年齢確認
マルボロミディアム・ワンカートン。
呪文を忘れないように何度も口にしながらコンビニへいった。
ワインもよく買いにいったが記憶にない。
きっといちばん安いものだろうな。
母はいつもワインをのみはじめると上機嫌になり、いっぽん空ける頃には泣いていた。
そしてボトルが空になるとお使いへ。
マルボロミディアム・ワンカートン。
昼でも夜でも関係なく呪文をとなえる。
時々、呪文を忘れて無印のマルボロを買ってしまい、泣きながら買い直した。
そしてある日、お酒を買うのに年齢確認が必須になった。
上機嫌でコンビニへいった。
「母の代わりでも買えないですよね?」
店員に母の運転免許証を見せる。
ワインを売ってもらえなかったことに不機嫌な母。
そんな母にバレぬように、生き生きとはずむ声をおさえる。
わたしは解放された!
お酒のお使いから!
マルボロミディアム・ワンカートン。