待合室とおしゃべりな息子と秋の空。
今日は朝から息子の付き添いで、病院に行ってきた。一昨日の部活中に薬指を負傷して、ずっと「曲がりにくい」「痛い」と訴えていた。確かに腫れているし、ちょっと青あざになっている。でも一応曲がるようだし、突き指だろうと思っていた。が、息子はネットで色々調べて、骨折や骨にヒビが入っている可能性もある、としつこく訴えてくる。病院が嫌いなくせに、とにかくレントゲンをとってもらいたいのだという。腫れて少し変色した指を「ほら、見て」と何度も見せてくる。そしてまだ診断されていないうちからよからぬ想像をして「ずっとこのままだったらどうしよう」とぐだぐだ言ってくる。はいはい、わかりましたよ。
というわけで、ネットで調べた家の近くの病院に朝から並ぶことになった。
病院の場所が自宅よりも学校に近いため、診察が終わったらそのまま登校できるよう、息子に制服を着せて一式用意をさせた。病院の待ち時間は長い。「時間たくさんあると思うから、テスト前だし教科書でも眺めてれば?」と息子に言って、私は小さなノートに絵を描いて暇を潰していた。でも横からことあるごとに話しかけられる。理科のワークを見せられて、
息子「ねぇ、この図のbの名前ってなんていうんだっけ?」
私「いや、知らんわ。もう中学の理科なんて忘れたし」
息子「まぁ、答え見ればいいか」
私「最初から見ろや」
息子「てか、ヘスラ(ヘッドスライディング)して指ケガしたって、なんかダサくない?」
(※ 息子は野球部)
私「ダサいとかの問題なの?」
息子「なんか俺、髪型変じゃない?」
私「いや、誰も見てないから」
うるさい。ちょっとお口にチャックしてもらっていいですかね?
総合病院だから、内科、外科、小児科、皮膚科、と色々ある。待合場所はひとまとめになっており、中央に椅子が並べられていた。そこをぐるりと、違う科の扉が囲んでいる形だ。座って待つ人たちはやはり高齢者が多かった。耳の遠い方に看護師さんがゆっくり大きめの声で話しかけていたり、アナウンスが流れたり、必要な問診票の記入を呼びかけている職員の人がいたりで周囲はざわついていた。息子の話に耳を傾けていると、順番を聞き逃してしまいそうだった。結局お絵描きは諦めて、顔を上げてモニターをちょくちょく確認するはめに。
なんだかんだその後も息子から授業の話やYouTubeの話をされている間に、待ち時間は終わった。診察はレントゲンも撮ることになったため、午前中いっぱい時間がかかるかもしれないと覚悟していたけれど、一時間ちょっとで終わった。診断結果は骨に異常なし。しばらく気を使って指を休めていれば問題ないとのこと。よかったよかった。息子もホッとした顔をしていた。
あとは会計だけだったから、先に出て学校に行くよう息子に促したが「道がわからないから待ってる」という。
病院を出て自転車に乗り、通学路に出るところまで一緒に行った。学校に行く道々も、「途中で教室入っていくの気まずい」だの「先生に言いに職員室行かなきゃダメなのかな?」だの「今日の部活、グローブはめられないから何してようかな」だのぶつぶつぶつぶつ。独り言ならまだいいけど、微妙に返事を求めてくる。うるさい上に面倒くさい男だ。どんな育てられ方をしたんだ。親の顔が見てみたい。
学校までは方向的には一直線。まっすぐ進んでいたら、学校近くの高い建物が見えてきて、息子も見覚えのある道へ出た。時々親子でキャッチボールをしに行く広場を、近道するために自転車で突っ切る。広場では何ヶ所か旗が立てられており、ゲートボールをする人たちの姿があった。舗装されていない土と草の上のガタガタ道を走っていたら、なんだか笑えてきた。
水色の空に、薄くたなびいた白い雲。ここに来て空を見上げると、いつも高くてまぁるいと感じる。まだ午前中だからか涼しくなってきたからか、なんだか気持ちがよかった。広場を抜けて大通りに出たところで別れた。息子ももう、学校へ行くモードになっているように見えた。
私「じゃあね、がんばってね」
息子「ういー」
たまに付き添いで病院に行くと、いつも生気を抜かれたようにぐったりするのに、今日はなんだか清々しかった。給食の時間にかかることに備えて一応用意してきたおにぎりは、学校から帰った息子におやつとして食べさせればいいか。(リュックの中で少し潰れていたけれど。)最近口を開けば「なんかちょうだい」しか言わないカイジュウの腹の足しにはなるはずだ。
そんなことを考えながら、自転車を漕ぐのが気持ちよかったので少し遠回りをして家に帰った。