北海道の旭川で開催されたカンファレンス「TechRAMEN 2024」のスポンサーになり、参加・登壇して、合宿もしてきました!
こんにちは!MIERUNEのソフトウェア・エンジニア、久本(@sorami)です。好きなラーメンは旭川の蜂屋です。
今回は、北海道の中央「上川地方」にある、北海道第2の都市「旭川」で2024年7月に開催された「TechRAMEN(テックラーメン)」という新たなカンファレンスに参加した様子を紹介します!
TechRAMENとは
TechRAMEN(Technology Roundtable on the future of Asahikawa for Makers and ENgineers)は、旭川で開催されたIT技術カンファレンスです。
「上川地方に技術の知見を惜しみなく注ぐ,技術好きのための円卓会議」というキャッチフレーズのもと、旭川の「ゆるい勉強会」や、富良野の「FuraIT(ふらいと)」といったコミュニティの方々の企画運営により実現した、100名規模のカンファレンスです。
東京や札幌といった大都市でしか開催されない技術イベントを、なかなかその地に行けない人たちのためにも、この上川地方でやろうという気持ちで企画されたそうです。
当日の会場でも「上川地区でやるから意味がある」「北海道は札幌だけじゃないぞ」といった意気込みが語られました。
「応援団」というスポンサーのかたち
このカンファレンスは、近年の一般的なイベントで見られるような、企業スポンサーを募りブース出展の機会などを提供するといったことをせず、「応援団」というかたちで、個人と企業から資金を集めて運営されました。
企業スポンサーにとっては、参加者へのリーチや情報の提供、ブース展示、スポンサーセッションなど、いわゆるスポンサーメリットのほぼ全てがありません。
実行委員長の西原(@tomio2480)さんは、企業スポンサーによる支援の素晴らしさを認識しつつ、他方で良き空気感を維持するための労力の必要性も挙げ、以下のように述べています:
この、わかりやすいメリットのないスポンサープランとしての「ラーメン応援法人団」ですが、われわれMIERUNEも同じ北海道の技術集団、コミュニティの一員として、参加しています!加えて、MIERUNEメンバーの何人もが個人的に応援団としてスポンサードしました。微力ながらもさまざまな形で、コミュニティの応援・サポートができればと思っています。
会場の様子
会場は、旭川駅から歩いて10分程度のところにある複合施設「大雪クリスタルホール」。国立公園にもなっている山脈エリア大雪山(たいせつざん、だいせつざん)から名付けられたようです。
カンファレンスは「前夜祭(7/26金)」と「本祭(7/27土)」の二日間開催され、その翌日にも後日祭(OSS Gate, 後述)がありました。トークセッション・ハンズオン・ワークショップ・もくもく会、合計最大4トラックです。
季節にあわせて、受付前には七夕の短冊が用意されており、参加者が思い思いの願いを書いていました。
メイン会場は「醤油」と名付けられていました。
直前に設備トラブルがあり、スクリーンが小さくなってしまう予定だったのですが、なんとスタッフの方々がホームセンターで材料を調達し、自作でスクリーンを作り上げたそうで、これで無事に大画面での発表が可能となりました。
合宿
また、カンファレンスとは別に合宿企画「炒飯セット」もありました。
「学生や若手のエンジニアにとってカンファレンス参加のハードルを下げること」、そして「カンファレンスで得た学びを最大化すること」を目的として企画されたものです。
北海道各地にいる若手たちの参加ハードルを下げるための企画に、私も個人スポンサーとして参加しました。
計16名が参加した合宿でした。多くの若手たちと交流することができ、また朝から晩まで、もくもく会をやったりLT大会をやったり、差し入れにいただいたメロン🍈やスイカ🍉を大量に食べたり、非常に濃い時間でした。
また、今回のこのレポート記事も、アウトプットを奨励する合宿「もくもく会」でドラフトを書きました!
企画運営の皆様、ありがとうございました。
発表
二日間で沢山の多様な発表がありました。全てを紹介はできないですが、ここでは簡単に、いくつか興味深かった発表を紹介します。
前夜祭
自治体職員がパブリッククラウド使わなければならないことになったからとりあえず AWS の無料枠使い倒して勉強したけどやっぱり難しいという話 by Hiroki Takeda
けっこう大変そうな話が飄々と語られていて面白かったです。
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なぜテキストエディタを極めるのか by うさみけんた
強要されたものでなく、自分で選んだもの、愛着が持てるものを、というお話で、「エディタ選びは車選びと似ている」などと語られていて良いトークでした。
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Podcasting Guide 2024 by mktakuya
ポッドキャストを長年やられている方が、実際に編集作業している動画など交えながら解説されていて、興味深く、そして参考になりました。(ちなみにこの方の番組ではTechRAMEN回もありました: EP255 とみおさんに「TechRAMEN 2024 Conference」の話を聞いてみた #techramen24conf - ゆるふわPodcast)
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【大募集】自宅リモートワークで集中して進捗を出す技術【教えて】 by かげろん
発表というか、その場で、Google Formによって参加者からアイデアを募るスタイルで、そして皆からドドドと投稿が寄せられていて面白かったです。
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何かの技術の"専門家"になりたかったから技術調査チームを立ち上げてプロダクトに貢献した話 by 内田 裕貴
ご自身のキャリアパスの物語をもとに「自分で自分の幅を狭めない」「組織と自分のやりたいことをすりあわせる」というお話で、一例として参考になりました。
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one obvious wayを志向するPythonに依存ライブラリ管理ツールがたっくさんある話 〜Rust製ツールが高速を謳う〜 by nikkie
「管理=俺」なPython依存管理の世界で、台頭するPoetryやRyeのほかに、Hatchやpipxという私の知らなかったものも紹介されていて勉強になりました。ちなみに発表者の方は諸事情で飛行機に乗り遅れてしまったそうで、急遽トーク枠を入れ替えて後日祭最後の枠となり、それでギリギリ無事に間に合っていました!
