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【シットコム】テネシーハニー『あおいままで』
【あらすじ】
シットコム好きのアメリカかぶれ倉橋茉里と神島爽が管理人をしているシェアハウス“テネシーハニー”。
住人の碧は、スーパーアイドルキャンディちゃんだった!
しかも引退するってなんで!?
そこへ不動産の成美さんもやってきて・・・?
***
第一場【リビング】
♪“1-2-3”(Gloria Estefan&Miami Sound Machine)
テレビを見ながらくつろぐ爽と茉里。
テレビではキャンディが“1-2-3”の楽曲を披露している。
キャン「お砂糖スパイス素敵なものをいーっぱい!みんな混ぜて生まれたのが?」
茉里 「キャンディーちゃーん!」
キャン「体重はマシュマロ3つ分♪生まれたときからミラクルアイドルキャンディです♪今日もキャンディと一緒に甘くてメロメロな時間を楽しみませませ♪」
茉里 「ませませー!今日もかわいいよー!」
爽 「なんかすごい子だね…」
茉里 「ね!すごいかわいいよね!」
爽 「まぁ…。こんなどっかの星のプリンセスみたいな子だとは思わなかったけど」
茉里 「キャンディちゃんはキャンディ星から来たんだよ」
爽 「え?」
茉里 「地球人じゃないの。でも、火星人じゃないからいい子」
爽 「そう。茉里ってアイドル好きだったの?」
茉里 「別に。でもキャンディちゃんは好き」
爽 「なんで?」
茉里 「おしゃべりしてくれるから」
爽 「え?」
サビに向けて音量が上がって会話できなくなる。
爽 「え?なんか音が」
間奏に入り音が小さくなる
キャン「みんな今日のお昼は何食べた?」
茉里 「ん~そばー!」
キャン「そっか。おいしいよね!キャンディも好き♪」
茉里 「そうなの?一緒一緒~!ね!(爽に向かって)」
2番に入りキャンディ歌い出す
爽 「茉里、これはカメラに向かってしゃべってるだけで実際おしゃべりしてる訳じゃないんだよ」
茉里 「そんなの分かってるよ。私たちは心でおしゃべりしてるの」
爽 「あ、そう…」
爽 「ねぇ、何人かで歌ってるみたいなんだけど」
茉里 「キャンディちゃんは1人で七人分の声が出せるんだよ」
泉の笑い声
七菜 「あんたたちいたの?部屋にいたら魔女の笑い声がうるさいし、リビングに来たらダサい2人組がいるし、なんなのこの家」
茉里と爽言い換えそうとするが、テレビの音量が大きくなってかき消される。
爽 「これあっちから見えてるの?」
茉里 「キャンディちゃんはなんでもお見通しよ」
間奏に入り音が小さくなる。
爽 「この家が嫌ならいつでも出てっていいのよ」
七菜 「なんで私が出ていかなきゃいけないの?出ていくならあんたたちよ」
茉里 「私たちがオーナーなんだから出ていく訳ないでしょ!」
七菜 「私たちがオーナーなんだから出ていく訳ないでしょ!」(真似)
茉里と七菜で真似し合う
キャン「私、引退します!」
3人 「え!?」
キャン「今日この曲が 終わったら キャンディは普通の 女の子になる」(歌う)
茉里 「なんで!?やだよー!」
七菜 「そんな。私、何も聞いてない!」
茉里 「今聞いたでしょ」
爽 「なんであんたに先に言う必要があるの」
七菜 「あんた達まだ気付いてないの?」
キャン「突然驚かせてしまってごめんなさい。みんなの悲しい顔を見て踊るのが嫌だったの。キャンディの最後のわがまま許してね。本当に本当に今までありがとうございました」
キャンディはマイクを床に置こうとして止め、カツラを置いて去る。
暗転 OP
第二場【玄関前】
玄関前で家に入ろうかどうしようか躊躇している碧。
携帯に電話がかかってくるが無視して仕舞う。
覚悟を決めてドアを開けようとする。
間々 「確保!!」
碧 「え?」
間々は碧を捕まえる。逃げようとする碧。
帰ってきた爽が2人を見つける。
爽 「え、ちょっと…」
爽は大声でホテルカリフォルニアを歌い出す。
間々 「あら、懐かしいわね」
爽 「今のうちに!」
間々 「ちょっとちょっと私は碧と話に来たの!」
爽 「え?……あ、お母さん?」
間・碧「ちがう!」
