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CYNHNの新アルバム(EP)「アウフヘーベン」の曲感想
2023年9月20日が何の日かご存知でしょうか。
そう。
CYNHNの新アルバム「アウフヘーベン」の発売日です!!!!!
アルバムの収録順に、各曲について感想を述べていきます。
リサイズ(作詞作曲編曲:水槽)
希望のない行く末より灯った火を追いかけよう
(ちょうど発売日の21時にMVがあがりました)
聴き次ぐ(息継ぐ)暇もなくライムして代わる代わるリリックが注ぎ込まれるラップ。
山間に流れる渓流のように、淡々と透き通った流れに身を置きながら揺蕩っていると、途中の力強い歌声で揺り戻されて心地よい。
延命断って想定終わってても目離さないで
歌詞はけっこう不穏なことを呟いてる。
ともすれば『解散するのか!?』と少し不安になるような内容。通しでアルバム聴くとそんなことないと確信できますが。これをミニアルバムの情報公開一曲目に据えたセンス凄い。
畳み掛けるように問い詰める、怨嗟の声のようにも聞こえる。
君は僕を見捨てたようだけど、それでも顔を上げて一歩踏み出そうとする強い意思を感じる。
食べ飽きたさよならの味
見ない顔だね
当たり前だけど
何度も言わせないで
ここあたり。「さよなら」されるってことは互いに見知っているはずなのに、「見ない顔だね」って。少しドキッとする。
ファンでもない外野からの、勝手に期待しておいて落胆した声への反応って感じなのかな。
「希望のない行く末より灯った火を追いかけよう」
は後述のジンテーゼでも似たニュアンス・哲学を感じる歌詞があり、このアウフヘーベンを通してのテーマが見える気がします。
リサイズというタイトル、かなり意味深。
もともと6人で始動したユニット、長年の積み重ねのなかでメンバーの加入や卒業があり、新たに今の4人組ユニットへリサイズ。
それは縮小じゃなくて「新しいリサイズ」「拡大のリサイズ」って強く掲げて前を向く姿勢がすごく良いよね。
音だと、途中の間奏で海に飛び込んで深みに沈んでいくところ(泡を注ぐような音)が大好き。4曲通してメロディーだとここが一番印象的で好みだ。
推しみてくれタイム
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ライブだと途中で幾度か挟まれるクラップがうまく決まると凄い気持ちよさそう~
しっかりクラップするぞと予習してから挑むライブ楽しみだ~~~
収録風景を作曲してくださった水槽さんがTwitterにあげてらっしゃるのでぜひ見てくれ!
CYNHN「リサイズ」REC
— 水槽 (@suisoh_) June 28, 2023
撮影編集:水槽 pic.twitter.com/VZfexDLuBa
みなさんが「難しい」と呟いてるのを知ってから聴くとまた一層味わい深い。
下記、作曲者様の楽曲コメント
サファイア(作詞作曲編曲:威戸れもね。)
もうすぐだと感じるんだ
未来を見続けりゃ怖くは無い!
