【ネタバレ注意】にじさんじRRR山脈がマジで面白かったので、勢いでなにが面白かったのか感想を交えて解説した記事
にじさんじRRR狂気山脈、すべて見終えました。
あまりに素敵で素晴らしすぎるセッションだったため、初めて他人のセッションに関する感想文を一筆認めてみようかという気持ちになりました。
以下は個人的な推測(妄想)を交えた感想(解説)となります。
私自身、TRPG歴はそこまで長くはない初心者ですが、一度見た方でも改めて見直したくなるくらい、初心者なりにこのセッションの素晴らしいポイントを言葉にできたならと思います。
1. 探索者たちの成長
さて、漫画やアニメや小説などの物語を楽しむ上で受け取り手が期待するものはなにか。そのひとつに「主人公をはじめとした、登場人物たちの成長」があるとおもいますが、このセッションには“それ”がありました。
人と触れ合うことを意味嫌い、孤高を好んだシルバーは仲間を積極的に助けるようにもなるし、あれほど人と触れ合うことを嫌がっていたにも関わらず、パラシュートで降下するときにルカの手を躊躇なく握るほどにまでなった。
ルカは兄の死を乗り越え、「イヴァン・ラヴローヴァの弟」ではなく「ルカ・ラヴローヴァという名のひとりの登山家」として最初に狂気山脈の頂に立った。
すこしワガママで自分本位で登山隊への加入目的も「シルバーと写真を撮る」という軽い気持ちだったMayuも、この世で最も恐ろしい自然と不自然を孕んだ狂気山脈の恐怖を目の当たりにしながらも「みんなで生きて帰る」ことに対して前向きで積極的に動くようになり、彼女のワガママでルカの命を救うにまで至った。
シナリオに沿った単純な物語を作ることはどのセッションにおいても可能だし、それは十分に楽しいことですが、このように探索者たちがちょっとずつ仲良くなって、仲良くなったからこそ成長していくこのセッションは、受け取り手としてはより一層楽しめるものになっていました。
2. くだらなさ
章タイトルだけ見れば批判に見えてしまうかもしれませんが、そうではありません。むしろシナリオ『狂気山脈』のように常に切羽詰まった状況において視聴者はともかく、自分たちも楽しむための清涼剤として挟むボケというのは大切なことだとおもいます。
そして、このプレイヤーたちの素晴らしいところでもあるのですが、シーンに対する分別がきちんとしており、真面目なシーンならとことんかっこよくRPし、ボケてもよさそうなシーンならとことんボケるんです。こうしたオンオフがしっかりしてることでセッションの空気感は壊すことなく、そのコントラストが真面目なプレイもボケもよく際立っていて面白かったです。
3. とにかく提案する
RRRのみなさんはことあるごとに「これこれしたら、こういう補正つきませんか?」という提案をしているのが印象的でした。
個人的な話ですが、こうした提案に積極的なプレイヤーは「シナリオを壊さないまでも本気で生還したい」という強い意志を感じて、とても好きです。
そしてしつこすぎないのもまたよかったです。キーパーが提案を却下した際に不機嫌になったり、しつこく提案を押し通そうとすることもなく、テンドンギャグとして楽しめる範囲に収めていたのが非常に心地よかったです。シチューで何回補正もらうつもりなんだよ、って。
4. 荒ぶるダイス
このセッションはとにかくダイス目に愛されていたと感じます。「おいおい、あんなにファンブル出てたのにか?」と言われてしまいそうですが、「だからこそ愛されてると言えるんだ」と返します。
正直、ファンブルファンブルとダイス目は奮わず、探索者たちは窮地に立たされることばかりでしたが、その窮地を脱するためにRPをするし、良いダイス目が出れば盛り上がるんです。だからドラマチックなんです。
ダイスに弄ばれて振り回され、その先々で一喜一憂することはTRPGの醍醐味であり、TRPGの楽しさ。それをこのセッションでは存分に味わえたかとおもいます。だから、ダイス目に愛されてる私は言います。
5. ジョー・力一さんについて
力一さんのRPはとにかくいちいちかっこよかったですね。頑固なオヤジらしい部分はしっかりとギャグになっているし、そこが綻ぶ瞬間は感動になるしで「次はなにを言うんだろう」とドキドキしてしまうほどでした。
また、力一さん自身のプレイイングで素敵だと感じたのは、なにか大きな決断をするときに「お前はどうだ?」と、まず鷹宮さんや竜胆さんの意見を尊重したり、その意見の背中をそっと押してあげようとする動きでした。すこしクセの強い女子2人組を穏やかに守ってる様が非常にジェントルマンで、ダンディーで、男前で、人柄のよさがプレイイングに滲み出て好きでした。
6. 竜胆尊さんについて
「ルカ・ラヴローヴァとはどんな人物か」をしっかりと理解して、愛情をたっぷりと注ぎ、細やかにルカを表現したいという気持ちが伝わり、このセッションにおいて最も感動を誘うRPをしていたとおもいます。私もルカの震え声を聞くと、グッと来てしまいました。
竜胆さんはRRRの中で最も“クトゥルフ神話TRPG”に対する造詣が深いと言うこともあり、進行や行動指針の提案をしてほかのふたりを一切の嫌味なくリードしてて逞しく、頼もしい鬼だと感じました。こうした舵取り役がひとりいるだけでもセッションは円滑に進んでいきます。RRR、全然グダグダじゃなかったですよ。
7. 鷹宮リオンさんについて
とにかく印象的だったシーンはコージー崖から転落して大怪我を負い、下山したいとゴネたとき、Mayuが弱気になったところです。
