トランプの歴史 〜人々との関わり〜
我々が普段よく使うトランプについて, 込められている意味や歴史, 役割について調べてみる. トランプの背景知識を知ることによって, さらに愛着が湧き, 好きになれると思う.
1. スートに込められた意味
4つのスートの意味は, それぞれスペードは剣,
ダイヤは貨幣,
クラブは杖 or こん棒,
ハートはカップ
を表していると言われる. これらのスートはフランス発祥で, イギリスやアメリカでも使用されている.
一方で, その他の国では, 異なるスートを使用するところもある. どの国もスートが4種類であることは共通しているが, 例えば,
スペード → 木の葉
ダイヤ → 鈴
クラブ → どんぐり
ハート → 心臓
という感じである.
2. 枚数の違い
日本では, 1スートごとにA(1) からK(13) までの13枚で, それが4スートなので52枚. また, ジョーカー (とエキストラジョーカー) を含めて合計53枚 (54枚) となる.
しかし, 外国だとそれより少ない枚数であったり,
イタリア: 40枚
ロシア: 36枚
ドイツ・フランス: 32枚
反対にフィリピンのように112枚という遥かに多い枚数で構成されることもある. 場所によって, 枚数はバラバラであることが分かる.
3. 歴史
トランプの起源についての書物や分かっていることが少なく, 諸説あるが, 世界に広がったのは14世紀からだと言われている. カード占いというものが生まれたのもそれ以降である.
タロットカード (以下, タロット) から派生して生まれたとも考えられてきたが, 現在ではタロットよりも古い書物にトランプの記述があったため, その説は否定されている.
日本に入ってきたのは, 16世紀の南蛮貿易のときポルトガルから輸入されたものが始まりと言われている. このとき入ってきたのは, 48枚で構成されるCarta(ポルトガル語), いわゆる「西洋かるた」と呼ばれるものである.
当時の日本では, 禁止法が実際に出されたくらい, 全国的に流行していたらしい. また, 世界的にもトランプはとても人気があったが, それ故にトランプが課税の対象になり, パッケージに証紙を貼ることが義務だったらしい.
課税といえば, 16世紀のイングランド王, ジェームズ1世のとき,
当時のイングランドでもかなりトランプが流行していたため, トランプ1組当たり〇〇円という形で課税されていた (当然, 単位は円ではないが). そして, 出荷時に偽造防止のためにトランプの1番上にあるスペードのAに, 複雑な模様の納税証明印が押されていた.
それが長い歴史の中でカードのデザインに移行していき, 現在のスペードのAだけ派手なデザインになっている理由である.
4. 数字と占い
タロットと同じように, トランプの遊びの1つに占いがある. 占いには古代からカードが使われることも多々あった. 占いにトランプが使われた理由として, トランプの数字に込められた意味が鍵となる. スートの2種類の色が
赤 → 昼
黒 → 夜
を表し, また4つのスートが1年の春夏秋冬を表す. そして, 各スートの数字を52枚全て足し合わせると,
$$
(1+2+\dots +12+13)\times 4=364
$$
と364になり, それにジョーカーを1と数えて足せば,
$$
364+1=365.
$$
1組のトランプで1年の365日を表せるのである!ところで,
「エキストラジョーカーもある場合, 1枚余ってしまうのでは?」
という疑問を持った方もいることだろう. 実は, その366枚目, つまり366日目があるということは, うるう年のことを表していると解釈できるのだ.
また, トランプ1組で52枚だが, この「52」という数字が, 偶然にも1年が52週間であることと一致する.
これらのトランプの様々な数字的な特徴が, 奇しくもことごとく (年単位の) 占いと相性が良かったのである!
5 なぜ "トランプ" と呼ぶのか
トランプは, 英語でplaying cards, 16世紀の輸入したときのポルトガルではCartaであったが, 日本ではなぜかトランプと呼ぶ.
本来trumpという単語は英語では「切り札」を表すので, 直接関係ない名称が馴染んでいる. これはなぜだろうか.
実は, 南蛮貿易のとき, 日本でカードをプレイしていた西洋人が, ゲーム中に切り札の意味で「trump!」「trump!」と連呼していた際, それを近くで聞いていた日本人が,「とらんぷ」をそのカードゲームの名前だと勘違いし, それが間違ったまま日本中に広まってしまったのである.
嘘みたいな話だが, 当時の日本で流行していた花札に変わる存在になるくらい, 以降トランプが流行ることとなる.
最後に
トランプが日本を始め, 世界的なシェアを誇ったのは, 庶民でも購入できるコストの低さや, そのサイズの小ささ, 持ち運びやすさ, 占いとの相性の良さ, 賭博としての使いやすさなどが相まったからだと思う.
また, 今でもゲームや手品に使われ, 人々を楽しませることができている. それは, トランプが主役ではなく, あくまで道具や手段として使われているに過ぎない.
しかし, トランプが, 広く人々の間に浸透していき, 人と人との繋がりを形成していく一端を担っていったのではないだろうか.
文献
[1] 松田道弘.『トランプゲーム事典』(1988, 東京堂出版).
[2] ウィキペディア. "トランプ".
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