間々 「こんなでかい子いる訳ないでしょ。マネージャーよ、マネージャー。あんたこそ誰なの?」
爽 「私はここのオーナーです。マネージャーだかなんだか知らないけど、うちの前で騒いだらアメリカ南部からゾンビ連れてきてやるから」
碧 「ゾンビがいるのは中西部!」
間々 「碧、なんでこんなとこ住んでるの。中でゆっくり聞かせてもらうわ。お茶でも飲ませてくれる?」
間々ズカズカと家へ入る。2人も追いかける。
【リビング】
間々 「結構いい家じゃない。あ、私アイスコーヒーね」
碧 「飲み物なんか出さないよ!なんでここにいるの」
間々 「あなたのいるところには、どこにだって行くわよ。敏腕マネージャーなんだから」
碧 「…もうちがうでしょ」
間々 「碧」
爽 「ねぇ、待って待って。マネージャーって何?」
間々 「あらやだ、あなた知らないの?」
碧 「あーあー」
七菜3人を見つけ近寄る。
七菜 「ちょっと碧!引退ってどういうこと?私なにも聞いてないわよ」
碧 「あ、七菜」
爽 「ん?引退?」
間々 「これで分かるんじゃない?」(碧にカツラをかぶせる)
爽 「え?キャンディちゃん?」
碧 「…うん」
爽 「碧が?え、え、なんで?」
七菜 「なんで急に引退なの?アイドル好きでしょ」
爽 「七菜は知ってたの?いや、なんでアイドルがうちに住んでるの?」
間々 「そーよ。私に嘘までついて」
碧 「あの家には住みたくないの」
間々 「駅から徒歩3分の何が不満なの」
碧 「あいつが用意したマンションには住みたくないの!それにもうアイドルじゃないから住む必要ないでしょ」
間々 「またそうやって拗ねて」
爽 「あいつって誰?ジョニーデップ?」
七菜 「黙って」
碧 「プロデューサー」
間々 「大原和夫。名前くらいは聞いたことあるんじゃない?」
七菜 「あぁ、パパも知り合いのはず」
間々 「パパ?」
七菜 「負けなしの有名弁護士 蔵元隆よ」
間々 「あ~どうりで!」
七菜 「どういう意味よ」
間々 「和さんからの電話も出てないでしょ」
碧 「話すことなんかない」
茉里 「ただいまー…えー!キャンディちゃん?何で何で?」
七菜 「はー、うるさい」
爽 「茉里、今じゃないんだよ。分かるんだけど」
茉里 「本物?何でうちにいるの?」
碧 「茉里…あの」
茉里 「なんで私の名前知ってるの?」
間々 「はい、これ見て」(碧のカツラを取る)
茉里 「碧!?」
碧 「黙っててごめんなさい。あの、私ここに住んでたいの。もうアイドル辞めたし、迷惑かけないから」
七菜 「だから、なんで辞めたのよ。アイドル好きでやってたでしょ」
碧 「…25になるからアイドルじゃないの」
七菜 「え?」
間々 「25歳になる前に引退させようって和さんが決めたの」
碧 「アイドルはクリスマスケーキと一緒だって。でもおかしいでしょ、男はおじさんになってもアイドルなのに女だから引退なんて。しかもおじさんが決めるって」
泉 「女の結婚適齢期と同じ考えね」
全員 「え?」
爽 「泉…いつのまに」
泉 「碧のオーラが変わってきていたから気になっていたの」
間々 「オーラ?何なのこの子?」
爽 「泉は占い師なの」
間々 「へ~~~~当たるの?占いも結構数字取れるのよね」
碧 「間々さん!私はもうあいつに関わるつもりないから。もう帰って」
間々 「急に引退って言われて頭に来てるのは私も一緒。でもそれで全部投げだして、これからどうするの?あんたまだアイドルやりたいんでしょ。キャンディは無理でも他にやり方はあるはずよ」
碧 「・・・・・」
七菜 「周りの人に言われたからって大好きなアイドル辞めることないんじゃない?」
碧 「七菜は、50歳のアイドル見たい?」
七菜 「え…50…んー」
碧 「ほら、やっぱり無理なんだよ」
七菜 「50歳は分かんないけど、碧はまだ若いんだし、今すぐ辞めることないでしょ」
碧 「でもこの先ずっと、この衣装きつくないかな、痛くないかなって考えちゃう。そんなのアイドルじゃないよ」
間々 「分かった。じゃあ辞めればいいわ」
碧 「え?」
間々 「碧が若くないとアイドルじゃないって思ってるなら続けられないでしょ」
碧 「……だってそうじゃないの。ずっとそうやって言われ続けてきたんだから」
