2022年後半〜23年初 身体の”野生軸”を再起動する
2022年後半の身体動向
2020年2月、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号で新型コロナの感染が確認されてから3年続くコロナ禍。
加えて2022年2月24日には「ウクライナ侵攻」、ネットで戦況をつい追ってしまうという人がいた一方、日々繰り返される残虐な戦争のニュース・情報に触れること自体に耐えられなくなって「ニュースを見ない」という人も多かったです。
そもそも残虐でない戦争はありえないわけで、中東やアフリカで繰り返されてきた戦争でも同じような残虐行為があったはずです。「ウクライナ侵攻」が特別なのは、情報的質量、経済的影響が圧倒的だということでしょう。世界中のあらゆる地域の生活が巻き込まれました。これまでなんとなく共有されてきた”世界の常識”が覆ったという感覚です。こういう事態が繰り込まれて”世界の常識”は再編されていくことになるでしょう。
今夏は記録的猛暑でしたが、6月の連日35℃には驚きました。7月1日には40℃以上となった地点が全国で6地点もあり、一日に40℃以上を観測した地点数の過去最多記録を更新。東京都心でも6月25日から7月3日まで9日連続で35℃以上の猛暑日を観測しました。これは、2015年に記録した8日連続を上回り、観測史上最長。熱中症の救急搬送も最高記録だったそうです。
今年の夏の特徴は猛暑というだけでなく、気温が35度前後になっても湿度が高いままだったことです。9月になっても湿度が高い傾向が続き、胸に熱がこもりっぱなしになりました。なかなか胸をゆるめ切って放熱するのが難しかったということですね。
胸をゆるめて放熱しやすくするために、体幹のボトムの仙骨が呼吸のたびに前後に傾いて、背骨を下から上へ波打つように”扇ぐ”のが真夏本来の身動きなのですが、高い湿度を受けて腰椎3番(へその真裏)を中心に腰が硬くなって、“胸をゆるめる波”が届きにくいという状況でした。
そこで身体は春の時季のごとく骨盤をゆるめ、全身のネジをゆるめるというカードを切ってきました。8月~9月は(ふだん女性ほど広がらない男性も)骨盤が大きく広がって、足腰が不安定になりやすかったです。実際、熱がこもって硬くなっている胸をゆるめると、それを受けて骨盤のほうは逆に自動的に縮むというのが基本的反応でした。
今年は夏〜秋の間、頭から足へ下りる気の流れがとくに激しく、手足がジーンと振動するのがハッキリ感じる人が多かったです。11月の暖かさが観測史上最高という報道もありました。例年10月が春以外で最も頭が熱くなりやすい時期ですが、今年はこの頭から足への流れは11月にさらに強くなって、異様な暖かさも関連してか11月のほうが、むしろ10月より頭が熱く(12月上旬まで)なりやすかったです。
胸や頭に熱がこもり「熱っぽい」感じがして、体温を測ってみると平熱という人が多く、中には本当に体温も上がって「コロナか?」と思ったが違っていたという人も何人かいました。
今期も、めまいを起こすパターン(=コロナ環境下で特徴的につづいてきた平衡感覚の不安定)が最も目立ちました。くらくらしたり足元がふわふわしたり、乗り物酔いのようにムカムカしたり、実際に吐いたり下したりという人も数人、脳の病気かと思って病院に行ってMRIを撮ってもらったという人も数人いました。「人生初めまい」で、パニックになった人も多かったのです。
環境変動の波にもまれて”身体という方舟”は、乗り物酔いを起こしやすくなっているともいえそうです。
一方で、コロナ禍も3年近く経って、身体はこの環境に”馴染んで”きたのか?コロナ環境下で多くの人たちに共通だった足の趾の特異な応答(左3-4趾の4趾側に触れると飛び上がるほど痛かった)も、かなり穏やかになってきました。
変動の時代
11月10日、田畑浩良・藤本靖さんと2019年末以来3年ぶりのコラボワークショップとなりました。3年ぶりということで密度の濃いワークショップになりましたが、とても静かに澄み渡った空気感になって終了しました。その”静けさの中の集中“がこれからの基準になりそうです。静まること、落ち着いて集中すること。
2019年末のワークショップでは、終わりの挨拶中、私の意識の中に”The Water is Wide”という曲が流れてきて、それをそのままお話しすると、会場の担当の方がさっと曲を流してくれました。その瞬間は歌詞の意味など意識していませんでしたが、しばらくして大きな流れを渡ろうとしているんだな~という感慨が湧いてきました。
