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中村さんその「わがままが言い足りない」が強がりと弱音の滲んだ失恋話で良い
この前の日曜日、「暴力的にカワイイ」というイベントでたまたま出会った曲。
中村さんそさんが最初に歌っていたこの曲がとっても切ない曲で、ぐっと胸に染み込んだので歌詞を通して紹介していきます。
長い君の話 聞き飽きたみたいだ
終わんない愚痴がまたぽろぽろとそこらじゅうに散らばってく
足の踏み場もないや
"君"との別れ話が最初に描かれる。それを受けて強がっている"あたし"。
「終わんない愚痴」を吐いてるのは君かあたしかは解釈が揺れるが、
「"終わんない" "愚痴"」 = 「"長い" "君の話"」
と共通点比較の構図を取ると、"君"が"あたし"に対してこれまですれ違っていた価値観について愚痴をこぼしているのだろう。
もし"あたし"が愚痴をこぼしているなら
「終わんない愚痴をまたぽろぽろとそこらじゅうに散りばめてく」
のような文体になるのも含めて、ここでは君があたしを眼の前にして愚痴をこぼしていると解釈した。
そしてここが"君"が"あたし"の側にいる最後のシーン。
サビに出てくる「あの夜」もここを指すと思われる。
愚痴は部屋の床中を満たして溢れんばかりに溢されている。
メンタルがやられてるときって部屋の掃除をするのも辛くて汚部屋になる。まだ片付けられてない(=心の整理が出来てない)。
むしろ、彼との繋がりを残すために整理してないのかもしれない。
誰でもいいなんてことはないんだけど
逆に君じゃなきゃダメなんてことも ないかも
恋愛モノだと"君じゃなきゃダメみたい"はよくあるけど、ここでは「君じゃなきゃダメなんてこともないかも」と達観している。
ただ、ここは最後の強がりポイント。
未練が残ってるのはあたしだけ、君はもう帰ってこない。
そんなあたしにもプライドがあって、『誰でも良いからあたしのそばにいてよ』ってわけじゃない。
でも、『運命の人は君だけじゃないよ。これから別の素敵な人にあって、あなたのことなんて忘れちゃうかもしれないから』なんて、捨て台詞を吐いてるようなぼやき。
そんなことはないのにね。
ねぇもう一度だけ会いたいなんて我儘を許して
ねぇもう二度と来ないあの夜だって だってさ
あたしまだ足りないのに 大人ぶりっ子してる
猫かぶって にゃんにゃん鳴いても もう遅いのにね
ここの「ねぇもう」の泣きそうな歌い方が好き、さらに「もう遅いのにね」で現実が分かっちゃってるあたしの聡明さと諦めが好き。
ここからは弱音で構成されていて、また元の関係に戻ろうよと嘆きつつもそんな奇跡は怒らないよねと諦めてる素直さがいじらしくて可愛らしい。
「大人ぶりっ子」:聞き分けの良い態度、"君"に理解のある"あたし"のフリをしてた。
『俺達、別れよう』って彼が切り出したあと、その場では文句も言わず都合の良い彼女ムーブで受け止めて頷いてたのかもしれない。
誰もいない部屋で一人、にゃんにゃんと鳴いて甘えても「もう遅いのにね」
君は完璧なんて1ミリも 思ったりはしないさ
だけどあたしと居る時だけは 完璧だったのかも
この部屋の空気も 今じゃ独り占めできるのに
なぜか酸欠状態 たばこ少し吸いすぎたのかな
別れた後、"君"がなにもかも正しかったわけじゃないと振り返る。
でも、一緒にいたときには輝いてみえた。恋は盲目。
広い部屋に独り。
どこか息苦しさを感じる。
"中村さんそ"ってアーティスト名で"酸欠状態"ってワードが綺麗で好き。
尻尾を振って 愛想を振りまいても
間違いは正しチャラになんてなんないね つまんないや
どうあがいても、取り返しはつかない。
ねぇもう一度だけ可愛いねって優しくあたしを撫でて
(ねぇもう二度と来ないあの夜だって だってさ
あたしまだ足りないのに 大人ぶりっ子してる
猫かぶって にゃんにゃん鳴いても もう遅いのにね)
秘密、少々 この手を取って 現実なんていっそ見なくていい
にゃんにゃん鳴いても もう遅いけどね
まだ甘えたりない、褒められたりない。もっと優しくして、あたしに構って。
でも"君"の前では言えなかった。
路地裏の猫の鳴き声のように、誰に届くこともなく虚しく響いてる。
それでも"君"に伝えられなかった想いが募り募って、「わがままが言い足りない」のかもしれない。
もう遅いけどね。
と、終始わがままと弱音を溢しながら、物わかりが良いからどうにもならないことを知ってしまっている心底優しい女の子の歌で好きです。
この曲は初出が6年前(2018年11月9日)なのですが、今は中村さんそさんの歌い方が更に成長しててエモさが深みをマシマシなので、ぜひ機会があれば体験してみてください。
私は上述通り暴力的にカワイイで撃ち抜かれていまに至ります。
「わがままが言い足りない」を聴いた後、「あたし、ちゃんといい子だったよ」を聴くとどこか彼女たちの共通点を感じて、さらに中村さんそワールドに深まることが出来て良きです。
"猫かぶりな大人ぶりっ子" "いい子"の彼女たちが内面に抱えたわがままとその儚さが染みます。