先の見えない暗闇、前後左右も分からない夢の中を彷徨っている。
真夜中の首都高、闇に溶けるネオン、深夜のシティポップ。
今回の収録曲のなかでそうとう異質な曲。
夜深くに聞きすぎると沈んでいきそうで怖い。
囁き声で心中を迫られてるみたい(褒め言葉)
リサイズよりも更に詰め、駆け抜ける歌唱で繋げていく構成はボカロの文脈で好き。
ラスサビでリフレインして一気呵成に盛り上がるところが気持ち良い。
ボカロ特有の曲構成でいうと、inst聞いて衝撃を受けたのが↑のラスサビのところをVoだけで構成してるところ。
"歌声"も一つの楽器のように機能させて曲に組み込んだ構成にしてるの面白いし、CYNHNの歌声への絶対の信頼を感じました。
歌詞の言葉選びが絶妙で心くすぐる。とりわけこのフレーズが凄い好き。
曖昧さだってスパイスだ
神がかけた魔法
青色(蒼色)カラスは見ていた、どうやら僕らの出番だ。
で締めるのが格好良い。
この曲のアルバムテーマは「もうすぐだと感じるんだ、未来を見続けりゃ怖くは無い!」
こんなに胡乱に、蜃気楼のように揺らめいてるなかでここのメッセージはかなりはっきりと芯の通った主張で、だからこそ輝いて見える。
他のタイトルに比べると抽象度高めで、CYNYHのモチーフカラーである蒼を帯びた宝石ってこと以外になにか手がかりはないかなとサファイアの石言葉を調べてみると、
サファイアの石言葉
「慈愛」「誠実」「真理」「貞操」「友情」
後述の楽曲コメントから「答え」が曲のテーマとすると、この中の「真理」の要素が合致するかな。
あと9月の誕生石らしいです。
それを踏まえて9月にリリースした……ってコト!?!?!?(流石に深読み)
下記、作曲者様の楽曲コメント
ジンテーゼ(作詞:理姫、作曲:奥脇達也、編曲:清水哲平)
流れ辿り着けば別れが待ってても
備えるのは美しくない
乾燥した空気、青で澄み渡った冬空、枯れた木々に囲まれた遊歩道。
曲のメロディーを強烈に印象付ける力強いバンドサウンド、それに負けない歌声の強さが互いに重なり合って、輝く。
後ろ髪を引かれないように『ちゃんとお別れをしようよ』って曲。
いっっっっっっっっっっっっっっっっっっちばん好きな曲。
「アウフヘーベン」ってアルバムの「ジンテーゼ」って曲、タイトルからもこれが一番の根幹に据えられたアルバムだと思ってる。
君が私と向き合って否定することで、止揚して統合される。
ギターがエネルギッシュに走って明るく駆け抜けてくれるから、歌詞は結構切ないけど後味が爽やか
ギターが強い曲が大好物です。
未だに歌詞を掴みきれていない気がする。
歌い方に反して歌詞全体がどこか諦念を滲ませて切なく、真綿で首を絞められてるような感覚になるのも新鮮で好き。
なんでかわからんけど、水生のアンサーソングみたいに感じる。言語化出来ないので戯言なんですが。
静まり返る先にいつもの節操ない光
光の足が伸びてきていつものように
クロレラ騒ぎだし増えてった
(中略)
透明な水中で一つのウロコ光通した
とりわけここあたりで、静まり返る→深海をイメージしての繋がりかな。
リサイズと同じで、結構攻めたリリックを刻んでる気がしている。
↑の節操ない光も、『私(たち)を好きって言っても、君は見境なく(いろんな他アーティストを)追いかけてるんでしょ』って責められてるようで、聴いてるこっちがまたドキッとする。私だけかな。
「荒ら稼ぎと羨望に平伏す」も、スポットライトの光を浴びて広く大衆に知れ渡っているようなアーティストへの感情なのかなと感じるとまた、どろりとした感情が乗ってる。
歌詞の
「月並みの信頼」「朝陽」「過ぎゆく風」「節操ない光」
と、音の韻でなく風景の雅で韻を踏んでる感じがたまらなく好きです。花鳥風月のようなエモさを感じます。
そこの歌唱を4人でハーモニー奏でているのも"ジンテーゼ"って曲のタイトルも踏まえて最高!
この曲のアルバムテーマ兼一番好きな歌詞は
「流れ辿り着けば別れが待ってても、備えるのは美しくない」
よくあるリリックだと
『やがて訪れる別れに向けて、準備はもう出来てるから』
その真逆の志向を突きつけるのがロックで良い。あと言葉選びで「備えるのは美しくない」って響きが格好良い。
全国ツアー、ラストの横浜は生バンドなので現地で聴くのがすっっっっごく楽しみだ!!!
下記、作曲者様の楽曲コメント
推しみてくれタイム
![](https://assets.st-note.com/img/1695226746397-3RYyuOXyuy.png?width=1200)
歌ってるときに「にやっ」と不敵な笑みを浮かべるところ、虜になるので是非MV見てくれ!!