碧、家の外に出ようとするが、ジョーと成美が玄関から入ってきて押し戻される。
ジョー「助けてくれ!知らない人が入ってきちゃった」
成美 「あら、知らない人ではございません。私、ここのシェアハウスを管理させていただいておりますエレガントフラワー不動産の成美綾子でございます。みなさまどうもお邪魔いたします。あらあら、可愛らしいお嬢様方がたくさん住んでいらっしゃる。女子会いや、ここではガールズトークとお呼びした方がよろしいんでしょうかね」
七菜 「なんなのこのうるさいおばさん」
爽 「成美さん!どうしたんですか?私たちちゃんと家賃お支払いしてま すよね」
成美 「えぇ、問題なく頂戴しております。本日は、みなさまに折り入ってご相談があって参りました。実は私、YouTubeで番組を放送しておりまして、みなさまにもご出演いただきたいんです」
茉里 「YouTube?」
成美 「えぇ、素敵なハウスのご紹介や住んでいる方のインタビュー、私の仕事の様子、モーニングルーティーンにナイトルーティーンなど盛りだくさんの内容をお届けしております。つきましては、12月25日の生放送で、こちらのシェアハウスをご紹介させていただきたいのです。私の担当しているハウスの中でも、シェアハウスをやってらっしゃる方は大変めずらしいのでね。ぜひともそのユニークな生活をお届けしたい!再生回数を増やしたい!新たなお客様と出会いたい!ということでございます」
爽 「えぇ…でも、私たちインタビューとかうまく答えられるか…」
成美 「もちろんタダでとは言いません。来月のお支払いの…」
爽 「(遮って)やるわ!」
茉里 「爽~」
七菜 「あんた本当に金で動くわね」
爽 「夢の中でジェイミーに会うための毛布が必要なの!枕だけじゃ会えないのよ」
ジョー「Meはそういうの大歓迎!コメディアン ジョーが出演って言えば、たちまち大人気さ」
成美 「あら素敵。コメディアンでいらっしゃるんですね。ぜひパフォーマンスを披露していただきたい」
ジョー「もちろんさ!どんなのがいいかな、あんなのもこんなのもあるよ」
茉里 「あ!アイドルも!アイドルもいるよ!」
碧 「え」
成美 「やはりそうでしたか、気付いておりましたよ。だって一人だけ全然オーラが違うんですもの。こういうのは黙っていても分かってしまうものですね。ねぇ?(間々さんに)」
一同、間々さんを見つめる。
間々 「やだ、もう。私はアイドルじゃなくて元スクールメイツよ!」
成美 「そうでしたか、スクールメイツ!よくテレビで拝見しておりました。ポンポン持ってね~懐かしい!」
茉里 「私は碧のこと言ったの!正真正銘の現役アイドル!クリスマスの日に、新しいアイドルとしてデビュー!どう?どう?」
成美 「私の番組内でアイドルがデビュー。それは・・・“映える “ですよね」
爽 「・・・バズるのこと?」
成美 「そう、バズる!番組がバズるで、ハウスは売れる!ぜひとも番組の目玉でご紹介させていただきます」
碧 「ちょっと待って!私はやらない」
成美 「こちらのお嬢様でしたか。碧さん。大変かわいらしい。私の番組にさらなる華を!楽しみにしております」
碧 「いや、だからやらないって」
成美 「では、私この後、別のご契約者様とのお約束があるので失礼いたします。番組についての詳細は、メールにて連絡させていただきます。では、またクリスマスに!メリークリスマス!」
成美玄関から出る。
爽 「残念ね、碧。成美さんは、ジェイソンと同じで止められないの」
碧 「茉里!なんでアイドルなんて言ったの」
茉里 「だって、アイドルやりたいんでしょ!やりたいんだから、やればいいんだよ!」
碧 「私は、もう普通の女の子になったの」
茉里 「普通って何!やりたいこと我慢するのが普通なの?」
七菜 「碧、悔しいけど今回はダサダサ国のプリンセスに賛成だわ。普通になりたい気持ちは分かるけど、逃げ道として使う言葉じゃない。やりたい気持ちがある内は、続けるべきよ」
茉里 「そうよ。時は2022年、時代はモダンマリーでタップでタイプするんだよ!ほら、ほら、分かるでしょ」(タップダンスする)
爽 「分かんない」
ジョー「トイレ行きたい?」
茉里 「もう、ちがう!あ!」(指パチン!)