それから3年、どうやら大きな流れを“渡る”のではなく、“大洪水”の流れに“乗っていく”ことになりそうな勢いです。
今年はコロナ禍に加えて、世界の政治情勢、経済情勢も一気に不安定になりました。地殻変動、気象変動、大規模森林火災、新型コロナ、鳥インフルなどなどキリがありませんが、地球全体として生態系から人間社会まで「変動の時代」に入っていることが実感されます。
身心の”気合い”を昂める血海穴(膝上内側)の活動は、すでに5年以上前からずっと活発です。12月中旬に一時的に穏やかになりましたが、一息ついてまた盛り上がってきました。
たとえば日本列島では、縄文時代は1万年ほど続き、その前の石器時代はその倍以上続いたと言われています。つまり、いつ何が起きるか分からない環境を生きてきたのが人類の歴史の大部分です。先史スピリット、先住民スピリットがその子孫たる私たちの身心の奥に息づいているはずです。
“野生軸”の再起動
人類は直立二足歩行を獲得したことによって“知”を発達させてきたと言われています。今では、とくに近代以降に作り上げてきた安全で高度な人工環境に大きく依存して生活するようになりました。昔と比べればずっと安全で快適な生活環境にいるのに、私たちは“知”の枠組みにとって「想定外」の事態に弱くなり、不安を常に抱えているように見えます。例えば凶悪犯罪はこの数十年一貫して減ってきていますが、犯罪に対する不安は逆に高まっています。防犯カメラも、監視されているようで嫌だと思う人よりも、歓迎する人のほうがずっと多くなっているのです。
「巨大地震」や、「コロナ禍」、「100に1度の大水害」、「ウクライナ侵攻」など「想定外」が実際に立続けに起きる「変動の時代」に必要なのは、先史時代の環境を生き抜いてきたどんな変動にも即応する「津波てんでんこ」的な、“野性の勘“で行動する”身構え“です。
四足歩行動物の場合、尻尾から頭へ向かう体軸と、前方を向く意識の軸は一致しています。一方直立二足歩行のヒトの場合は、体軸と前方意識は基本的に直交しています。この体軸と直行する視界が“知”を生むともいえます。問題はこの視界に依存しすぎると、足元を見失うということです。
「想定外」の事態に直面して、知的マニュアルが機能しないとき、過剰な知的視界が直感的行動の邪魔をすることが大いにあるわけです。
そこで意識軸と体軸を重ね合わせて、野生の意識=”野生軸”をときどき呼び起こしておくことを提案したいのです。
① "知的視界"が硬直すると頭と首の間が固まります。
まずはここをほぐしておきましょう。
・首をぐっと反らして体軸方向(頭の上・天空方向)に視線を向け、体軸に重ねる
・腕を上に伸ばすと首を反らせやすくなる
(両手、または片方が上げにくければ上げやすいほうの手だけを上げる)
・腕をグーっと伸ばしていって伸び切ったところで、ふっとゆるめてするっと落とす
(このとき頭から急に気の流れが下りて、くらーっとする、場合によっては脳貧血
を起こすこともあるので、そういう場合はすぐにしゃがめば大丈夫)
・しばらくそのまま姿勢がゆらゆらするのに任せる
② 首を思い切り反らせて視界・意識軸を体軸に合わせる=”野生軸”の再起動
・手を腿と骨盤のあいだ(鼠径部)に置いてグーッと前屈する
・手が腿と骨盤のあいだにピッタリ挟まれるのを確認する
・しばらく待つと自然に下腹で大きく呼吸し始める
・その呼吸を3~5呼吸ほど数える(腿の付け根―下腹が温かくなる)
・反らしていた首を戻しながら、逆に顎をグッと引くようにすると自然に姿勢が起き
上がる
・骨盤がスッと自然に立っている感じがする
このメソッドは平衡感覚の安定(めまい対応)、足元の安定、気分の落ち着き、足腰の軽さ(脊柱管狭窄対応)、環境の変動への柔らかな身構え、自在な応答へつながります。
追悼 中山法さん
昨年9月、身がまま整体のTwitter、Facebookを、ボランティアで10年以上管理、お世話して下さっていた中山法さんが急逝されました。
コロナ禍のおかげでこの3年間、Twitterに関するメールのやり取りばかりで、お会いできていななかったことが今になって悔やまれます。
亡くなられてしばらくは、何も考えられなくなってしまいました。あらためてすごく頼りにしていたことに気づかされました。
私の「リポート」(tweet)に、いつもいい感じの“合いの手”を入れてくださったことにも、感謝を伝える機会もなくなってしまいました。
あらためてここで感謝を捧げたいと思います。
ほんとうに長い間お世話になりました。
片山洋次郎
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