『呼吸をふわっと整える』 セルフ・ライナーノーツ その4
深い呼吸とは長い呼吸か? ―― 整体の現場のリアル
深い呼吸とは<呼>と<吸>の間でゆるみきることでもたらされます。ゆるむ(リラックスする)ことも縮む(集中する)ことも自由自在にできることは、深く滑らかな呼吸と一体なのです。ふわっと舞い上がりふわっと舞い降りるような無重力に近い感じの呼吸。これが目指すところです。『呼吸をふわっと整える』第一章より
身体の自己調整とリンクする深い呼吸が生まれるためには、呼吸(とくに<呼>)が長いほうが有利です。<呼>が長くなって、充分吐ききるときに、呼吸がふわっと一瞬止まるように見えます。整体の現場で、受け手の呼吸がこういう“ 感触 ” になったあとで身体に触れて調べてみると、だいたいの場合、緊張がゆるんで軽くなっているのが分かります。
しかし一方、意識的に呼吸を長くするほど、“ 呼吸がふわっと一瞬止まるように見える ” 瞬間が生まれやすいかというと、そうとは限らないのが難しいところです。呼吸を長くすることを意識することで、かえって緊張が高ってしまう場合には、息を吐ききって全身がふわっとゆるむのを邪魔しやすくもなってしまうのです。
整体の現場で呼吸の変化を観ていると、リラックスとともに呼吸は長くなっていく傾向はあります。ただし、呼吸が大きく長くなるほど呼吸が深くなる(<呼><吸>のあいだに “ 間 ” が生まれる)というわけでもありません。リラックスが深まって、<吸>より<呼>が少しだけ長くなりさえすれば、“ 間 ” は生まれやすくなります。そこからさらに、呼吸は静かになめらかになって、深まっていくことになります。
おそらく、“ 呼吸がふわっと一瞬止まるように見える ” 瞬間に身体が変わっている。ここに “ 間 ” があると思われるのです。ただこの瞬間の身体のバランスの変化の動きそのものはどうしても見えないわけです。眼には見えないが、術者側にはスッと抜ける、晴れるような体感がある場合もよくあります。しかし、これも “ 間 ” そのものというより、その直後の感覚といったほうがいいでしょう。眠りに落ちる瞬間がどうしても意識できないのと似ているのです。
つづく
『呼吸をふわっと整える』は2019年10月16日 河出書房新社から刊行予定です。現在、Amazon で予約受付中。
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