1対1のコミュニケーションの方法論 ~どこでも通用するスキルを身に着ける④~
終身雇用制度が崩壊し、副業や兼業を行う人が増えてきたし、これから異業種間の人の流動性も高まってくる。そうすると、どれだけ”持ち運べる”スキルがあるかが重要になってくると思う。専門的な知識や社内調整力よりも、①課題解決力、②人を動かす力、③構想力など、どこへ行っても通用する能力を身に着ける必要性が高まってくると思う。
今回は”人を動かす力"(詳細は以下note参照)の中でも、特に1対1のコミュニケーションの方法論について語っていきたい。
課題解決の実行力を高めていくには、メンバーが解決すべき課題を理解し、その重要性を認識し、課題解決に向けて、何をすべきかを腹落ちし、自ら動いていくのが理想的である。
では、このような理想的な状態に持っていくために、どんなステップを踏めばいいのだろうか?
それに対する私の解が、1対1のコミュニケーションにおける6つステップである。そのステップとは、①オープニング、②プランティング、③エマージング、④プロポージング、⑤クリアリング、⑥ノッティング、である。ちょっとよく分からないだろう表現だけども、日本語の表現も含めて、ご確認頂きたい(下図参照)。
6ステップとゴール
では、その6つのステップとそのゴールについて解説をしていく(下図参照)。
①オープニング:
メンバーにあなたは”問題を一緒に解決してくれる人”だと認識してもらうことがゴール。別の表現をすれば、メンバーに”この人は味方だな”と思ってもらうことである。この状態にならなければ、それ以降のステップに進んでもうまくいかない。
②プランティング:
メンバーに、解決すべき問題と真因を認識してもらうことがゴール。要するに、メンバーが"問題は〇〇で、原因は××で、真因は△△ですね"と語れるようにすることである。
③エマージング:
メンバーに、その問題はすぐ解決しなければいけない問題だと認識してもらうことがゴール。幾つか問題や仕事がある中で、メンバーに”この問題は今すぐ解決しないといけないですね”と言ってもらうようにすることである。
④プロポージング:
メンバーに、問題の解決方法が分かったと認識してもらうことがゴール。要するにメンバーに、"真因はこれで、解決策はこれですね"と言ってもらうことである。
⑤クリアリング:
メンバーの抱く不安や懸念を払拭することがゴール。問題の解決策を打つということの多くは、新しい解決策であり、新しい行動が伴うことを意味する。その際にメンバーは二の足を踏みがちになるので、それを汲み取って、懸念を解消していく。ちなみに懸念は、6つのステップのどのステップでも発生しうるので、階段の絵から離れて配置している。
⑥ノッティング:
メンバーに、問題解決のための具体的な行動を決めてもらうことがゴール。要するに、「これとこれをXXまでにやります」という状態を目指すことである。
各ステップのポイント
では、各ステップのゴール達成に向けて、何がポイントになるだろうか? 各ステップごとにポイントを解説していく。
①オープニング:
メンバーにあなたは”味方だ”と思ってもらうためには、5つのテクニックがある。A:アイスブレイクで雰囲気を作る、B:率直に伝える、C:メンバーの意見を傾聴する、D:メンバーの使う言葉や仕草を真似する(ラポール:下図参照)。E:共感する(相槌・反応、同意、認める、メモを取る)
②プランティング:
問題・原因・真因をメンバーに認識してもらう必要がある。そのためにはあなたが仮説を持った上で、メンバーに質問をしながら、メンバーと一緒に仮説を構築していく必要がある。「何が問題だと思う?」「なぜそれが問題だと思う?」「他に問題はある?」「仮にそれが問題だとして、その原因は何だと思う?」「他の原因は?」という具合に質問をしながら、メンバーの考えを引き出し、整理していく必要がある(下図参照)。
これは高等テクニックなので、まずは自分なりの仮説を先に構築した上で、質問を事前に用意をしておくこと。なぜなら、慣れないとオープン型の質問はなかなか出てこない。逆にクローズ型の質問を続けてしまうと警察の取り調べのように尋問的になってしまうので要注意。
③エマージング:
様々問題や仕事を考えている中で、問題の重要性を高めないと、メンバーはすぐにアクションをしてくれない。問題の重要性を高めるためのテクニックは三つ。
A-予測:問題を放置した場合の影響を予測させる方法。例えば、「この問題を放置したら、どうなると思う?」「問題を解決したら、どんなプラスの影響があると思う?」というような質問を通じて、予測をさせる。予測をさせることで、問題の重要性に気づく場合がある。
B-算定:問題の大きさを算定させる方法。例えば、「この問題による機会損失おれくらいだろうか?」「この問題が解消されると、どれくらい助かる?」などを質問する。質問を通じて、問題の大きさを算定させることで、問題の重要性に気づく場合がある。
C-例・類似:例・類似を活用する方法。例・類似を挙げて、問題のイメージを明確にし、影響度合いをメンバーに想像させる。例えば、「このような問題は過去にも発生したことがある? その時はどうなった?」とか、「他部署で似たような問題はある? 当事者たちの対処はどんな感じだった?」などを質問する。それを通じて、問題の重要性に気づく場合がある。
④プロポージング
真因に対する解決策を考える。問題が何で、真因が何かを再確認してから、解決策を一緒に考えていく。出てきた解決策のプラス面・マイナス面を整理して、どれがベストな解決策かを一緒に考える。
ちなみに、真因から解決策の考えるテクニックは以下noteをご参照頂きたい。こちらのnote記載のテクニックをメンバーと一緒にやるのも一つのやり方である。
⑤クリアリング
新しい解決策や新しい行動であればあるほど、不安や懸念が発生する。だから、無理やり推し進めるのではなく、随時メンバーの不安や懸念を聞いて、解消をしていく。解消をしていくためには、メンバーの不安や懸念が、【疑問や不審】なのか、【誤った情報や誤解】なのか、【もっともな懸念】なのかを見極めて、対処する必要がある。特に【もっともな懸念】の場合は、真摯に話を聞いて、真摯に対応する。自分の考えだけを押し付けて、強引に進めないことである。
⑥ノッティング
解決策も決まり、懸念も解消できたら、最後は行動の確約を取っていく。つまりは、誰が何をいつまでにするのかを明確にしていく。その時のポイントは、情報限定型や選択型のオープン質問(下図参照)を使うことで、期限や担当を決めていき、クローズ型の質問を使って、メンバーの意思を確認しながら、背中を押していく。
纏め
1対1のコミュニケーションの6つのステップ・ゴール・ポイントを共有してきた。それを要約し、整理すると下図のようになる。この1枚紙をもって、MTGに臨むだけでも大きく結果が異なってくると思う。
世の中では、1on1 MTGが多くの企業で導入されているけども、単に1対1の場を持つだけでなく、コミュニケーションの仕方・中身まで踏み込んでいく必要があるだろうと思う。さもなければ、1on1 MTGの本来の効果が十分に発揮されないから。
今回共有したアプローチをそれぞれの1on1 MTGに、少しでも活用されることを期待したい。