GS全盛期にモッズの影?リンド&リンダース『銀の鎖』はIDブレスレットのことなのか
1968年1月、フィリップスから発売されたリンド&リンダースの『銀の鎖』。
内容はこの時代によくある「君」に「銀の鎖」をもらったというものなのだが、一体この「銀の鎖」とは何を指すのだろうか。
それはまず歌詞からして手首に巻くもの=ブレスレットであることがわかる。
そして
①60年代に流行した②鎖状の③ブレスレットということから、
答えは「IDブレスレット」ではないだろうか。
「IDブレスレット」とは、
60年代イギリスに出現したモッズ文化における重要なファッションアイテムである。
それがいかに重要かということは、以下の通りである。
そもそも60年代のオリジナルモッズと80年代以降のネオ(リバイバル)モッズにはさまざまな点において違いがあるものの、
モッズであればほぼ必ずといっていいほどIDブレスレットを着用している。
つまりIDブレスレットはモッズのマストアイテムなのだ。
では60年代にそのモッズ文化も他の英国文化と共に日本に流入してきたのだろうか。
答えはノーに等しい。
たしかに、田村正和氏は元祖モッズ俳優であり、当時の雑誌もカーナビーストリートの一文化としてモッズを取り上げていた。
しかしながら本格的に日本に「モッズ」としてその文化が根付いたのは本場英国でのリバイバル時であり、60年代にはそれは「モッズ」としては根付いていなかった。
つまり60年代のモッズ文化は日本においてそれそのものとしての単体では受け入れられておらず、雑多な英国発の若者文化の中の一部として受け入れられていた。
そこで本題に戻るが、『銀の鎖』はそれが明らかにIDブレスレットを指すことから上記の「まだモッズそのものとしては受け入れられてもらえてないモッズ文化」の片鱗をみることができる楽曲であることがわかる。
そしてグループ・サウンズの若者たちはこの楽曲の例のみならず、ファッションにおいても当時流行りの一部としてモッズ文化を受け入れていた。
例えば、彼らのスーツスタイルはかなりオリジナルモッズっぽい。狭いVゾーン、4つボタンのセットアップにタートルネックを合わせている。(彼らはでかい腕時計をつけているが)
そしてスパイダースのかまやつ氏のこの写真は完璧なモッドルックといえる。
細いネクタイ、狭いVゾーンに4つボタンのスマートなスタイルである。
つまりこれらのことから、彼らはレコードのジャケット写真用の派手な王子様系やサイケなファッションだけでなくモッズ風のスマートなスタイルも取り入れていたことがわかる。
上で述べた通り、GSは確実にモッズ文化の要素を持つため「GS=モッズではない」
という理論は間違っているのである。
我々はGSの驚くべき多面性を侮ってはいけないのである。
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