子どもの人権〜厚労省の判断に疑問を持った保育士として願うこと
私はコロナ禍において、厚労省はじめ政治家が、保育園や子育て世帯をどう扱って来たかが見えて来たような気がします。経済を回すことばかり考えて、子どもに目をやれていない現実に危機感と失望を感じています。経済を止めないことはもちろん大事なことですが、その背景で子どもの人権が無視されていると思いませんか?
第6波に於いて、子どもの感染が急増している中、余程の事がない限り保育園は休園を許されません。たとえ陽性者が出ても、マスクを付けている保育士は濃厚接触者にはならないこと、また最低基準である配置基準(子どもの数に対する必要最低限の保育士の数)を割っても、特別措置として開園基準を緩和するというあり得ない措置により、休園が許されません。元々の配置基準の元であっても保育士ひとりで見る子どもの数は多く(国の基準:0歳児3人、1歳児6人など)日頃、子どもの安全を守るには必死の努力が現場では日々なされています。それを割ってもいいとはどういう意味を持つのか、現場の声は聞こえていないし想像することはないようです。
また、2歳児以上のマスク着用推奨という話が出ました。医学的な面からその後年齢は削除されましたが、保育園で過ごす子ども達がマスクを付ける弊害など、考えられてはいないでしょう。子ども、保育士共に心身の負担を増やすだけで何のメリットもないでしょう。そもそも保育園という場所は、三密の避けられない、飛沫の飛び交う場所です。幼い乳幼児にそれを避ける行動を求めることは出来ません。食事の時も午睡時間も、社会の中で行われているようなソーシャルディスタンスなどあり得ません。
その後、代替保育の案が打ち出されました。保育園、学校が休園、休校になった時に預ける場所の確保です。保育園は、0歳児から5歳児が通うところです。この子ども達が、別の場所で、特例措置として知らない人に預けられる。また、そこでサポートに当たる人員は、保育士資格がなくても良いそうです。ただでさえコロナ禍での保育は、消毒や換気、体調管理など気を使うことが増えているのに、どうやって?慣れない場所で子ども達は過ごすのでしょう?現実味があまりにもありません。リスクが多過ぎます。アレルギーのある子どもの食事はどうするのでしょうか。厚労省の言っているのは、保育ではなく託児所、預かり場所。それを代替保育、などと表現し、堂々と発表してしまう厚労省に、私は呆れてしまいました。
そこまでして働かせたいですか?今のような緊急事態には、働かなくてもいい環境を整える方が健全です。子どもの心、保護者の心はどうなるのでしょう。
子どもは物じゃないんです。
特に乳児期は安心してゆったりと過ごせる環境が必要で、親はその工夫の中で親になっていきます。試行錯誤しながら、我が子の成長を見守りながら、その一人一人の性格や傾向を知っていくのです。初めての子育てでは、誰もが戸惑います。私もそのひとりでした。思うようにいかない育児に自信を無くしたり、ストレスを抱えたり、そんな時に相談する相手を探したりしながら、親になっていきます。子どもの病気と向き合うのもその一つです。
こんな中、NHKの「おかあさんといっしょ」の人気番組の放送時間が、16:00から18:00に変更になるそうです。保育園のお迎え時間に合わせたかのような変更に驚いてしまいました。世の中はもう保育時間11時間が当たり前になっている。その時間は、保育士の通常勤務時間より長いです。乳児期であってもその子どもが保育園に居る間に、保育者が変わるという事です。朝の7時台に預けられ、夜の18時、延長保育では19時以降にお迎えが来ることも。幼い子ども達にとって、起きている1日の大半は保護者と離れ離れです。そして帰宅したら、この「おかあさんといっしょ」をボ〜ッと見て、お母さんはその間に食事を作り、その後足早にご飯を食べ、お風呂に入って、寝る、と言う生活が想像されます。親と過ごす時間はそれだけですか?
親との愛着関係を結ぶには、圧倒的に少ない親子時間だと思います。何度も同じことを繰り返し書きますが、保育園は、一対一の関係で保育出来ない環境です。子ども達はあらゆる我慢をしながら過ごしています。本来なら、好奇心のまま生活の全てが遊びであって、その中から色々なことを学んでいく乳児期であっても、好きなように遊べないシーンが多々あります。集団生活だからです。また、危険の伴うことは、保育園ではさせられないからです。それは乳児期に於いて、必要のない我慢です。
そもそも企業の育休休暇がどうなってるのか、時短勤務など、2年は欲しいですよね…。保護者の意識の問題もあるけれど、企業側の子育て世帯に対する待遇を改善してもらわないことには、保護者も難しい選択を強いられてるところもありますね…。
乳児期は15時まで勤務にして、16時にはお迎え、が理想的です。極論、乳児の子育て期は、15時定時で!時短勤務出来たらいいですね。
それでも保育園は、フル稼働でしょう。
保育士を増やしてシフトで回しましょう。
だからと言って保育士の数だけ見るのではなく、きちんと研修など人材育成にも力を入れて、子育て支援の仕事に誇りを持ちましょう。
保育の質の向上を必ず行い、子育ては、保護者、保育園、子育て世帯に優しい企業の取り組みなど、社会全体でチームとなって子育てし、未来を担っていく子ども達が生まれてきて良かったと思えるような豊かな日本になるように、願うばかりです。
そして、発達支援に特化した保育士も養成して欲しいです。あらゆる子どもが不当な扱いを受けない日本になりますように。切に願います。