社会課題の解決に挑む人達
SDGsが一般的に認知されるようになり、SDGsに取組む企業も多くなってきた。今回は、そうした社会課題を自分事で捉えて、ビジネスで解決しようとしている人達(企業)を応援する気持ちを込めて、幾つか紹介していきたいと思う。
1. そもそも社会課題とは?
社会課題とは、社会の欠陥・不合理に起因して社会生活に支障をきたす大きな問題を指す。例えば、貧困問題、地球温暖化、限界集落、人種・性差別、難民問題など。日本国内でいえば、交通弱者・買物難民・介護難民、労働人口の減少に伴う人出不足、中小企業の後継者不足(それに伴う黒字倒産)、伝統工芸や農家の従事者の減少なども社会課題に含まれる。
その他にも社会課題はたくさんあり、我々なりに一覧化したものがこちら(添付ファイル参照)。
2. ソーシャルビジネスとは?
こうした社会課題を解決することを目的としたビジネスは、ソーシャルビジネスと呼ばれている。NPO/NGOや公共部門との違いは、寄付や補助金に依存せずに、収益を上げて、自己持続性を担保しているところにある(下図参照)。NPO/NGOを否定している訳ではなく、継続的に社会課題を解決していくためには収益性、つまり持続性が必要であるということ。
3. ユヌス・ソーシャルビジネスとは?
ソーシャルビジネスの先駆けは、ノーベル平和賞を受賞されたムハマド・ユヌス博士が創設されたグラミン銀行です。
ユヌスさんの出身地であるバングラディッシュの貧困層の女性達は、所得が乏しい上に、資産もそれほど持っていないために銀行からお金を借りることができない。そのため、地主や仲買人などから高い金利でお金を借りざるを得ず、そのことが貧困の度合いを更に深めるという悪循環に陥っていた。そうした状況を解決するために、マイクロファイナンスという小口の無担保融資等の金融サービスを提供した。しかもビジネスとして成り立つ形で。そのための仕掛けは大きく3つあった。
①移動業務:顧客である貧困層が銀行に出向いて手続きをするのではなく、銀行スタッフが村を訪れて手続きする。銀行としては、一度に多くの顧客を手続きすることができた。
②5人組グループの組成:借手同士で「5人組」のグループを作り、もし返済不能な者がでた場合は他グループメンバーが返済を肩代わりするようにした(実際には肩代わりするようなことはほぼなかった模様)。
③16の誓い:借りた資金を浪費しないように毎回ウィークリーミーティングの際に16の誓いを農村女性達が暗唱するようにした。
これらを含めて、ビジネスモデルキャンバスとして示すと下図のようになる。同じようなコンセプトのビジネスは共感を呼び、世界58ヵ国に展開されている(ビジネスモデルは各国の実情に合わせて異なる)。
ちなみに私の所属するアバージェンス社は一般社団法人ユヌス・ジャパンの主催するYYコンテスト(社会課題を解決するためのビジネスのコンテスト)を支援させて頂いている。
4. ソーシャルビジネスの事例
日本国内でもソーシャルビジネスを手掛ける人達が増えてきている。今回は5つソーシャルビジネスを紹介したいと思う。
①ポケットマルシェ:
一つ目は、ポケットマルシェです。たまにCM(ポケマル!)でも見かけるのでご存じの方もいるかもしれないが、単にオンラインで農作物を販売しているのではなく、社会課題に挑んでいるビジネスなんです。
・社会課題:1970年の農業者数は1,035万人であったのに対し、2018年には181万人に減少。しかも39歳以下は12万人しかいない。その根本的な原因は農家が儲からないから。だから、若者が都会に出ていき、農家をやっている知人が減り、生産者と消費者の分断が加速している。
・解決策:生産者と消費者を繋ぐプラットフォームの提供(下図参照)。生産者と消費者が顔の見える「個」として知り合って関係を深められる場を提供する。「どうせ買うなら、知っている”あの人”から」という構図を作っている。
・実現したい世界:生産者と消費者が、一人の人間としてお互いを思いあえる社会を作りたい。日本中に繋がりが生まれ、ある時は生産者が消費者を助け、またある時は消費者が生産者を救う。そんな「共助」の社会を実現する。
②ファクトリエ:
二つ目はファクトリエです。高品質な商品を適正価格で提供している会社です(メイドインジャパンの工場直結ファッションブランド)。私も幾つの製品を購入したけども、どれも秀逸です。購入した際に同封されている手書きの手紙も感動モノです。
