書物にまつわる本
文化人類学者 今福龍太の著書に遅ればせながら初めて出会った。何の前知識もなく惹かれた本には、自分も好きな作家やその作品やその一文が引用されていたりするから不思議だ。実際に大学のゼミの講義から生まれた画期的な書物論「身体としての書物」は、
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いわゆるペダンチックな論文とは大きく違い、選ぶ言葉が美しく流麗でその論理さえ上品な様相を呈している。文才のある哲学者や翻訳家の文章を読むようで、詩人の散文のようでもある。作家と同じ優れたセンスで作品を感知し読み解くことが出来る才人なのだろう。彼の解釈で今一度マラルメも読み返したくなった。
書物、書・本が文字通り『物』として存在する意味を、歴史的にも物理的にも精神的にも語り尽くそうとする、並々ならぬ本への思いが伝わって来る。
よくある紙vs.電子の書物論がくだらなく、そもそも舞台を異にする次元の話であることを解き明かす。
それを推し進めたかたちの「書物変身譚」の帯や凝った装丁に遣られた。https://www.amazon.co.jp/dp/4103357916/
"きのうは琥珀だったあすは蝶になる…。私たちの掌で、精神の内奥で、ゆたかに変身しつづける本の自徐伝。"
ぜひ、2冊続けて読むことをお勧めする。
偶然か必然かほぼ時を同じくして出版された、その内容に値する美しい装丁の「思考の取引」は本来ある書店の顧客のために上梓された限定本らしいが、見事な仏文和訳と思われる一冊である。https://www.amazon.co.jp/dp/4000259903
ジャン=リュック・ナンシーが現代フランス最高の哲学者であることを私のように知らない者にでも、書物の意義と書物と書店のあるべき望ましい姿が端的に伝わって来た。
美しいというだけで手にする価値は大いにあると感じる。難しいというだけで本を開きもしないことは本当にもったいないことだ。
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