探索者というのは勇敢で知的好奇心旺盛な生き物で、よほどのことがなければ進んでリタイアすることを選ぶようなことはありえず、このシーンにおいてもおおよその探索者ならばノータイムで「俺は行くぞ」と強気に見せるところを、あえて一旦「ダメかも」という素振りを見せることで、そのMayuという人物が探索者である以前に普通のか弱いギャルであることを再認識でき、このクッションがあることでこの先の彼女の成長がより際立って感じることができました。
8. 高生紳士さんについて
私たちがリプレイ動画やセッション配信を楽しむおおよその要素はダイス目や個性豊かなプレイヤーおよび探索者ですが……このセッションの面白さは高生さんのキーパリングという土台があってこそだと言っても過言ではありません。
この高生紳士という男、とにかく、本当に、キーパリングが巧みです。私もキーパーで遊ぶことが多い人間ですが、見習わなきゃとおもう部分がわんさかわんさかあります。
高生さんのキーパリングは天界卓などで何度か見ていて「この人うまいなぁ」とおもっていましたが、このシナリオ『狂気山脈』という複雑かつ硬派でキーパリング難易度の高いシナリオを長時間プレイしたことで、すごさが浮き彫りになったとおもいます。
優しいけど甘くはない対応
プレイヤーが判定に成功したとき、高生さんは毎度「えらい!」と我がことのように喜ぶのですが、これをもはやクセと呼べるレベルで自然にしてるのが、いいんですよね。ささやかなことですが、キーパーがちゃんとプレイヤーの味方であることがわかるのは、プレイヤーも視聴者も安心しますし、この一言だけで成功の判定がより喜ばしいことのように感じられます。
また、プレイヤーの提案を積極的に採用しようとするのもいいキーパリングでした。そうすることでTRPGの自由な部分をプレイヤーに楽しませてあげられますし、これもやはりこのキーパーはちゃんとプレイヤーの味方をしてくれてるんだというのがわかる姿勢で好きでした。
ただ、こうした提案をすべて採用するわけではなく、遊んでも良い場合、そうした方が盛り上がる場合、プレイヤーが萎えることを避けたい場合のみに絞って採用し、“クトゥルフ神話TRPG”の、とくにこのシナリオ『狂気山脈』の過酷さを損なわないように、必要最低限のリスクを残してスリルを守っているんですよね。ゲームシステムやシナリオが持つ世界観や旨味を理解し、愛し、それをプレイヤーに伝えたいが故だとおもうのですが、私個人的にはとても好みのキーパリングでした。
前述の通り、プレイヤーたちも高生紳士というキーパーが自分たちの味方をしてくれてることを、彼のこれまでの姿勢から空気で感じて理解してるから積極的に提案しようという気持ちになるし、無理にゴネる気も起きなかったのではないでしょうか。そんな風に、直接的な言葉ではなく、彼はキーパリングだけでプレイヤーたちをまとめあげていたように私は感じました。
コージーの扱い
私はまだシナリオを読んでいないのでなんとも言えないのですが、おそらくコージーは、コンプレックスを抱えた見栄っ張りがコンプレックスを乗り越えて成長していく準探索者という位置にいるNPCだとおもうのですが、このコントロールが素敵でした。
後々になって探索者の言葉で成長するコージーを見せるためには、「うざったいけど、憎めないやつ」としてプレイヤーに認めてもらう必要があるのですが、これはなかなか難易度高そうな話です。下手すれば「癪だなこいつ、殺したろ」となるプレイヤーが出てきてもおかしくないのですが、高生さんが操るコージーは愛嬌があり、探索者に次ぐ主人公としてちゃんと描かれていたかのようにおもいました。拍手。
緊張させすぎない
私自身も気を遣っていますし、身内にもよくこの話をしているのですが、探索者もプレイヤーも追い詰められて緊張することが多いこの“クトゥルフ神話TRPG”というゲームをやるにあたって、その状態が維持され続けることはあまりよくないことだと考えています。それは、緊張させ続けることでその緊張に慣れしまい、システムの旨みが薄れてしまう可能性が多いにありますし、なによりもプレイヤーたちが大きなストレスを抱えてセッションを楽しめなくなってしまうからです。
高生さんはこのあたりを、プレイヤーのちょっとくだらない提案に乗っかったり、ダイス目のせいでポンコツになってしまったコージーが前に出たがったりさせることで、プレイヤーたちをホッとさせることに成功しています。このさりげない気遣い、名前に恥じぬ紳士そのものと言えるでしょう。
9. 最後に
セッションを見た後に勢いのまま書いたこの超雑乱文を見た方がどれほどいるのか疑問ですが、最後まで見てくれた方には感謝を。言葉にしておきたいことがほかにもあったかもしれませんが、とりあえず勢いと気の向くまま書いたので、それはご愛嬌ということで。
このような感想(解説)を書いて、「お前は何様の目線で偉そうに語っているんだ」とおもわれてしまうかもしれませんが、とにかくすこしでも、セッションに携わった方々や私と同じ視聴者の方々に「このセッションは、こんなにすごい面白い要素の塊なんだ!」ということが伝わってればなと願います。
最後に、高生さん、力一さん、竜胆さん、鷹宮さん、素敵なセッションを配信という機会で見せていただいたことを幸せにおもいます。ありがとうございました。みなさんの探索者たちやNPCたちのことが好きになってしまったので、生還できたことがとても嬉しかったです。最高でした。