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人生はグラデーション。鹿児島の島々もグラデーションで繋がる、リトラボの取り組みから学んだ3日間のこと。

その名も【 鹿児島離島文化経済圏 】

2022年9月12日〜14日
3日間にわたる、鹿児島離島文化経済圏(通称:リトラボ)のセイルミーティング(2022年度リトラボカレッジ開校式)と、甑島でのフィールドワークに行ってきた。インプット量が多すぎて、未だに全ては消化できていないけれど、記憶が新鮮なうちに記録に残したい。

day1は鹿児島県庁で。day2-3は甑島のフィールドワーク。

移住者が知っておきたい、兄の哲学から得たたった1つのこと

day1のセイルミーティングに参加した理由はただ一つ。
麓(ふもと)憲吾さんの言葉が聞きたくて。
どのように行動し続けてきたのかを聞きたくて。

鹿児島県庁18階のかごゆいテラスにて

島のパッションが集まるライブハウスASIVI(アシビ)を作り上げ、その後NPO法人ディを立ち上げて地域に密着した”コミュニティFM”あまみエフエムを生んだ憲吾兄。

哲学とも言える兄から発せられる言葉ひとつ一つに、私の心は握り拳でグっと捕まえられて、気づけば泣いていた。

憲吾兄の人生の軌跡を惜しみなく話してくれた

特に「ウチとソトのビジョンの差異」というキーワードが一番心に響いた。
例えば、何か同じテーマを“島ッチュ”と”外からきた人”が議論する際に、ウチとソトでは、見ている世界や話の解像度が違うことが往々にしてあるという話。

首がもげるのではないかと思うほど縦にふり、頷きまくりの私であったが、どう足掻いても自分はソトの人・・。
ずっと抱いていたコンプレックスを掴まれたような気がして、自分への問いを持って翌日のフィールドワークに臨むことに。

day1の2部 離島×未来の課題探究 グループディスカッションを終えて

挑戦する勇気がお前にはあるのか?

day2-3はフィールドワークで甑島へ。人生3回目の甑島。

リトラボの主催者でもある山下賢太さんの会社、東シナ海の小さな島ブランド株式会社の10年間の軌跡と、島に暮らし事業を行う地域の方達の取り組みの、リアルな現場を見せてもらった。

オソノベーカリーで今までの歩みを教えてもらった
ヒラミネファームのアロエの栽培風景
こしきツアーズのお土産売り場にあった芸術作品
陽暮れ時に過ごした夕涼みの時間

去年2021年、甑大橋が完成して
上甑島・中甑島・下甑島の3つの有人離島が1つに繋がった。

大きな橋の上で、ミジンコジャンプ
白亜紀の地層と透き通る海
太古の昔から生き続けるバクテリアも生息する眺めの良い「長目の浜」

各地を案内してもらって、どの場所でも多くの気付きがあったが、
特に自分の中にガツンと響くものがあった場所は、会社本社の山下商店がある集落から、遠く離れた下甑島の空き家改修の現場。

地域の人からも「ここに家があったんか!?」と云わしめるほどのジャングル雑草に囲まれていた、空き家掃除の現場を見せてもらった。

庭の雑草をかき分けて着いた先には時間が止まった家があった

内からたぎる想いに組み合わせていくもの

ジャングル雑草を抜けた先にある家の外見は、まさに放置され続けた空き家そのもの。”住めるような場所ではない”と人々から見放されてきた家。

数十年も前の生活感の残る家を、そしてある時から時間が止まった空間を、つい最近みんなで掃除したんだ。と、空き家の一角に広がる、奥が見えないほどのゴミ袋の山を見せてもらった。

仕事が休みの日には、片道1時間半も北から南へと車を走らせて、たった1〜2時間だけ空き家の片付けをして、帰路につくという。

これ以外にもまだまだゴミ袋の山があった

(いやいや、賢太さん、、、なぜこんな「見えない壁」しかないことに取り組んでいるんだ・・・)
(あなたは何を求めて自分の貴重な時間を使っているの・・・)

