子どもの絵からドレスを仕立ててもらった話

2023年8月24日 20:17

先日、6歳の我が子が自分で描いたデザインをもとにして、仕立て屋さんにたいへん可愛らしいドレスを仕立ててもらった。とても素敵な体験になったので、記録として残しておきたいと思う。

ことの発端はそもそも我が子が生まれる少し前、私がまだ結婚をしたばかりの頃に遡る。
我々の式を担当してくれたウェディングプランナー氏に勧められ、右も左も分からないまま、私は人生で初めて(そしておそらく最後の)、“1からカラードレスを仕立ててもらう”という経験をした。

何も特別すごいお金をかけたという訳ではない。白い方のドレスは、レンタルではなく百貨店での中古販売会にて超破格(＋サイズ微調整のお直し代だけ)で手に入れた。当時の私が好むドレスデザインは最新の流行より古い雰囲気のものだったし、中古と言っても状態が悪いわけではなく、裾の内側に少しだけ使用感がある程度なので素人目には何も気にならなかった。

その分浮く費用でカラードレスを仕立ててみないか、と提案されたのだ。

自分だけのドレスを作るなんて、人生で経験が出来るとは思っていなかった出来事だ。少し悩んだがその魅力に惹かれてお願いしてみることにした。
紹介された仕立て屋さんはとても穏やかで優しそうな女性で、その人と打ち合わせを重ねて生地を選び、形を決め、最終的にとても素敵な、私のためだけの青色のドレスが出来上がった。同じ布で大きな可愛らしいリボンの髪飾りも作ってもらった。

でも私はお姫様ではない、ドレスを着るなんて結婚式の一日きりだ。
レンタルならその一日でおしまいだが、仕立ててもらったドレスにはまだ行き場があった。華美な装飾をすべて外し、丈を切り、シンプルなAラインのワンピースに作り直してもらったのである。
そうして私は挙式後、お気に入りの生地を使用した一点物のワンピースを手にいれた。正直、結婚式そのものの思い出以上に、手元に残ったこのドレスは私の素晴らしい宝物になった。
それは結局離婚してしまった今も変わらない。

そして、ドレスをワンピースに仕立て直す際に外した装飾や切り落とした布地はすべてそのまま頂いていた。当時妊娠中だった私に、仕立て屋さんは言った。「小学1年生くらいまでならこれで一着作れると思うから、ぜひまた連絡してください」と。

お腹の子は女の子だった。
胎児の性別がわかった瞬間、私は決めていた。
この子の七五三に、この布でドレスを作ろう、と。

そうして我が子はすくすくと成長し、早6歳となった。（これを書いている現在は7歳）
可愛いものやお洒落なものが大好きで、お姫様に憧れるおしゃまな女の子だ。自分だけのドレスは最高のプレゼントになるであろうことは間違いなかった。
そこで昨年、久しぶりにその仕立て屋さんに連絡を取り、打ち合わせの時間を取ってもらうこととなった。
七五三の記念撮影に着せようと思っていたら、ちょうど春先に友人の結婚式というめでたい予定が入った。当初の予定より少し早く作ってもらえるかと打診したところ快く受けていただけたため、友人の結婚式に間に合うように完成するという予定に決まった。

最初の打ち合わせは12月のクリスマスも間近な頃。
袋もそのまま取っておいた生地一式を持って、指定のアトリエへ。
少し緊張していた我が子も、優しい雰囲気の仕立て屋さんにすぐに打ち解け、いつもの元気で言った。
「ドレスの絵、描いていい？」
すぐに用意してくれた紙とペンで、我が子は迷うことなくスラスラと1つの絵を描き上げた。どんなドレスがいいかなんて私には一言も言っていなかったのに、彼女の頭の中にはもうイメージが固まっていたようだった。

それを見た仕立て屋さんの反応も速かった。
すぐに娘の求めるものを汲み取り、「ここはこう？」「ここはこんな感じでいい？」といくつか質問をしながら完成イメージを作り上げていく。私が口出しする間なんてほとんどないまま、驚くほどあっさりとドレスデザインは出来上がった。

それから一ヶ月。
1月中旬の二度目の打ち合わせ。今度は仮縫い状態のドレスをもってきてくれるということで、ワクワクしながらアトリエに向かう。

机に広げられたドレスを見た我が子の目が輝いた。
そこにあったのはイメージした通り、いやそれ以上に可愛らしい素敵なドレスの原型だった。試着させてみるとシルエットもなんとも可愛らしいふんわり感。間違いない、これは素敵なドレスになる。
肩パーツや残りの細かな装飾の付け方を相談して確定し、あとは仕上げてもらうだけ。

かつて私が選んだ美しい青色が、我が子にもとてもよく似合っていることがただただ本当に嬉しかった。

そして更に一ヶ月後、ついにドレスは完成。

華やかで可愛らしい、今しか着れない特別なドレス。
試着して嬉しそうに鏡の前に立ちくるくると回る我が子を見ていると、それだけで感無量だった。「ママとお揃いだね！」と喜んでくれるのも嬉しかった。
残った布で肩にかけられるストールも作ってもらい、立派なよそいきドレス一式が完成。
我が子の希望をうまくくみ取り素敵なドレスを作っていただいたことに、ただただ感謝するばかりである。

こうして、春に行われた友人の結婚式には、念願の親子お揃いドレスで参列することができた。

我が子は大きくなりこのドレスもいずれ着られなくなるだろうが、この体験が私にとって忘れられない大切な思い出の1ページになることは間違いないだろう。
願わくば、我が子にとっても同様の思い出になってくれることを祈るばかりである。

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