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多摩川大世界
寒くなったらホッカイロ持っていきますねー。と言ったのは今年の春。
あれから長い雨が続く梅雨があり、暑い暑い夏があり、台風は来なくてほっとしたが、天候を気にする時、多摩川は今どうだろう?と同時に思う。
空は広く、姿のいいクルミの木の元、タープの下で飲みながら楽しく話していると自由な気持ちになるけど、365日天候をもろに体に受ける暮らしは命を縮めやしないだろうかと思う。
そう。多摩川の河川敷に住んでいるおいちゃん達。
多摩川を毎日自転車で走り回り、おいちゃん達や、おいちゃん達が面倒をみている捨て猫達に必要な物資を届けたり、怪我や病気の面倒をみたりしている写真家の小西修さんとともに、河川敷で多摩猫写真展&馬頭琴のミニコンサートをした。
その時、おいちゃん達にはとてもお世話になったのだった。
本当は、多忙でなかなかライブには来れない小西さんと河川敷住まいのおいちゃん達に聞いてほしくて馬頭琴持っていきますね!と言っていたのが、小西さんの素敵な発案で橋桁での多摩猫写真展。
そしてミニライブ。
で、わたしはてっきりおいちゃん達がお客様だと思っていたら、舞台設営から客席、ドリンクバーにいたるまで、用意してくれて、ふらりと来た人たちをおもてなししてくれたのだった。
(その時の様子はnoteの記事「多摩川のほとりで」に素敵な写真と共に紹介しています)
その後も打ち上げと称してもう一度多摩川にいき、お礼を兼ねてと菓子折(迷った挙句。。)持っていき、逆にまたもやご馳走になる。ということがあって、単刀直入に何が必要ですか?ホッカイロ?じゃあ寒くなったら持っていきます!という話の流れだったと思う。
小西さんがTwitterで河川敷に長く住んでいた人が突然亡くなったとツイートしてるのを読んで、思わずご馳走してくれたあのおいちゃんだったらどうしよう。。
と思っておそるおそる小西さんに聞いたら、施設に入ったということだった。
それは本当に良かった。
若くない。冬も、梅雨も、台風も、暑さも、体にこたえる。
もう1人のおいちゃんに会いにホッカイロの箱を抱えていく。小西さんはもう来ていて、そして施設に入ったはずのおいちゃんも来ていた。
まさか会えると思っていなかったのでびっくり。
施設に入る前には入院したと聞いていた。
顔の色も良くなって、本当に良かった。
施設での契約が切れたらこの近くに家を探すんだ。
そしたらいつでも風呂に入りにこれるしね。ともう1人のおいちゃんに話す。
もう1人のおいちゃんも、仕事を世話してくれる人がいて、10年かけて移住するんだ。ここを出るよと言っていた。
今回もご馳走が並び、またもやおもてなしを受けてしまった。
おいちゃんがお世話する猫がときおり、ふらりと顔を出す。
その瞬間小西さんは写真家になる。
動きは素早いのに、音も立てずに猫のように動く小西さん。
なんども助けてもらってる猫達ももちろん分かっていて安心してるのもあるけど、小西さんには足の裏に肉球があるのかもしれないし、猫と同じくらい体が柔らかいのかもしれない。
おいちゃん達に、秋に馬に乗って撮影した「風の馬」のミュージックビデオを見てもらっているところ。
小西修撮影
春に一緒に演奏してくれたパーカッションの前田仁さんも一緒に。
小西修撮影
次々とおでんを追加したり、おもてなしが凄い右の方。
小西修撮影
何を笑ったのか思い出せないんだけどとにかく笑いっぱなしだった。
施設で暮らし始めたおいちゃんは物凄い気が利く方で、気配りと場を盛り上げようと、楽しくしようとする気持ちで体も心もいっぱいなのだ。
小西修撮影
またやろうよ。
今度はさ、こうしてああしてと案を出してくれるおいちゃん。
また聞きたいと思ってくれて、あの時聞いた音が耳から離れないんだよと教えてくれて、演奏の機会がめっきり減って、サンデー毎日のわたしは、何のために家にいるんだろうか?と時折思うのだが、励まされてすっかり元気をもらった。
小西さんが言った。
あの時2.3日食べてない人もいたかもしれないし、遠くから来てくれたおいちゃんもいたの。
その人達が、みんなさ、風の馬を聞いて、なんか涙出ちゃったな。
わたしもまた、生きることにいっぱいな環境で、耳を傾けてくれているこの場の人たちと、過酷な環境に生きで死んでいったこの橋桁のまわりにいた多摩猫達の写真を背中に感じて感動していた。
多摩川大陸と小西さんは呼ぶ。
そんな小西さんを追ったドキュメンタリー映画も今撮影真っ最中。
監督の村上浩康さんは春の河川敷写真展とライブに一番乗りできていて、橋桁に飾られた猫の写真をとくとくと見ていた。
小西さんはたくさんの猫達から、この橋桁を住処にしていた猫達を選んだそうだ。
深く感心している村上監督は、まさにこの日に小西さんを映画に撮ろうと思ったたいう。
だいぶ迷惑になるだろうなと思うので、小西さんがどんなふうに多摩川をまわるのか、一度付き合ってみたいと思っても断念していたが、村上監督の手によってそれが叶う。
ただ、村上監督は小西さんのようなあの猫の動きが出来るのか、藪の中に生きる猫達は身を隠してしまわないか、何しろ村上監督は背が高くて声が大きい。先日、村上監督の語る自身のドキュメンタリーの作り方なる大変楽しい講座に参加したのだが、なるほど!!と手を打つような作り手の創意工夫が知れて、それが生かされてどんな作品になるか楽しみでもあり、でも小西さんを追いかけて猫やおいちゃんを撮るなら、小西さんの動きにシンクロしないと、撮り逃すのではないかと余計な心配。(大変失礼しました。)
ともあれ、多摩川をめぐるこの世界を私は小西さんによってほんの一端を垣間見て、関わることができた。奇跡みたいな出会いだなと思う。
まだあたたかい、まだあたたかい。とおもっていたら、いきなり冬が来た。
我が家も今朝はマイナス6度。
河川敷のおいちゃんや猫達はどうしているだろうか。
小西さんはあの寒い風のなか、さらに風をきって自転車にのり、おいちゃん達に必要な物資を届けて、虐待で怪我した猫、病気の猫の世話を今日も続けている。
小西修撮影