趣味なんて宣言しちゃえばいいんだ
大学生まで趣味がなかった。正確には、趣味と呼んでいいかわからなかった。
好きなものは沢山ある。でも、どれも私よりもっと好きな人がいて、私なんかが趣味と呼んでいいものだろうかとずっと悩んでいた。
カラオケは好きだけど、必ずわかりやすく音を外す。本も好きだけど、読むのが遅いから月1冊くらい。カフェだって、行くのはいつも居心地のよかった立川駅北口のエクセルシオールだった。
カラオケの精密採点で何点取れば、週何冊本を読めば、1駅に何件カフェストックがあれば…一体、何をクリアすれば趣味と呼んでいいのだろうかと悩んで、結局言えなかった。
唯一そこから抜け出したのが、旅行。これだけは趣味と言いたい!と思って国内外を旅して、旅行業務取扱管理者の資格まで取った。
そのおかげで今は趣味を聞かれたら、堂々と旅行を、加えて読書(と、時々さんぽ)を言っている。
堂々と言える趣味が出来ると、そのほかはちょっと甘くても付け足せるようになった。
読書はまだ月2〜3冊だけだけど、旅行の影に隠して言える。1人散歩は実はちょっと苦手で、2人散歩が大好きだからたまに言う。
でも、こんなに考えて考えて考え込んでいるのに、いざ言ってみるとみんなの反応はいたって普通で、「へぇ」くらいにしか言われないのだ。
「あなたより極めてる人はいっぱいいるけど?」とも、「それってどの位好きなの?」とも、「本当に趣味と呼べるの?」とも。
誰も私の趣味が「本当に趣味か」なんて追求することなく、それよりも「どの国が一番面白かった?」とか、「最近読んだ本は?」とか、「どこ散歩するの?」とか、中身の話を聞いてくれる。
なんだ、趣味の定義って自分で決められて、それが本当に趣味と呼べるものかなんて他人は全く気にしてないんだ。それに気づくのに資格まで取っちゃったよ!と、最近になってようやく思えるようになってきた。
好きなものがあるなら、定義とか周りとか考えずにとりあえず言ってみよう。
ちなみに今まだ趣味として言えてないことは、「おいしいカクテルを飲むこと」。だって1晩で3杯も飲めないから。でも好きだし、いいよね。
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