音楽日記#2 James Ferraro「Far side virtual」
私がこの作品を思い出したきっかけはYves Tumorに関する記事を書くための調べ物をしている中で、過去にJames Ferraroと関わっていたことの発見にある。非常に驚いた。vaporwaveの重要作品である「far side virtual」と、現在のロックサウンドをグラマラスに着飾るyves tumorにかつて接点があったなど想像すらできなかった。
vaperwave関連の記事を読み直す中で「デジャヴ」というワード出くわしたが、これは新たな言葉を獲得したような気分であった。結局、全てデジャヴなのだ。このアルバムは虚像で作られたバスルームにノスタルジーのぬるま湯をはる。「あったかもしれない」と言う感覚はもちろん錯覚で、windowsの音や海外のスーパーのミューザックが頭の中で立ち現れるが、私はずっとmacユーザーだし、最後の海外旅行は10年以上前だ。「仮装世界の向こう側」は虚像で、しかもあらゆる政治性が除外された”気持ちのいい理想郷”に見える。
james ferraroのインタビューを読むと、アメリカの加速的な消費社会に対する警鐘的な意味合いも含んでいたようだが、その意味では私は退廃的に本作を摂取しているだろう。
このアルバムを聞いている時はなにも考えなくていい。インターネットが内包する無限の可能性「のようなもの」を音楽「のようなもの」から感じ取り、私は懐かしい安心感に包まれたような気なって、浅い眠りにつく。