![](https://assets.st-note.com/img/1695226747658-W5sMJLqgWQ.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1695226749413-7Jw2Zt4nIX.png?width=1200)
スターレット(作詞作曲:萌映 , 編曲:しゅうた)
君は君のままでいいよ
僕は僕のままでいるよ
エンドロールの夜明け。
カーテンを開けると眩しくて眼に沁みる朝日。
尖った前3曲をしっとり包み込んでアルバムを締めていて、聴き終わったあとに清々しさを感じる。
まっすぐに応援してくれる歌詞に勇気づけられる。
タイトルの意味が分からなかったので調べてみると、
ニュアンスからスカーレット(Scarlet)で、CYNHNらしからぬ紅に関連してるのかなと思ったらそうではなかった。
今回のアルバム的には2番の意味なのかな。
これから大空に羽ばたいていく姿を想像すると胸が熱くなるね。
リピート再生するとイントロがCメロになって一生抜け出せないのも良い。
CYNHNワールドにこのまま身を委ねて生きていこう。
まとめ(真面目)
CYNHNは今月9月に百瀬怜さんが卒業され、4人のアーティストグループとして活動することになりました。
その新たなCYNHNの姿が示したのがこのアウフヘーベン、新メンバーの広瀬みのりさんを加えての初めてのアルバム(EP)となります。
アウフヘーベン(止揚)とは独哲学者:ヘーゲルの弁証法を構成する概念。
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テーゼ(命題)とアンチテーゼ(反対命題)の対立により、ジンテーゼ(統合命題)を生み出すことを指します。
私が哲学の講義で学んだときは「昇華」とも訳されていました。清濁併せ呑むことで、ある命題をより高い次元へと広げ、価値を高めていく行動です。
![](https://assets.st-note.com/img/1695183409849-wQIbQ7BfaW.jpg)
(哲学は退屈なので何の関係もない画像を入れました)
アウフヘーベンは
『古いものから新しいものへ変化する際に、古いもののなかで"良い点"は残して変化しよう』(否定≠喪失)
という行動原理を含む(原義が"否定"と"保持")ので、今回のアルバムはまさしくその点を指していると思います。
これまでとは違う作詞作曲家を招き、「新たな色」を取り込んで更に進化する意欲的なアルバムでした。
新しいカタチ、新境地を拓いたリサイズ
ハイテンポに畳み掛けるサファイア
力強く決意を刻み込むジンテーゼ
上記3曲を抱えてまとめきったスターレット
灯った火を求めて、
もうすぐ来る未来を見据えて、
"未知"の終末に飛び込み、
君に会いに走り続ける。
現状維持の「打破」と「挑戦」が根幹を成すミニアルバムだと思います。
これまで(リサイズ・サファイア)の"君"は"僕"に期待して、
勝手に持ち上げて、
勝手に理想像を作り上げて、
勝手に離れていった。
そんな"君"を酷い人(優しくない)だと"僕"は思ってるけど、そうやって突き放してくれるから成長できたんだと思ってる。
かたやジンテーゼの"君"は中途半端な宙に浮いた関係性で繋がってて、そこからの脱却でしっかりと決別しようよと覚悟を決めた"僕"の強さ。
もっと簡単に言うと
リサイズ→サファイア→ジンテーゼ→スターレット
を通して、最初は否定していた"君"を思いやる心の広さが生まれて、最後は"君"をありのままの姿で肯定するまでに至った。
その有様がとてもきれいに収まってるなと感じました。
CYNHNはメディア露出に恵まれていない現状があります。
そんな逆風をも力に変えて前に突き進む意志。
水面下での着実な積み重ねと新しい風を取り込んだ挑戦で実った果実こそがこの「アウフヘーベン」なのかなと思います。
これからも成長を続けていく「未完の青」CYNHNが描く空の広さ、海の深さをまざまざと見せつけられる。
最高のアルバムでした。
(勝手に)宣伝
曲かっけ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
はやくライブで聞きて~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
そんなあなたに朗報!
なんとCYNHN、結成初の全国ワンマンツアーを開催!
ええっ!!!!
![](https://assets.st-note.com/img/1695285826945-LAz5rqFX5Q.jpg?width=1200)
北は北海道、南は沖縄!
名古屋、大阪、福岡、横浜と主要都市もしっかり押さえた全国ツアーだ!!!
平日でなく土日だから参戦もしやすい!
しかもなんとツアーファイナルの横浜はバンドによる生演奏!なんて贅沢!
あのCYNHNが君の町に!?
申し込み急げ~~!!!!!!!!!!!!!
(昭和のCM)
-完-