魔軍を制圧する、プルパ金剛
本日は歳末(チベット暦の)ですので、ダキニの除災儀軌(下の写真)を追加し、宝祚無窮と国土安泰、紛争終結と皆さまの除災招福を祈願しました。
またターラー女神の儀軌(二十一尊ターラー礼賛経を含む)を追加して病気平癒、息災・除災の祈念をいたしました。
さらに今回は、ギャルワ・ロンチェンパがお造りになった弁才天(弁財天)の行を修しました。ギャルワ・ロンチェンパならではの詩的な、すばらしい讃嘆文で、今回ダキニの日に唱えることができてよかったです。
さて午後3時からは、日頃お世話になっている寺院に赴いて、ヴァジラキラヤ(金剛橛)の除災儀軌(下の写真)を円満成就いたしました。
感染対策で寺院は普段クローズなのですが、チベット人のケンポ(学僧)に連絡を取ってわざわざ開院いただき、ケンポと共修することができました。3時間半にわたる大法要でしたが、独りでは準備できない除災のトルマ(本尊を降ろす依代)の準備もお任せできたので、貴重な機会でした。
また今回サポートいただいた皆さまの分から、チベット寺院に喜捨することもできました。
今回の儀軌(上の写真)は正式名称が「魔軍を制圧するプルパ」と呼ばれるもので、「ロンチェン・ニンティク」の法脈に属するものです。プルパ金剛を中央の本尊とし、不動明王や軍荼利明王など日本でも知られる明王を八方位に配した、極めてパワフルなマンダラを展開していきます。
ヴァジラキラヤ(Vajrakilaya)、チベット語で「ドルジェ・プルパ」(プルパ金剛)とはチベット仏教が継承する密教の強力な御本尊で、古訳ニンマ(ニンマ派)と、新訳派では主にサキャ派が重視します。
特に古訳ニンマにとっては「お家芸」的な本尊です。私自身、プルパ金剛はいろんな法脈の灌頂を多く受法していて、最も大切にしている本尊の1つです。
プルパ(橛)とは日本密教の護摩壇の四方に建てられている柱と同じもので、本来は古代インドの武器になります。
プルパ金剛という御本尊は巨大なプルパを手にしているのですが、「プル」とは空性を、「パ」とは智慧を表わします。つまりプルパとは、空性と智慧が結合した不二の状態といわれます。
プルパの行法では自我の貪欲を断ち、外の障害を降伏し内面の恐怖を消すことが目的です。外敵だけではなく、内なる私たちの敵を克服することでのみ、法界を悟ることが可能となります。
プルパ金剛は忿怒の御姿では金剛童子と呼ばれますが、寂静の御姿では金剛薩埵となります。大乗仏教の金剛手菩薩とは同体とされます。
グル・リンポチェはダーキニー・イェシェ・ツォギェルの懇願に応じてプルパの教えを開示された際、「この行法により富を手に入れ、寿命を延ばし、病気から解放され、吉祥をもたらすなどの功徳を得る」とおっしゃっています。
忿怒の御姿をしたプルパ金剛の法門には様々な儀軌がありますが、私たちが執り行なうのは呪詛のようなものではなく、己の煩悩の完全なコントロールです。
さらに人々の心に慈悲の心が生じる妨げがあるならそれを取り除くことで慈悲が増大し、結果として世界に安定と平和がもたらされることが目的です。