USとEU、2つのLLMに留学してよかった?2021年の振り返り
2021年前半はアメリカで生活してUC Berkeley LL.M.プログラムで勉強し、後半はドイツで生活してMIPLC LL.M.プログラムで勉強しました。まだ道半ばですが、2つの国に留学した感想を、2021年の振り返りとしてまとめたいと思います。
2つのプログラムに留学して・・・
EUとUSの法律を両方学ぶことができて楽しい
まずUC Berkelyで勉強する中で、アメリカの法律が根本的な考え方から日本と異なる点が多々あることを知り、日に日にEUの法律も勉強したいという思いが強くなりました。そのため、次にMIPLCに留学することで、USとEUの両方の法律を学ぶことができとても充実しています。
これらの法律の違いは、歴史的、文化的な背景を理由に異なっているというのが興味深いです。例えば、EUとUSでは著作権制度の成り立ちが違うことを知りました。EUでは著作者人格権の側面が強く著作者の利益保護の観点から著作権法がつくられましたが、一方でUSは人々に著作物を生み出すインセンティブを与えて社会を豊かにしようという経済的な観点から著作権法がつくられたということです。今は国際条約などもあり、ある程度著作権制度は統一されていますが、各国の著作権制度を勉強する中でこういった背景があったことを感じることも多々ありとても腑に落ちました。弁護士実務をしていたときは日々目の前の案件に全力を尽くすことで精一杯でしたが、留学中は時間に比較的余裕がありこのような背景的な理解を含めて勉強できることがとても楽しいです。
IP専門のプログラム(MIPLC)に入る前にUC BerkeleyのLL.M. Traditional Trackで勉強できてよかった
私はUC BerkeleyのLL.M. Traditional Trackで勉強しましたが、このプログラムには必須科目が2つ(Fundamentals of US Law, Legal Writing and Research for LL.M. Students)あり、これらの科目が英語での法律文章の書き方などの基本的なスキルを鍛えてくれたため、IP専門のプログラム(MIPLC)を学ぶ前にこれらの授業を履修できたのは私にとってよかったと思います。
Fundamentals of US Lawでは主にアメリカの憲法を勉強しました。アメリカでは憲法上、連邦法で定めることができる事項は限定されていますが(いわゆるCommerce Clause)、これを正確に理解しているかでアメリカの商標法の理解も変わるように思いました。また、Writingの授業では、英語での法律文章の書き方の型や、データベースを使ったリーガルリサーチの仕方などもかなりしっかりと教え込まれたのでとても役にたっています。UC Berkeleyできちんとしたベースを作ることができたのがよかったです。
IP専門のプログラムは良い
MIPLCでは知財のバックグラウンドがある生徒が多く、それぞれの生徒が知財に関する自国の法律・判例などを知っており、授業中の意見交換などで各国の法律の考え方に触れることができて面白いです。その点も一つの専門で絞られたプログラムの良さだと思いました。
アメリカとドイツで生活して感じたこと・・・
各国のコロナ対策を実際に見れてよかった
各国の異なるコロナ対策を体感できたことは良い経験になりました。特に、アメリカでコロナワクチンの接種が始まったばかりの頃、教会の駐車場にも青空ワクチン接種会場が開設され、ボランティアの方達も運営に協力するなど、ものすごい勢いでワクチン接種を進めていたことにとても驚き感動しました。
日本は治安が良い、サービスが素晴らしい、日本食は落ち着く
日常で身の危険を感じずに生活できる、メールでの問い合わせに返信がある、電話で問い合わせても出てもらえる、郵便物が問題なく届く、日本で生活していて当たり前だと思っていたことが当たり前ではなくとても有難いことだったと気づかされました。
また海外で日本食を調達するのは高くつきますが、自然と体が日本食を求めるので自分はやっぱり日本人だなと思いました。
海外の良いところを今後自分の生活にも取り入れたい
ドイツに住んでから、ドイツでは料理にかける時間は最小限にして家族とゆっくりする時間を増やすという考え方があるということを知りました。それから、忙しいときは無理して料理をする必要はなく、家にある食糧を並べるだけで済ませたり、遠慮せず冷凍食品に頼る、洗い物を増やさないようにお皿の数を少なくする(できればワンプレート)ような習慣を取り入れたいと思いました。他にも海外でみつけた良いところは日本に帰国後も自分の生活に取り入れていきたいです。
英語は前より喋れるようになったか?
留学前は少し自信なさそうに英語を喋ることもありましたが、トラブルと交渉ありきの海外生活を経て、伝えなければならないという強い意志のもとに今はある程度自信をもって伝えたいことを伝えられるようになりました。いろいろな困難が私を少し強くしました(例えばアメリカでのカードの不正利用など。。無事返金されました)。
LL.M.で勉強している法律が日常生活の中でも垣間見えて面白い
GDPRの影響からアメリカや日本からはアクセスできたサイトにドイツからはアクセスできないことがあります。また、データ保護の観点から、日本企業から私が現在ドイツに居住していることを理由にサービス提供を断られたことがありました。アメリカでは、Information Privacy Lawの授業において、データ漏洩があった場合に各個人にその旨通知しなければならないケースを勉強しました。その矢先に、私が一度ネット通販で個人情報を入力した会社からData Breachの手紙があり、内容を読んで勉強になりました。LL.M.で学んでいる法律を、海外での日常生活の中でも垣間見えるのは面白いです。
他にも書き出したらとまらないです。結論としては、EUとUSの2つのLL.M.に留学して海外生活を送れていることにとても満足しています。
2021年は多くの刺激と多くの出会いに囲まれて成長できた1年でした。2022年も引き続き留学生活は続きますが、健康と体に気を付けながら過ごしていきたいです。
皆様よいお年をお迎えくださいませ!
※写真はアメリカ留学中に旅行で宿泊してまたいつか宿泊したいカリフォルニア州ヨセミテ国立公園のAhwahnee Hotel Yosemite