Mさんの旅立ち
お久しぶりすぎる投稿になってしまいました。
日常が激しく多忙になり上手に自分時間を作れませんでした。
さて、今回は先月家族の見守られる中,旅立たれたMさんとの関わりについて振り返ってMさんに思いを馳せる時間にしたいと思います。
Mさんの本当の思い
昨年より腫瘍内科で抗がん剤治療を続けてこられたMさんは今年に入り痙攣発作で救急搬送されました。検査の結果,脳転移が見つかりました。
それまでは大きな症状はなかったのですが
時々頭痛があると話すことはありました。
軽症だということで経過観察していたのと、
元々の疾患から考えて脳転移はごく僅かの確率であったため,主治医は画像検査まではしていませんでした。
ただ、Mさんのがんは悪性度が高く今後はどの程度治療効果が期待できるかわからない状況ではありました。
転移の説明を受けたMさんは動揺が隠せず
泣いてしまう場面もありました。
とにかく手が痺れるだけでも痙攣が起きるのではないかと動揺し始めて、スタッフが関わっている間も症状がはじまると腕をさすって欲しいや、
怖い,怖いという訴えが見られました。
そんな中でもMさんは全脳照射と抗がん剤治療を併用し、痙攣の再発予防を目標に病気と向き合っていました。
退院後、初回の外来診察で腰痛を訴え始め、
画像検査をしてみると
骨転移疑いのレポートがついていました。
痛みを緩和する為の放射線治療の提案がなされて
再び放射線治療のための入院が決まりました。
(Mさんのがんのタイプは悪性度が高いためどんどん進行していく経過を辿ることが多いと後から主治医に確認しました)
Mさんの不安はピークとなり、外来看護師だけではフォローが困難と考え、急遽がん相談を担当している緩和ケア認定看護師に介入を仰ぎました。
認定看護師との関わりで不安だらけのMさんが
徐々に気持ちを落ち着かせて自身について
色々な思いを表出されるようになりした。
Mさんは
シンガーソングライターでもあり、今の目標は
「また歌いたい」ということでした。
以前より腫瘍内科や治療室で関わっていたスタッフたちはその事実を知ることなく、そんな素敵な活動をされていたことにスタッフ一同驚きを隠せませんでした。
私たちは以前より
遠方から治療を受けにきていることに対して、
どんなフォローできるかなど検討することしていましたが、
治療中はどうしてもセルフケア支援に傾く傾向があり、副作用についての支援に重きをおいていました。
ですので、
「本当はどうしたいですか?」
「どうありたいですか?」
とMさんに対して最も重要な部分の関わり方が
出来てなかったと反省しました。
病棟との連携
腰痛だった部位は骨転移だとされ
入院後、その部位の骨折が判明し、頸椎も骨折しているとして、首にはカラーを腰部にはコルセットをつけて動作も制限されることとなり、
予定していた放射線治療も計画の半分で
効果が期待されないとして終了となりました。
落ち着きを取り戻していたMさんは再び不安が強くなり夜間の頻回のナースコール,不眠など
安心して入院生活を送れられない状況となりました。
追い討ちをかけるように
Mさんの残された命の時間は1ヶ月前後との
病状説明があり、両親や兄たちの動揺も大きく
なぜもっと早くに対応できなかったのかと
主治医を責め立てる場面もありました。
それでも、緩和ケアチームのサポートの中
Mさんの曲をかけながらケアしたり、
また歌いたい!Mさんの目標に向かい
スタッフも毎日精一杯の看護をしていました。
Mさんの思いに向かって
放射線治療が期待されないとなり、
今後は緩和ケア中心になることになりました。
本人や家族より治療を続けたいと強い希望もあり
効果がそれほど期待されなくとも、
分子標的薬の治療を外来で続けることに
なりました。
今回の入院で動作がかなり制限される状況となり
家での生活環境を整えるために退院前に
さまざまな調整がされ、家族へのサポートも含めて,退院後の治療室での関わり方について
動画などで引き継ぎがありました。
特に痙攣発作に対する不安が非常に強いMさんが
安心できるように薬剤の準備などもして
受け入れ体制を整えました。
実際には退院後2回の外来治療しか受けることができず、あっという間に状態が悪化して
再入院となり緩和病棟へ転棟された翌日に
ご家族が見守られる中、Mさんは旅立たれました。
Mさんとの関わりを振り返る
腫瘍内科外来や化学療法室での関わりは
どうしても治療を受けておられる患者への
看護という部分が大きく、セルフケア支援に
偏りがちになりやすいと感じました。
加えて,今回のMさんの病態は進行が早く
思い通りに過ごせる命の時間が多くない状況
でした。
日々のセルフケア支援をすることは
まちがいではないのですが、
今どのような思いと向き合っておられるのか
どんなことで心が揺れ動いているのか
Mさんの何が不安を大きくさせているのか
をもっと汲み取ることができていたならば
アプローチの仕方が変わっていたかも
しれません。
今回、緩和ケア認定看護師が介入したことで
Mさんの大切にしている思いやこれまでの
人生の物語=ナラティブが大切だと
再認識した症例でした。
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