見出し画像

音大入学で手に入れたもの

娘は現在音大の一年生。音大に入った当初は幸せを感じていなかったが、今では入ってよかったと心から思っている。

娘が音楽の道を選んだのは保育園時代。既にルートを決めていたので平坦な道ではなかった。遊びを我慢し、来る日も来る日もピアノの練習。幼い頃の娘はピアノが好きではなかったよう。あんなに練習ばかりやっていたら、それは当然だ。私でも嫌になるだろう。

念願叶って音楽専門の中学に合格。楽しい学校生活が待っているのかと思っていたが、現実は違っていた。中学・高校で一緒になった子たちは自信に満ちた東京のお嬢様ばかり。内向的な娘はすっかり自信を無くしてしまった。

中学・高校時代の娘は、いつもおどおどしていた。周りがかわいい子が多いからと、口から出るのはネガティブな言葉ばかり。
「私なんてかわいくないもん」
「私はどうせ陰キャだもん」
「私なんて不細工だから一生彼氏ができない」

でも、心の中ではスポットライトを浴びる自分を想像していたのかもしれない。韓流ドラマを見ては、キャーキャーと興奮し、「自分もこんな風になりたい!」と憧れを持っていた。

音高で自信を無くしていた娘は、進路を決めなければならない時、「音大ではなくデザインの専門学校に行きたい」と言い出した。それが本心ではないことを私は見抜いていたが、「お好きなように」と反対しなかった。

結局元夫が専門学校への進学を反対し、娘はすんなりと音大のピアノ科に行くことになった。入学当初は、音大生であることに自信が持てないようだった。ネットで見かける音大・美大を貶めるような書き込みを見るたび、娘は傷ついた。
「普通の大学に行けばよかった……」
音大に入ったことを後悔するような言葉も漏れた。

そんな娘が変わったのがここ最近である。中高の同級生はどちらかというとオラオラ系のお嬢様が多かったが、大学で知り合った子たちは、素朴な地方のお嬢様ばかり。すっかり馴染んで仲良くなった。娘が特に自信を持てたのは同級生のこの言葉。
「かわいいね!」
どれほど心の中で娘がガッツポーズをしたのかわからない。

じゃあ、これで結果オーライか?いや、それが実はそんなに簡単ではない。大学時代に彼氏が欲しいと思っていたようだが、音大の男の子たちはほとんどが草食系。内向的な娘にとってはハードルが高い。
「彼氏ができない!」と毎日嘆いている。
こうして音大に入ってからも娘の受難は続くのであった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?