音楽が流れ始める。
♪“I Can Do Better Than That”(ミュージカル「Last Five Years」より)
爽 「え、何この音楽」
茉里 「シッ!これなら分かるはず!キャシー私に力を貸して!」(歌い出す)
茉里♪「高校最後に親友が妊娠したの。2人は電撃結婚したわ。彼女はなんかちがうと言いながら太る。彼氏はヘビメタバンドのドラマー。2人かわいい家とかわいい家具を買った頃に。レコード屋に彼氏は就職。あの町では当たり前の2人の人生。だけど私はイヤ。もっとあるはずよ。ベビー服を縫いながら誓ったちがう人生を」
茉里 「ね!分かるでしょ!次は爽の番だよ!」
爽 「え、私?無理無理…え~(乗り気)」
間々♪「それで一大決心して都会に来て、部屋を借りて10キロのダイエット。学校で出会った彼は束縛がすごくて、トイレもついてくるほどだったの。彼はキュートで、頭もよくて、ベッドでも素敵。人生をささげて一年過ぎた。これが夢だと思ったときガツンと言われたの。君よりキャリアを大事にしたい。去っていく彼を見て誓った違う人生を」
七菜♪「あなたはそのヘアスタイル、服も笑顔も、何もかもそのまま、やりたいことをやって!」
茉里♪「周りを気にしたり、合わせてみたり」
七菜♪「自分を変えたりする必要ない」
茉里♪「今のまま碧のままで」
爽♪ 「碧 ただ碧なら 碧ならきっと」
七菜♪「何か確かなものが見つかるはず」
爽♪ 「碧 碧こそ 誰ともちがう」
茉里♪「新鮮で純粋で最高」
間々♪「私も最高!」
泉♪ 「永遠の若さなんて求めはしない」
七菜♪「すべてさらけ出してとも言わない」
七菜♪「もっと価値のある人生探し求め」
爽♪ 「あの日ふるさとの町を出たの」
間々♪「私が歩いたその道のりいつか見て欲しいの。もう戻らない。振り返らない」
茉里♪「今、運命に導かれみんなと出会えた」
ジョー「みんなで人生を笑っていきたい」
茉里♪「感じて愛を暮らしてともに」
七菜♪「碧ならばできる。素晴らしいことがある」
間々♪「今までとはちがう風」
爽♪ 「ちがう空」
茉里♪「ちがう人生が」
みんな「ちがう人生が!」
歌い切り盛り上がる。
茉里 「私たちミュージカルできるよ!あ、成美さんにミュージカルやりますって言おうよ!」
七菜 「そんなの誰が見るのよ」
茉里 「家族とか友達?」
爽 「職場の人?あ、前の職場の人もね」
七菜 「身内だけじゃない!私たちじゃなくて、やっぱり碧がやるべきよ。アイドルなんだから」
碧 「あの、やっぱり私できません!」
碧、家を飛び出す。
七菜 「碧!」
間々 「放っておきなさい。大丈夫だから」
茉里 「え、でも…悪いことしちゃったかな」
爽 「あんたがアイドルとか言うから」
七菜 「だって事実じゃない」
爽 「まぁ…そうなのよね」
七菜 「何よそれ」
茉里 「もうアイドルやりたくないのかな」
間々 「さあね。どうするか決めるのは碧よ」
茉里 「…そうなんだけど」
間々 「碧は大丈夫。あんなたちが思ってるより、強くて、頑固で、負けず嫌いでしつこくて、中学生のときなんか「この衣装に、白い靴下は合わない」とか言って車に立てこもって…。とにかく碧は大丈夫。さ、私たちは生放送のこと考えましょ。碧が出ないなら私がブイブイ言わせるわよ」
七菜 「いつの時代よ」
ジョー「Meの出番もたっぷりいただくよ」
泉 「ジョー。時間よ」
ジョー「おっと、そうだった。じゃあね、ファンのところへ行ってくるよ」
爽 「あぁ、ステージの日なんだ。頑張って」
七菜 「なんで古い曲ばっかなのよ。今時誰が聴くの」
間々 「失礼な!ABBAは不滅よ」
