、もっといえば、受け入れ園の困り感に寄り添い、子どもの育ちにとって最善の環境を共に開発していく機能こそ求められるからです。幼稚園は、私(わたくし)立を母体として戦前から子ども主体の教育の実践がなされ、全体教育の影響を受けずに発展してきました。
 
流山市全体のガイドラインは必要ですが、子ども主体をベースとした長年の歴史がある、幼稚園の建学の精神を尊重する姿勢で民間の多様性の良い部分を活かしながら、流山市全体の幼児教育の底上げを図っていく体制こそ、公として早急に作っていかなければならないと考えます。
 
委員会の中で流政会坂巻委員の質疑に「実際に配慮を必要とする幼児について保育園で既におこなっているコンシェルジュを配置し、幼稚園を希望するすべての園児が身近な私立幼稚園で対応できる加配に対する財政支援をする」と副市長が答弁されています。
 
限りある財源を効果的に活用すること、すでにある私立園の良さを活かし、流山市に住む子どもたち約1万4千人(これは北部地域の子どもたちも含みます)が近くの園で質の高い幼児教育・保育を享受できる全市的な「子どもファースト」「子育て家庭ファースト」の実現にむけて、舵を切るべき時と判断し、不採択といたします。

近藤の所感

賛成討論の中に「北部が全市の犠牲になれというのか」という主張がございましたが、これは危険な主張だと思いました。この主張するのであれば、逆がいえるためです(全市が犠牲になる)。
私たちは犠牲になる考え方はいたしません。誰一人取り残さないような仕組みづくり向けて、私たちは常によりよい環境を目指し調査し、提案をしてまいります。


 

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