向日葵の見つめる先に
向日葵の花言葉を初めて調べた。
あの人との7回目のデートの日。そんな何でもない日に花言葉を添えて向日葵をプレゼントしたら、可愛い女の子になれるかなと思ったからだ。
向日葵をプレゼントなんて男の人はキュンとくるに違いない。いや男の人だけじゃない。青空を背景に、まっすぐな笑顔と一緒に向日葵を渡せたら、世界中のすべての人に愛される気がする。
お花を育てる女の子にもすごくあこがれる。もし私が男だったら、「庭に植えた向日葵が花を咲かせたよ!」なんて嬉しそうに報告してくれる女の子と結婚したい。
仕事に疲れて家に帰ってきた時、庭の向日葵とその子の笑顔があれば、今日もよく頑張ったな、また明日も頑張ろうと思うに違いない。
そんなふうに、相手の心を明るく照らす女の子になりたいなと、いつも羨ましかった。
「あなただけを見つめる」「熱愛」「情愛」
向日葵の花言葉はどこかひたむきで、見つめているけれど叶わないような、少し寂しい印象をうける。
調べ進めていくと、花言葉のひとつ「あこがれ」に目が止まった。
「あこがれ」の花言葉は、向日葵が太陽の方向に向かい、花の向きを変えることから来ています。
「あこがれ」かぁ。
お花を愛でる女の子にあこがれている。その一方で、飲み会の最初に「とりあえずビール」と頼む女の子にもあこがれている。
居酒屋にある2時間1,500円飲み放題は1杯1,500円になってしまうし、飲むのが遅いから周りの人に次のお酒を勧めるタイミングも遅い。そんな自分をいつも憂鬱に思っていた。
一緒に楽しく飲めて、同じようなペースで酔える「とりあえずビール」女子になりたかったなと思う。
多分それは、一緒に飲む人を楽しませて、その場を明るくもりあげるような人だから。
そうやって私はいつも、誰かを明るく照らす”太陽”にあこがれていた。
帰り道、向日葵を1本買ってみた。写真を撮ってinstagramにあげて、次の日誰かにプレゼントしたら、私もみんなに愛される「お花を愛でる女子」になれるかなと、ちょっと期待をした。
「とりあえずビールで!」
初対面の人が集まる飲み会に参加した時、今度こそと思って言ってみた。お酒を10年近く飲んでいるんだもの、そろそろ場を盛り上げるビール女子になれるんじゃないかな。
だけど。
頼んだ飲み物がそろい、みんなで乾杯して、ひとくち飲んだときに思い知らされた。
きっと私は、この先もずっと”向日葵”と同じ存在だ。あの子たちみたいに、向日葵を向かせる”太陽”にはなれない。あこがれのあの子たちは、永遠にあこがれでしかないのだろう。
買った向日葵は、結局恥ずかしくなってinstagramにも載せず、誰にもあげられず、しおれてしまうに違いない。
ビールは飲み会2時間後も半分以上残っていて、「ぬるくなっちゃったから、別のを頼んだ方がおいしいよ」と、初対面のビール女子に助けられてしまうんだ。
だって、ほら、いつもと変わらず、ビールが苦い。
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「最初と最後の一文が決まった文」を、7人で書きました。書き始めは「向日葵の花言葉をはじめて調べた」、書き終わりは「ビールが苦い」です。
https://note.mu/ikeikeikkei/n/n9a50800cc95b
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