第三場【公園】
ベンチに碧が座っている。ジョーと泉がやってくる。
泉 「碧、ここにいたの」
碧 「泉、ジョーなんで」
ジョー「追いかけてきた訳じゃないからね。Meのステージなんだよ」
碧 「ここが?」
ジョー「Meが立てばどこだってたちまちステージさ」
泉 「ジョーは、子供たちに人気なんだよ」
ジョー「碧も見ていきなよ。そんな暗い顔とおさらばできるよ」
ジョー一芸披露。異常なほど笑う泉。
泉 「やっぱりジョーのステージは最高だわ」
碧 「泉は毎回見に来てるの?」
泉 「当たり前でしょ。彼女のいるところにはどこにだって行くわ」
ジョー「泉は最高のファンだよ。もちろん碧もね」
碧 「ジョーはなんでコメディアンやってるの?」
ジョー「コメディアンやってるんじゃなくて、Meは生まれたときからコメディアンなのさ」
碧 「あ、そう…」
ジョー「…ただ、周りにいる人に笑ってて欲しいんだ。小学校4年生のとき転校してきた子がいてさ。たまたま私が隣の席だったんだよ。すごいシャイな子で、休み時間も本読んだりして一人で過ごしてて。でも、なんとか仲良くなりたくて、挨拶したり話しかけたり、色々やってみたけど全然仲良くなれなくて。でもね、彼女がジーニーのキーホルダーつけてるの見付けて、真似したんだよ。そしたら、笑ってくれて。それがもう、すごい嬉しくて。その後も、すごい仲良くなれたって訳じゃないけど、でも、今でも思い出すんだ」
碧 「そうなんだ」
ジョー「…あー、私の話は終わり。碧は?碧ってアイドルなの?」
碧 「あ…隠しててごめんなさい」
ジョー「ノープロブレム。それより、なんでアイドルやってるの?」
碧 「私は…中学生のころアイドルを目指す女の子たちのアニメを見て、歌ったり踊ったりするだけじゃなくて、曲を作ったり、衣装作ったり、みんな個性を出して頑張ってて、私もこれがやりたいって思ったの。それですぐにオーディション受けて。でも、実際にアイドルになってみたら、ファンの好感度気にして、見た目とか言うこととか全部決められて。そもそもキャンディちゃんだったしね。こんな風に見られてるんだって。ずっと完璧でいようって頑張ってきて、突然引退って言われたときはまだやりたいって思ったけど、なんか本当にまだやりたいのかわかんなくなってきちゃった」
泉 「嫌ならやめればいいのよ」
碧 「え?」
泉 「やりたければやる。嫌ならやめる。それだけよ」
碧 「それがわかんないんだよ…。あ、泉に占ってもらおうかな」
泉 「占わなくても、わかってるでしょ」
碧 「…でも、私もう若くないし」
泉 「若くないとアイドルじゃないの?」
碧 「そう…じゃないのかな。お客さんもみんなそれを求めてる」
泉 「そう」
間
ジョー「あぁ!私は、アイドルはよくわかんないけど、私は多くの人におもしろくないって言われても、たった1人でも笑ってくれるなら、コメディアンで居続けるよ。碧もそうじゃないの?ステージに立ってファンが喜んでくれる。それが嬉しかったんじゃないの?」
碧 「でも、25過ぎたら」
ジョー「君のファンは、若いから応援してたんじゃない。たくさんいるアイドルの中で碧を見付けて、この人を応援しようって決めたんだよ。頑張ってる姿が好きとか、見てると元気になるとか、そういう気持ちで応援してたんじゃないのかな」
碧 「・・・・・」
ジョー「私は碧を応援したいよ」
間
碧 「ジョーありがとう。でも、ファンは私じゃなくてキャンディを見付けたの」
ジョー「それは」
碧 「だから、次は私を見付けてもらう」
第四場【リビング】
碧 玄関から入ってくる。その後ジョー、泉が入る。
