コウモリでオールオーヴァー(全面を覆う)
コウモリの話に戻ります。
何回か前の投稿で、自分が怖くて仕方のないコウモリをなぜかモチーフに選び、作品を作り出した話を書いたのですが、
『コウモリと線引き』
今回はその「BATシリーズ」の続きを書きたいと思います。
境界線について思うこと
境界線って、目に見えるもの見えないものに拘らず、いろんなところに存在しているようで、でもそのどれもがピシッと線を引けるわけでもないように思うんですよね。
まあ、もともと自然界には境界線なんて存在しなかっただろうしなぁ、とも。
例えば空の上だって、どこまでが成層圏でどこからが外気圏かって、人間が数字で決めてるだけで本当はどこにも境い目なんてないし、
国境とか県境とかって、空の上から見たら、はぁ?って感じになるんでしょうねぇ。
虹も七色だと思っているけど、そのスペクトラムはキッパリと分けるところがないままに、気がつくと全く違う色に移り変わっていて、
男女の間も、いまやその虹のスペクトラムのように多様であることが分かってきていて、LGTBという分け方だけでは大雑把なのかもしれない。
そして、善と悪、苦と楽、新と古、正と誤、のように目に見えない概念的なこととなったらもっとあやふやで、時代や場所、立ち位置とかで全く違ったところに線は引かれるんだろうし、なんなら同じ人でも気分によってそれが大きく変わったりするでしょうしねぇ。
BAT(コウモリ)たちを、人間社会の見立てに
そうやって四六時中いろんなところに線引きしている人間、世間、そして自分。
心のどこかでは、みんな一緒、もともと一つのものなんだし、ぼんやりしたままでもいいんじゃない?とか、ハザマで漂うのもいいよねぇ、とか思いながらも、それでも気がつくとなんらかの理由、基準をもって線を引いているんですよね。
そんな矛盾を表現しようと思った時に、ふと私の頭に中に立ち現れた哺乳類と鳥類のハザマの生き物であるコウモリ(あ、哺乳類なのは分かってますけどね)。
その世界を、どこかいつも不安定な私たち人間社会と見立てて、創り出したのがBATシリーズです。
コウモリからすると、勝手にハザマでフラフラしてる生き物だと断定され、やたらめったらBATと書かれては線引きとかされて、いい迷惑かもしれませんね。
コウモリさん、ごめんなさい。
しかし最初に作り出した時よりもコウモリたちの数はどんどん増え、作品もそれにつれて大きくなり、その紙一面をコウモリたちで覆い尽くしてしまうような形になりました。
上の写真は、私のアトリエ風景です。
といってもリビングにブルーシートを敷いただけのことなんですけどね。
大きな作品を作るときは、普段、書を書いている和室からこの「青い部屋」に移ってきます。
いつもは普通のフローリングのリビングで「茶色い部屋」です。
有難いことに、我が家で唯一の和室は私の書道部屋に、独立して出て行った息子の部屋は作品置き場にと、好きに使わせてもらっている上、こういう大きいのを作るときはリビングの床まで占領してしまって、それでも手狭に感じてしまうという、贅沢な話です。
オールオーヴァーな作品『BAT』WEB展
今回は、そうやって大きな紙をコウモリで覆い尽くした作品のいくつかを、小さなWEB展よろしく見て頂こうと思います。
「BAT ーCategorize」
2021年 140cm×240cm
墨・紙
かなり大きい作品です。
まず画面いっぱいに一気にBATを思うがままに書いてます。
アトランダムな墨継ぎをしたり、書きながら紙の上を移動し、自分の立ち位置や向きが変わるので、いろんなBATが現れます。
一面にBATを書いた後は、自分の思うようにカテゴライズした線をぐいぐい引いていきます。
線を引きながら、ここまでは入れる?とか、ここは違うモノとする?みたいに迷ったりしたりすること度々、その状態もなんか面白いなぁ、とも思いました。
「BAT ーCategorize(each)」
2021年 140cm×240cm
墨・紙
一見、ひとつ前の作品と同じ様なのですが、違うところはよく見てもらうと分かるんですが、一つ一つのBATが四角く囲われているんです。
ザクっとカテゴライズした後、よくよく見たらそれぞれのBAT、少しずつ違うやん!となって(筆を持って立ったまんまガーッって一気に書いているんですから、同じものなんて現れないのが当然なんですけれどもね)、全て一個一個(一匹一匹?)も線で囲んだものです。
「BAT ーCategorize」
2021年 10cm×240cm
墨・紙
これは実際は掛け軸仕立てに仕上げました。
「BAT ーCategorize」
2021年 145cm×145cm
墨・紙
コレも掛け軸にしました。
「BAT ーCategorize(each)」
2021年 60cm×70cm
墨・紙
これはそれほど大きくない作品ですが、なんか気に入ってます。
次は、「一対多」「自対他」です。
作品見ていただいてありがとうございました。
こうやってたくさんのBATを書きながら、その中のどれかは自分かもしれないという思いがありました。
その一匹のコウモリ(自分)と他者との関わり方、線の引き方もあらわしてみようと、まだこのBATシリーズは続きます。
が、それはまた次回に!