見出し画像

わたしは生きているか――自由と死。人生は二択。人間「ハリエット」

◆「ハリエット」とは

映画「ハリエット」を渋谷シネクイントで観る。

19世紀末、南北戦争以前のアメリカ。
奴隷解放や、黒人の生活向上のために
尽くした実在の女性、ハリエット・タブマンの物語である。

劇場で購入したパンフレットによれば
2008年の全国アンケートで「アメリカ史で最も有名な人物10人」
にランクインしている。
オバマ大統領の時代に、
次の20ドル札の紙幣に採用されることが決まったほどだが、
トランプの代になり、頓挫した状態だ。

彼女は
家畜同然に扱われる農園から、たった一人で逃亡し、
北部で自由の身になったものの
何度も“南部”へ舞い戻り、
家族や仲間たちを救い出す。

◆アンダーグラウンド・レイルロード

ソウルフラワー・ユニオンに
『アンダーグラウンド・レイルロード』というアルバムがある。
この“Underground Railroad”=「地下鉄道」こそ
一人の女性の自由への道をヘルプした「組織」。
そして彼女自身も“車掌”となり
何人もの仲間たちを救い出した道だった。

奴隷の置かれた状況はもちろん壮絶だ。
自由黒人という身分のこと。
ブルースで語られるようなミシシッピではない“南部”のこと。
黒人といっても考えが一つではないこと。
フィールドハラーの力。
Wade In The Waterにも歌われる水の意味するところ。
等々、いくつも改めて気づかされたことがあった。

◆自由がなければ、それは死

映画がエンディング・ロールに代わり
ハリエットを演じたシンシア・エリヴォ自身が歌う
いきいきとした「スタンド・アップ」の歌声を耳にしながら
エンディング・ロールで
私は呆然としていた。

黒人の悲惨さにではない。
「私は、この人と同じ人間なのか」
ということにだった。

人は、ここまで生きることに切に向かい合うことができるのか。

そして他人の居場所を作るために、尽くすことができるのか。

死を選ぶのか、自由をつかむのか。
彼女には二つの選択肢しかない。
死と自由は同等である。
死ぬか生きるかではない。
自由の中にしか生はない。

◆映画としては単調かもしれないが


救出の繰り返しで、
映画としてはやや単調かもしれない。
彼女が神がかりすぎて(実際神がかっていたようだが)
映像になるとリアリティに乏しい印象もある。
主役が強烈すぎて周囲の人たちの描き方が
物足りないなと思う場面も。

でも、予想以上に最近気になっていたシンガー、
ジャネール・モネイはやはり魅力的だった!

可能であればパンフレットを買うことをおすすめします。
いったいどのくらいの距離を逃亡したのか
位置のわかるマップも掲載されている。

たまたまアメリカの抗議デモが広がった時期の公開となったが
わたしは生きているのか。
人間にとって、テーマは永遠だ。

https://harriet-movie.jp/


いいなと思ったら応援しよう!