・社会課題:アパレルの国内生産比率は約3.0%で、1990~2014年の間に約800万人の職人が消えた。日本アパレル工場は下請けビジネスにより価格が下げられ、赤字となり、若手が採用できずに、意識も低下していくという負のスパイラルに陥っている。
・解決策:顧客に高品質な商品を従来の1/2以下の価格で提供しながら、工場に適正な利益を分配する仕組みを構築(下図参照、ファクトリエ社のHPより引用)。つまり、①小売り希望価格→工場希望価格、②中間業者を介さずに直接販売。
・実現したい世界:工場が事業を持続的に展開できる未来を実現する。そして日本の誇れるモノづくりを通じて、豊かな社会を作る。そして、日本から世界一流ブランドを作ること。
③ウェルモ
三つ目はウェルモです。介護経験がないと知らない方も多いかもしれない。これから更に急増する要介護者。その介護現場の現状を打破することと、利用者が適切な情報をもとに適切な介護サービスを受けられるようにするビジネスです。
・社会課題:介護現場の体力的・精神的負担、離職率の高さ、マネジメントの機能不全が常態化している一方で、利用者本位でサービス提供がされていない。その根本的な原因は、「介護事業所は中小企業が多く、アナログ文化故の介護の情報の非対称性さ」にある。
・解決策:社会資源情報の見える化をするプラットフォームと付加サービスを提供する。具体的には、福祉専門職・企業・一般利用者向けにそれぞれの情報を整理し、必要な情報をスムーズに得られるサービスを提供する(下図参照、ウェルモ社のHPより引用)。
・実現したい世界:利用者本位と正当に評価される福祉業界の実現
④AsMama
四つ目はAsMamaです。小さな子供を抱えているママ達を手助けするために、顔の見える地域の子育てシェアリングサービスを提供。
・社会課題:世帯収入が減り、少子高齢化が進んでいる。少子高齢化の原因の一つは子育てをサポートしてくれる人達が周りにいないから。
・解決策:ソーシャルニーズマッチングのインフラ構築。具体的には、支援をしたい人・企業と支援してほしい人が安心して有意義に出会うリアルな機会と、双方のニーズを安全に気兼ねなくタイムリーに両立する仕組みを提供。しかも、子育て世帯からは一切お金を取らず、多種多様な企業の課題解決支援を通じて活動資金を得て、事業を運営(下図参照、AsMama社のHPより引用)。
・実現したい世界:社会を構成する全ての人や企業や団体等が頼ること・頼られることを通じて本来の能力を発揮でき、それぞれが理想とする経済的、社会的、精神的豊かさの実現を創出する。
⑤ボーダレスジャパン
五つ目は、ボーダレスジャパン。メディアでも紹介されているので、ご存じの方も多いかと。ソーシャルビジネスしかやらない会社。国内・海外や、分野を問わず、35のソーシャルビジネスを展開。
・課題:ソーシャルビジネスを行う社会起業家がなかなか増えないし、難易度の高いソーシャルビジネスの成功確率が低い。
・解決策:恩送りのエコシステムを構築(下図参照、ボーダレスジャパン社のHPより引用)。社会起業家が集い、余剰利益やノウハウを次なる社会起業家に提供する。そして、2期連続して黒字化したらその社会起業家は今度は余剰利益を分配する側に回り、次なる社会起業家を応援する。
・実現したい世界:ソーシャルビジネスを行う社会起業家を増やし、社会を変えるアイデアを世界中に広げたい。
5. 最後に
今回は社会課題とは何か、ソーシャルビジネスとは何か、具体的なソーシャルビジネスにはどんなものがあるのかを共有してきた。これから我々は多くの社会課題に直面する。今はまだ”他人事”の課題が、何れ”自分達”の課題になってくる。その時に、「時すでに遅し」とならないように、社会課題の解決に向けて、自分達に今できることは何かを敢えて考えていく姿勢・行動が必要ではないかと思う。ソーシャルビジネスを自ら始めたり、ソーシャルビジネスをしている人達を応援したり。応援の仕方も様々あり、商品を購入したり、出資したり、取組みを拡散したりと。
私自身もオンラインサロン「CLUB RIGHT HAND」を立ち上げて、社会課題を含めて、様々な課題解決の知恵出しの場を提供している。サロン内では、【農業経営の課題解決プロジェクト】、【お城を建てるプロジェクト】、【自叙伝プロジェクト】など社会課題に対する解決策を検討している。また、様々な課題を解決するために必要なナレッジも提供している。「こういう社会課題を解決したい」、「こんな顧客の課題を解決したい」という想いのある方や、熱い想いのある方々を応援したい方や、ビジネススキルを身につけたい方(将来誰かの右腕になりたい方)などは、是非、覗いてみてください(月額1,000円、いつでも入退会可能)。