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キウイ。 〜音楽と私プロローグ〜
「みほさんは、どうしてシンガーソングライターをしているんですか?」
出番を待つ、とあるライブハウスの楽屋でのこと。
美味しそうにフルーツをもぐもぐ食べながら、同じく出番を待つシンガーソングライターの子が、不意に質問してきた。
彼女が手にした小さな透明のプラスチック容器には、6つの輪切りにカットされたキウイと綺麗に皮の剥かれたみかんが入っていた。出かける前にお姉さんが持たせてくれたそうだ。
(楽屋に新鮮なフルーツを持ち込んでいる人をあまり見たことがなかったから、新鮮だった。)
「え!ええっ!!!
うんとね、ある日突然、あ、やろっかなぁって感じかな!ははは!」
私はそう軽めのトーンで返答し、少し微妙な空気が流れた。
・・・またやってしまった。
私は質問されることがあまり得意でない。
自分に矢印が向いていることに対する居心地の悪さ、そして、すぐに答えなければ!と不思議な使命感にかられ、結果的に脳みそを通さずに軽めのトーンで返してしまうことがよくある。これじゃあコミュニケーションではなくて、ただの反射だ。
今回も例に漏れず、上記のような面白くない回答を咄嗟にしてしまった。
「あ…そうなんですね。」
優しい彼女は続けて「まあそうですよね、私もそんな感じです!」と、素敵な笑顔で返してくれた。そして、「一個食べます?」とキウイをくれた。
せっかく聞いてくれたのに、こんなんじゃ、会話が広がらないじゃないか・・・。
こうして私の脳内大反省会が始まるのである。
話は少し飛ぶが、以前、北海道日本ハムファイターズの新庄監督がinstagramで素敵なトレーニングショットの自撮りとともに「努力は一生、 本番は一回 、チャンスは一瞬」と投稿していた。
それが私には強烈な印象を与えて、気が引き締まったのを思い出す。
音楽も同じだから。
会話も同じだ。
「みほさんは、どうしてシンガーソングライターをしているんですか?」
私は、彼女からの質問という大事な本番の一回を、はぐらかすことで逃してしまった。
あれだけ新庄監督に言われたのに。言われてないけど。
(関係ないが私は子どもの頃から大の横浜ベイスターズファンだが、近年パリーグはファイターズ推しだ。エスコンフィールドが好きだからである。)
「私はどうして、シンガーソングライターをしているのだろう?」
よくよく考えてみたら、ちゃんと言語化できていなかったかもしれない。
思いを誰かに伝えるのは、とても難しい。
新庄監督の話とは矛盾してしまうが、いつの日か彼女と再び会う機会があったら、この会話のリベンジをさせてほしい。
そして、彼女ともっと深く話したい。
雑談の一種で、そんなに深い意味で聞いたわけじゃないと思うよ、という声も聞こえてきそうだが・・・
次に同じ質問をいつ聞かれてもいいように、次回からのnoteでは、なぜ今、自分がシンガーソングライターをしているのか、綴りながら自分でも答えを探っていきたいと思う。
それにしても・・・
あのキウイ、美味しかったなぁ・・・。
心の中はとてもホロ苦かったけど、体の中はとてもみずみずしく甘くなった。
あの日、楽屋で食べたキウイの味。
これから毎年冬になると思い出すのかな。