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第一回じゃがいも単独 (わっしょい中村)

一度そこで見つけた事があるのであろう

自動販売機の前

ボロボロのスウェットで地べたに這いつくばって

前よりいくらか細くなった手を伸ばしている

わっしょい中村、昔、人力舎に所属していた男である

手応えが無いらしく埃が舞う程に手を右往左往させている

私はそれを無言で眺める

声をかける勇気が出ないでいると

「見せもんじゃねーーぞ」

振り向き様に牙を剥く

私はそれを無言で眺める

「・・・・あ、三福さんお久しぶりです、へへへへ」

こっちに気付いた男は、あの時と変わらぬ嘘の笑顔で取り繕う

「今、何やってるんだ」

あーだこーだ、問い正すまでもない嘘を織り混ぜながら
あーだこーだ、長尺の言い訳の時間を経て
何とかやれていると嘘を付かれた

「そうか・・じゃあな」

踵を返す私

「あの!!・・俺、まだ、お笑いやりたいです!!」

彼の嘘の無い言葉に再び踵を返す

「そうか、じゃあやれば良いさ」

彼は、もう一度舞台に手を伸ばす

そこに手応えを感じたくて

令和3年 5月7日 じゃがいも単独


三福作
ほくほく中村農園

畑仕事をするわっしょい鍬を振ってる

わ「・・・」

み「すいませーん すいませーーん」

三福イン

わ「はい」

み「いやぁ、広い畑ですね・・」

わ「はい<嬉しい>」

み「ここ重機入ります?」

わ「いや入んないすね」

み「ですよね、え?この広さ全部手でやってるんですか」

わ「はい、手で、まぁクワは使いましたけど」

み「・・・一人で?」

わ「うぃ」

み「大変だったでしょ」

わ「はい」

み「ジャガイモですよね」

わ「はい!」

み「・・・・<不穏な雰囲気>」

わ「・・・あの?何か?」

み「いやぁ、相談を受けましてね、貴方、プロダクション人力舎の仲本さんという方に、毎年ジャガイモ送りつけてますよね」

わ「・・・」

み「やめて欲しいそうです」

わ「えぇ?!」

み「意外ですか?」

わ「はい」

み「本当に?」

わ「はい」

み「毎年、着払いだそうですね」

わ「うぃ」

み「段ボール一箱パンパン20キロを北海道から着払い・・それでも意外ですか?」

わ「・・はい」

み「・・・はい?・・・まぁ、もう送らないで下さい。直接本人に言うのは気が引ける、ということで巡り巡って役場の人間である私が来させて頂きました・・」

わ「・・・<険しい顔>」

み「役場の人間では何か不都合な点でもありましたか?」

わ「いえ」

み「・・それでは本題にはいらせて頂き」

わ「<台詞をくって>僕は!昔芸人をやってたんです!!でも自分の勝手で人力舎を辞めてしまって、もしかしたら戻れるかもしれないと思って、ジャガイモを送ってるんです」

み「まぁそれはいいんですけど、あなたね」

わ「嫁も子供もいて!くわせていかないといけないんで、辞めるしか無かった!!」

み「そういうの、無理ですよ、情に訴えても、無駄です」

わ「・・・<苦い顔>」

み「私が来た理由分かってますよね」

わ「いや」

み「人力舎さんからどうしても貴方に連絡がつかないんで、手がかりの送り先の村の役場に連絡が来ましてね、ほくほく中村農園さんに連絡してくれないかっていうんですよ」

わ「・・・」

み「ビックりしましたよ。うちの村、ほくほく中村農園なんて登録されてないんですよ」

わ「くぅ・・・」

み「貴方、人の土地勝手に耕しましたね」

わ「わーーーーうるせーうるせーーうるせーーーーー」

み「ばれないと思ったんですか」

わ「あっちいけーーわーーーーやってやんぞおらーーがおーー」

三福 殴るマイム

中村 殴られるマイム

み「・・人間ねガオーって言ったらおしまいですよ」

わ「うぅーー・・嫁と子供を食わせる為にはこれしかなかった」

み「ありますよ。食わせる手はいくらでもある。あのですね、開墾されている事、土地の所有者に報告させてもらいました」

わ「えぇ!!」

み「意外ですか・・報告したら、畑やってることもう知ってました」

わ「へぇ」

み「これ意外じゃないんすね。・・貴方のジャガイモ食べた事があるそうです、絶品だそうですね、私も食べてみましたが、正直これは町お越しになると思いました。
男が一人で勝手に重機も使わず山の斜面を耕して育てたジャガイモ、これは引きがありますよ、良いんじゃ無いですか。どうです、難しい計算は私達の方でやりますので、うちの村に協力してくれませんか?」

わ「・・・<考えてる>・・・・」

み「・・思考停止しました?・・何か?」

わ「いや・・着払いじゃ無かったら、人力舎戻れましたかね?」

み「・・知らない」



end


ヒロ・オクムラ作

じゃがいモンスターペアレント
 
奥:いやー、小学校の教師になって転勤は覚悟してたけど、まさか北海道に来るとはな。まあでもやる仕事は一緒やし頑張ろう。ほんで新しく赴任してきた教員向けにこんな講習会なんて開いてくれるんや。ありがたいな。
 
げん:それでは、札幌第二小学校、新赴任教員向け講習会を始めたいと思います。
 
奥:お、始まった。
 
げん:それでは本日はこちらモンスターペアレント実例集を紹介いたします。
 
奥:ああ、モンスターペアレントね。大変やけど避けては通られへんのよね。
 
げん:まずは、クレーム系です。
 
【げんちゃん読み上げ、オクムラつっこむの繰り返し】
 
げん:続きまして、要望系です。
 
【げんちゃん読み上げ、オクムラつっこむの繰り返し】
 
げん:ここまでのモンスターペアレント実例集についてなにか疑問などございますでしょうか。
 
奥:疑問だらけじゃ!なんでこんなじゃがいもの話ばっかりしてんの?・・・ん?あ!じゃがいモンスターペアレントって書いてる!!なに!?じゃがいモンスターペアレントって!
 
げん:続きまして。
 
奥:まだあんの!?
 
げん:じゃがいも系です。
 
奥:ずっとじゃがいも系やないか!


【げんちゃん読み上げ、オクムラつっこむ】
 
げん:続きまして。
 
奥:まだある!?
 
げん:北海道の特産。
 
奥:はあ?
 
げん:ししゃモンスターペアレントについて。
 
奥:もうええわ。

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