碧 「ただいま!」
茉里 「碧!」
碧 「あのね、みんな。私やっぱりアイドルやりたいの。アイドルは若い方がいいって、ずっと思い込まされてきた。でも、アイドルを、女性を、年齢だけで価値決めするなんてもったいないと思う!もし若さだけで好きになってくれる人がいても、私とは縁がなくて、今の私をいいって言ってくれる人を大切にしたい。今の私にしかない魅力を見付けて届けたい。好感度とか人の目とか気にせず、自分のこと最優先でアイドルやっていいんだって伝えたい」
茉里 「碧~」
爽 「どうしたの?ここマルチバース?」
碧 「間々さん。私、宮田碧のままアイドルやりたい。間々さんと一緒にやりたいの。また、私と一緒に戦ってくれる?」
間々 「当たり前でしょ。いつのまにこんなに立派になって。・・・ううん、元々自分の意志がある立派な子だったのよね。それを私たち大人が売れさせよう売れさせようって抑えつけてた。碧、ごめんね」
碧 「間々さん…」
間々 「キャンディは売れたけど、ずっと続けられるものじゃなかった。今度はずっと続くアイドルをしよう。本当の碧のままでアイドルしよう。私は今までよりずっと碧の近くにいるから」
碧 「間々さん…。今までだって間々さんはいつも私の一番近くにいてくれたよ」
間々 「ううん、ステージにいるときは離れてた。でも、これからはステージの上でも碧の一番近くにいるわ」
碧 「え?」
間々 「私もアイドルだから!」
一同 「え!?」
間々 「マネージャー兼アイドル!いい考えでしょ。今の碧見てたら、スクールメイツの血が騒いじゃったのよ。今の私にしかない魅力で日本中を元気してやるわ」
七菜 「あんた正気なの?」
間々 「あんたこそ碧の話聞いてなかったの?」
碧 「いいかも。おもしろそう!」
七菜 「碧、本気?」
碧 「いろんなアイドルがいていいんじゃない?あ、今度の生放送でメンバー募集しようかな」
間々 「大勢はいらないわよ。私が霞んじゃうじゃない」
ジョー「一件落着?」
碧 「ううん、大変なのはこれからだよ!クリスマスまで時間がないんだから。間々さんさっそく練習!みんなも手伝って」
♪“Twelve Days to Christmas”(ミュージカル「She Loves Me」より)
碧と間々はダンス練習。
他の住人はクリスマスの飾り付け。
途中途中で成美が訪問し、何やら練習させられている。
曲の始まりで、爽・茉里・ジョー・泉は飾り付けを取りに部屋を出る。
碧 「ん~やっぱりクリスマスの曲がいいよね」
間々 「ABBAにクリスマスの曲あったかしら」
七菜 「一回そこから離れたら」
碧 「曲は私が決めるから!七菜さんも飾り付けお願いします」
七菜 飾りを取りに部屋を出る。
碧 「ねぇ、間々さんってダンスできるの?」
間々 「スクールメイツをなめないで! 12日もあれば余裕よ!」
♪♪♪(歌が始まるタイミングで、爽・茉里・ジョー・七菜が飾りを持って入ってくる)
(間奏)
間々 「あ~~疲れた。ちょっと休憩」
碧 「間々さん!スクールメイツの体力はどうしたの!」
間々 「何十年前の話してんのよ。あんなに動ける訳ないでしょ」
碧 「もう時間がないんだって!」
間々 「うるさいわね~あと9日もあるでしょ」
碧 「9日しかないの!」
間々 「はいはい。わかったわよ」
♪♪♪
(間奏)
碧 「ファンサの練習はもういいよ。あと4日だよ!」
間々 「まだまだ!みんなの希望の星になるんだから!」
碧 「衣装できたから着てみる?」
間々 「着たい着たい!」(碧・間々 部屋に行く)
♪♪♪
(間奏)
