勝手にやってしまうこと
「もし自由に生活してもいいと言われたら、何をしますか?」
お昼すぎたカフェの中。正面に座っているAちゃんは、腕を組み、首をかしげ、左上を見上げました。考える時に左上を向くときは、過去のことを思いだしているのだと聞いたことがあります。Aちゃんは過去にそんな出来事があったのか。それとも、これまでの行動の中から、回答を見つけようとしているのか。
テーブルには1枚の大きなお皿と、水出しダージリンティの入ったグラスが1つづつ。ダージリンティは残り3分の1くらい。お皿には、大根のピクルスが残っていました。ホットドッグとセットで出てきたけれど、酸っぱすぎて食べられなかったそうです。
「難しいですね」と、Aちゃんはつぶやきました。上を向いていた目線は下に移動し、そしてぽつり、ぽつりと言葉を選ぶように話し始めました。
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「たぶん、同じ仕事をしていると思います。でも、週3と週2くらいで、違う職場を行き来したい。土曜日は朝から夜中まで友達と遊んで、日曜日は遅くまで寝ていたい。そして、クーラーの効いた部屋で、温かい紅茶を飲みます」
生活に困らない分のお金がもらえても働きたい、とAちゃんは話しました。けれど、困らないのであれば、家事はやりたくない、とも言います。
「ご飯を作ったり、洗濯をしたり、部屋を掃除するのは、必須だからしています。外食ばかりだと飽きてしまうし、すべてクリーニングもお金がかかる。部屋も、掃除の人を雇うまではいかないし。きれいなものを着ていたいし、整った部屋で暮らしたいから、我慢してやっています」
家事はしないで、2つの職場を掛け持ちして、週に1日はゆっくりと暮らすのが理想だというAちゃん。けれど、やりたくないことも、家事ぐらいなら許容範囲だと話します。
「家事は嫌だけど、あってもいいかなぁとも思います。ちゃんとやれば結構気持ちがスッキリするので、日々のちょっとしたスパイスかもしれない。嫌だなと思っていても、やった後の気持ちよさがあるから、続けられちゃう、みたいな。
今のところは1人分で大丈夫だし、そこまで負担じゃないから。これが複数人分をやるようになって、大きな家に引越したら、多分耐えられなくなるかもしれないけれど」
結局、今の生活と変わらないってことなのかな?と聞いたけれど、すぐに返事は返ってきません。右手で頬杖をついて下を向き、何やら深刻そう。
「将来のことを考えなくて答えていいなら、もし自由に生活していいと言われても、しばらくは今みたいな生活を、やり続けていくような気がします」
言い終わった後も目線は上がってきません。Aちゃんはそのままグラスをつかみ、残っていたダージリンティを飲み干しました。
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こんな質問、ただの想像なんだし、もっと楽しいことを考えてもいいのに。
彼女が勝手にやってしまうことは、「難しく考えて思い悩むこと」なんだろうなぁ。Aちゃんの考え込む姿を見て、そんなことを感じました。
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