私の心の中は、彼が何故この行動ができるのか、疑問だらけ。

でも、家の中の空間を見せてもらった時、数十年と空き家だったのにもかかわらず、シロアリ被害もなく、頑丈に組み込まれた梁と柱の艶やかさ、”何かに守られていたような”立派な古民家の姿に驚いた。
江戸時代に使われていたであろう食器も綺麗な姿で残っていた。

詳細は省くが、彼がこの空き家に辿り着いた経緯は、FUJIYA HOSTELに泊まった知らぬ旅人からの一枚の手紙から始まったらしい。「君にしか託せる人がいない」と。

遠くの未来を、でも急がねばならない未来を見つめて話をしているようだった

私は、その体験談を聞きながら、現役にも勝る立派な梁を見ながら、
「凄い・・」という言葉しか出てこず、語彙力の無さから「凄い」という単語を20回以上は口にして、思いを吐露していた。(空気感に圧倒されていた)

時間もお金も労力もかかることが目に見えているこの現場。そこに向かう彼の姿が、この旅の中で一番の衝撃だった。

リトラボのセイルミーティングとフィールドワークで得たもの

今回の2日間の研修で、たくさんの場所を案内してもらい、いろんな人の話を聞くことができた。いくつか感じたことを言語化しておこうと思う。

山下商店の前で

●行動原理とは

人が行動する理由は
「内的要因(希望や憤りなど)と共に
外発的な要因のご縁やタイミング、自分の人生の使命への意味付けが合致した時」
なのだと知らされた。

●陰と陽、攻と守

彼の今までの挑戦も、新たな挑戦も、もの凄いパワーであることを知った。
また、それと同時に、それらを支え共に歩む家族や会社の仲間たちも凄い。
周りの人たちに心から尊敬の念を送りたい。

オソノベーカリーの庭で。ごったんの素朴な音色と歌声が響き渡った。

●そしてウチとソト、グラデーションのように繋ぐこと

そして私自身は、
いくら足掻いても、島のウチの人にはなれない。
移住者・関係人口・外から来た人、ソトの人。

憲吾兄や賢太さんが、幼少期や学生時代に見た「島の原風景」を理由に、心が動き、行動している姿がカッコ良く、背中を追いかけたいと思っていた。
一方で、同じように語ることができない悔しさをいつもどこかで感じていた。

「島に移住して家を建てたとしても、3世代暮らさないと島人認定されないんだよね。」
9年前、奄美に移住したての右も左も分からない時に、移住者の先輩から聞いた言葉。

その言葉がずっと心の奥のどこかに残っていたのだと思う。
私は島人(シマッチュ)にはなれないので「島の原風景」を理由に行動することができないことに、言葉の説得力の無さをずっと感じていた。

でも、今回の旅を通して、私にも自分しか語れない行動原理がちゃんと存在していることに気付いた気がする。

まだうまく言語化できないけれど、私には私なりの行動する理由がある。
そして、島の原風景は思い出せずとも友人たちから聞いたり調べたりすることはいくらでもできる。ウチとソトのビジョンの差異にならないように気をつけながら、想いをしっかり汲み取ることだってできる。
そして、なにより、一緒にやろうと言ってくれる仲間たちが島にいる。

だから私も挑戦を止めたくない。

さて、これから。
今まで移住や転勤で生活環境が変わり、その都度、点でしか考えてこなかった小さな経験を、分断して考えていた自分の行動を、グラデーションのように繋ぎ直し、意味付けすることができそうな気がしている。
そして、ようやく今までの喪失感を昇華させ、新たな挑戦を始めようと準備しているところである。

私にとって甑島は、自分の人生が大きく動く前に訪れるというmy謎ルールができつつあるが、今回も漏れなくそのルールに則ることになりそうな、大きな大きな気付きを得た2日間の研修だった。

育児を完全に任せて単身で研修に行かせてくれた家族と
共に同じ時間を過ごしてくれたみなさんに感謝の気持ちを込めて。

下甑島 手打集落の海岸にて

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