爽 「七菜!どこ行くの」
七菜 「今日はイブよ。彼氏とデートなの。じゃあね~」(七菜家の外へでかける)
爽 「イブ?」
みんな「クリスマスイブ!」
曲終わりまでに飾り付けを終わらせる。
曲終わりで暗転
第五場【クリスマス生放送】
成美 「人生は、エレガントフラワー成美綾子でございます。みなさまメリークリスマス!本日の『成美綾子のエレガントフラワータイム』は、シェアハウステネシーハニーからお届けいたします。ではさっそくお邪魔いたしましょう。みなさまメリークリスマス!」
爽茉里「メリークリスマス」
成美 「こちらにいらっしゃる二人がここテネシーハニーのオーナー様でございます。さて、シェアハウスを作ろうと思ったきっかけなどあるんでしょうか」
爽 「2人とも新しく住む家を探してて…」
茉里 「私がシットコム好きのシェアハウス作ろうって言ったんです!」
爽 「それで私が名前を付けて、この家を見付けました」
間
茉里 「思い付いても一人じゃ作れなかったと思います」
爽 「私たち2人だから協力してたのしく暮らせてます」
成美 「あら~仲睦まじいご様子で。いつまでも続くことを願っております。まだまだお支払いが残っておりますからね。では、ここにお住まいの方たちにも登場していただきましょう。みなさん、ここにはおもしろい方たちがたくさん住んでるんですよ」
ジョー、泉、七菜が入ってくる。
成美 「コメディアンから占い師、高飛車なお嬢様まで個性豊かな面々。それでは、ジョーさん。ひとつパフォーマンスをお願いします」
ジョーがネタを見て異常に笑う泉。それに成美も合わせて笑う。
成美 「とっても楽しい方たち。ありがとうございました」
ジョー「まだ終わってないんだけど」
成美 「え、アイドルが出てこないじゃないかって。これからですよ、お楽しみは最後に取っておくものでしょ。あ、それとも好きなものを最初に食べるタイプですか?実は私もそうなんでございます」
七菜 「いいからさっさと次いきなさいよ」
成美 「ずいぶんとせっかちなお嬢さんでいらっしゃる。でもね、そんなに生き急がなくてもちゃーんと人生は進んでいくんですよ。ほら急がば回れって言いますでしょ」
爽 「成美さん!カメラにお尻向けてる!」
成美 「あら、私としたことが。失礼いたしました。それでは、気を取り直して参りましょう。本日12月25日クリスマスにデビュー!アイドルAoiMAMAのお二人です!」
碧 「みなさん、はじめまして。AoiMAMAの宮田碧です」
間々 「間々広子です」
碧 「私たちのパフォーマンス楽しんでください!」
♪“Extraordinary Merry Christmas”(ドラマ「Glee」より)
成美 「ありがとうございました。私の番組でアイドルがデビューするなんて大変喜ばしいことです」
碧 「待って。私は、ずっとアイドルは若くて、どんなときでもかわいくなきゃいけないって思っていました。アイドルだけじゃなくて、みんなの中にも、若い方がいいとか、かわいい・かっこいい方がいいとか、何歳までにこうなってなきゃいけないとか、たくさんの思い込みがあるんじゃないかな?でも、そうじゃないって私は信じたい。一人でも多くの人にこの思いが伝われば嬉しいです。そして、アイドルになりたくて、でも思い込みに勝てなくて諦めてきた人がいたら。一緒に新しいアイドルの道を作りませんか?私たちが一緒に戦うよ」
間
成美 「詳しくは、番組の概要欄、エレガントフラワー不動産HPにAoiMAMA公式サイトのアドレスが載っておりますので、そちらからご覧ください。AoiMAMAのお二人ありがとうございました」
