三分間でさようならはじめまして
私が初めて自分のお金で買ったCDは、東京事変の「能動的三分間」だ。中学生の頃、地元のTSUTAYAで購入したシングルCD。どきどきしながら、邦楽売り場でCDを手に取っては棚に戻し、を繰り返したのを覚えている。
初めて出会ったのは、テレビCMか、ラジオ番組。どちらが先だったかは覚えていない。たぶん、ほぼ同時。
日曜日の昼下がり、雑誌を読みながら、JWAVEで音楽ランキングの番組を流し続ける。幼い頃から、家族そろって車ででかけるときには、常に流れているラジオ。いつしか自ら聴く存在にもなっていた。
そこで出会ったのが、能動的三分間。初めて耳にしたとき、イントロの近代的な雰囲気から、すぐにとりこになった。三分間ぽっきりというのも、なんだかかっこいい。どこかけだるい雰囲気のメロディーも、反抗期に突入しかけていた中学生の私に、何か刺さるものがあったのだろう。
ここで、これまでの私ならCDを買おうという発想には至らないのだが、だんだん毎年のお年玉が貯まってきたのと、仲良しの友達がCDをたくさん持っていたことから、自分でCDを買うことに憧れを抱くようになっていた。三分間を示しているストップウォッチがジャケット写真である点も、陸上部だったからかとても気に入った。シングルCDというのも、値段だけではなく「この曲が入っています!」というような潔さを感じた。何度もTSUTAYAを訪れ、よし!と決心して購入したのだった。
その後、この曲をきっかけに、東京事変のアルバムも聴くようになった。こちらはレンタルだけど。
今もこの曲を聴いているかというと、実はそうではない。やがて私の音楽の好みが幅広くなっていったのも理由の一つだが、母親があまり椎名林檎を好まないと知ってから、なぜだか彼女や東京事変の音楽を聴くたびに、少し罪悪感のようなものを抱くようになったのもある。
それでも、当時ほかにも気になる曲はあった中で、あえて選んだ曲。買った本人ですら、そのときにしかわからない、言葉にするのが難しい衝動があったのだけはたしか。
私の記念すべき、はじめて買ったCD。
【寝言】
今や、音楽再生アプリでさまざまな曲をダウンロードしてすぐに聴くことができる。洋楽だって、レンタル開始になるのをまだかまだかと待たずに済むのだ。歌詞カードを見ることも減った。
それもとても便利だし、出会いの幅は広がっているけれど。
聴く側として、1曲1曲に対する想いは、今よりもっと厚みや深み、色があったような気がする。
今度の連休に実家に戻ったら、CD、漁ってみよう。