本祭 - トーク
ひとりのプログラマ、問題解決者としての原理原則とワークフロー
テスト駆動開発の啓蒙者としても知られる和田卓人(@t_wada)さんによる基調講演から本祭は始まりました。「目の前の問題を倒してもしょうがない、”問題の原因”を解決する必要がある」という話から、ZFR(Zero Feture Release)の例、Two-way doorや式年遷宮の話題、実際に開発を進める様子の紹介など、これが課題解決だ、これがソフトウェア開発だ!という風に感じられ、学びと励みになりました。
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小麦圃場向けIoT気象センサデバイスを開発した話 by 湯村 翼
SORACOM通信モジュールによるデータ送信の様子などが紹介されていて、それがGrafanaベースのダッシュボードで閲覧できるそうで、なるほどいろんな可能性があるなと思いました。
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これまでと違う学び方をしたら挫折せずにRustを学べた話 by 和田卓人
これまでのやり方(帰納)ではなく、演繹で学ぶ、というお話で、『プログラミングRust 第2版』の、特に4章(「所有権と移動」)と5章(「参照」)を読んだら芋蔓式に理解が進み始めたということでした。物理学と数学における学び方の違いについて語られた話(定義の理解にかける時間を飛ばしても意味がない──エンジニア・光成 滋生(3) | サイボウズ式)も思い出しました。
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コロナ禍とその後:地方エンジニアが学んだキャリア戦略の変遷 by 渡部龍一
JJUG CCC 2018 Fallに参加してカンファレンスの楽しさを体験したことから、地元でsendai.pmを立ち上げ、コロナ禍になり、各種リモートイベントに参加したりして、SRE NEXTというイベントのコアスタッフになり… というお話が語られました。興味があるなら飛び込んでみるといいよなと思いました。
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デカいラーメンを旭川に出現させる by Atria
デカいラーメンが旭川に出現していました。そしてたしかに、VRやってる様子は不審者っぽかったです(笑)
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データ可視化をやりたくて北海道に移住した話 by 久本空海
ちなみに私自身も、本祭のセッションで発表しました。私が北海道に引っ越した経緯や、可視化や言語といった「思考のための道具」の話題や、私がこれまで作ってきた北海道に関するデータ可視化の事例を紹介しました。
本祭 - パネルディスカッション
本祭トークのあとには、TechRAMENのコアスタッフ、みやまえ@みょうさんと、ゲストスピーカーの和田卓人さん、岡野 真也(@tokibito)さんによる鼎談がありました。
技術よりも、組織や事業、コミュニティの話が主でした。転職の要因として「組織と自分の成長スピードが異なるから。変わるのを待っていられない」というのは、あるよなあと思いました。また「生存者バイアス」(昔はこれだけ苦労したから〜というような言説)について、それは単にそういう年代だったという話であって、その上に今があるとは思わない、それを令和に持っていってはいけない、組織が能力・成果を正しく測定できないということを肯定するということになる、という話も、リモートワークの話題と相待って、納得感がありました。
コミュニティについても、それぞれの場で合う合わないがあるし、参加しなくてもすごい人がいる、という話がありました。そうだと思います。そういう人を無理強いしてもいいことはないが、他方で食わず嫌いのケースは、仕事の上では業務として一度行ってもらう(そして行ってみたら意外と「楽しかったです!」「思ったよりハードル高くなかったです!」となる)というのも、実体験として頷けました。また「懇親会は誘わなくていい、あくまでオプショナル」というのも、確かにメインセッションが本番であるべきで、そうだなぁと改めて思いました。
懇親会
本祭の夜に、同じ会場で行われた懇親会は「北海道産」よりもご当地「道北の食材」にこだわって提供されていました。他のカンファレンスで見ないような充実した内容!イベント名にもちなんで「旭川ラーメン」も提供されました 🍜 また会場外には書籍コーナーが用意されて、各人によるオススメ本が並べられていました。
後日祭 - OSS Gate
前夜祭、本祭が終わった翌日には、同じ会場で「後日祭」として、OSS Gateというイベントが開催されました。
「OSS Gate」は、オープンソースソフトウェア(OSS)にまだコントリビュートしたことがない、まだ自信がない人向けの企画で、これまで長年、各地で開催されてきています。
20名程度のゆったりとした雰囲気で、メンターなどのアドバイスももらいながら思い思いのOSSを調査して、不具合を見つけたらイシューを立てる、といったことに取り組みました。
未経験者は「そもそも作ってる人とコミュニケーション取れるという発想がなかった」という意見、他方で開発者は「バグがあるなら、Twitterでつぶやくより直接教えてほしい」という気持ち。その間をつなぐゲートとして、背中を押す良い企画だと思いました。
おわりに
100名を超える規模のカンファレンスが、東京でも札幌でもない旭川という地で、ブース出展スポンサーなどもないなかで、盛況に開催されました。クロージングに何度も述べられていたように、やりたいからやる、自分たちでやる、というスピリットから生まれた、この場ならではの雰囲気があったと感じています。
北海道は日本国土の2割を占める広大なエリアです。そして今回はこの旭川に、道外の人も、そして札幌や函館、釧路や網走、富良野などなど道内各地からも人々が集って、こんなに色々な場所にいるのだと驚きました。TechRAMENは来年(2025)も開催する機運が高まっているようです。その時にはどのような人々が集うでしょうか。
2024年運営の皆さん、そして参加された皆さん、お疲れ様でした、ありがとうございました 🍜
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