成美にこやかに碧と間々を後ろに下がらせる。
成美 「さあ、番組をご覧のみなさん。あなたですよあなた。私が手掛けるハウスに住めばバラ色の人生に大変身!シェアハウスを作りたい方、もちろん一人で住みたい方も、我がエレガントフラワー不動産にお任せください!みなさまの明るいライフスタイルに!」
みんな「エレガントフラワー不動産」
成美 「お待ちしております。そしてみなさまにもうひとつクリスマスプレゼントが…。この後21時から私、成美綾子とクリスマスオールナイト生放送をお届け!ぜひこちらもご覧ください。それでは、ひとまず。メリークリスマス!」
みんな「メリークリスマス!」
成美 「はい、みなさまお疲れ様でございました。大成功でございます。やはり私の素敵なハウスのおかげ!…と素敵な方々に住んでいただけて大変うれしいです。これからも末永く住んでくださいね」
みんな顔を見合わせて笑う。
成美 「ですが、もしお引越しの際には、他の素敵なハウスをご紹介いたしますので、必ず私にご連絡くださいね。ちなみにご希望の条件など」
爽 「成美さん!オールナイト生放送の準備しないといけないんじゃない?」
成美 「そうでございました。仕事のことになるとすぐ張り切ってしまって。準備があるので、これで失礼いたします。みなさまメリークリスマス!」
成美、家を出ていく。
七菜 「はー、疲れた」
爽 「成美さん、相変わらずだったね」
茉里 「ね。それより、二人のアイドルもう最高!私感動しちゃった!」
間々 「でしょ~。もう碧がスパルタだったんだから」
碧 「すぐサボろうとするからでしょ」
間々 「休憩よ休憩」
ジョー「ねぇ、今日の感想ってもらえないのかな?Meのパフォーマンスも楽しんでくれたかな」
爽 「コメントが見られるはず」
茉里 「見たい見たい!」
爽はスマホを取り出しコメントを探す。
碧はスマホを探して、泉から受け取る。
間々 「私の魅力が話題になってるんじゃない?」
七菜 「なんでそんな自信あるのよ」
爽 「オーナの人綺麗。スタイルいい。あら、ゼンデイヤに似てる?ありがと」
茉里 「え、それ私のこと!?…ってどこにも書いてないじゃん」
爽 「いいでしょ、ちょっとくらい。えーっと、魔女の住む家おもしろそう。魔女に占いしてもらいたい。絶対当たるらしいよ…。なにこれ、泉のことばっか」
泉 「当然のことね」
ジョー「Meのことは!」
爽 「待って探すから。もう、さっきから同じ人ばっかり。公園のお姉ちゃんがんばれー。ってなにこれ?」
ジョー「ちょっと見せて!うんうん。ありがとう」
七菜 「いや肝心の碧たちは!」
碧 「今年一番笑った。ありがとう、元気出た。思い込み、確かにあるな~。いや普通にきつくね?推せない。 …。私もアイドルやりたいな。アイドルやりたいな」
間々 「オーディションも楽しみね」
コメント読みながらそれぞれ話している。
碧 「あ、大原さん…」
みんなから離れて電話に出る碧。みんな喋りながら気にして見ている。
碧 「もしもし……はい…すみません…。…あの、何の話ですか?え、見たんですか?…間々さんが…。はい。そうですよね。大原さんにとっては、若くもかわいくもない私たちはアイドルじゃ…え?……ありがとうございます。…はい。私も自分のアイドルを続けます。お世話になりました」
碧、電話を切る。碧が振り向くと、みんなお喋りに戻る。
碧 「ねぇ、次は武道館でライブしようよ!」
碧、みんなの輪に混ざる。
FIN
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