キッチン🍴三重の恵み🌿『田中佑樹』リレーコラム⑦　伊勢志摩冷凍訪問を終えて

三重県四日市出身、西麻布、割烹「伊勢すえよし」店主の田中と申します。
『美味しい恵みを未来に残す』をコンセプトに、循環型社会を地元三重に生み出す「三重の恵み」の代表も努めております。
現在「三重の恵み」は、三重県多気町にある相可高校と共同で「キッチン三重の恵み」プロジェクトを実施しております。

お題は「水産現場の課題を美味しく解決せよ」。
未利用魚を活用魚に！という事で、プロジェクトがスタートしました！

現在、相可高校の調理部の有志8名そして顧問の西岡先生と商品開発中です。

緊急事態宣言を受けリモートでプログラムを進めています。

生徒たちのコラムで「進行状況と体験を伝える」
田中のコラムで「その裏にある手間の見える化」

を記録していきたいと思います。

■プログラムの進行具合

①「相可高校」と「伊勢すえよし」の授業
②「友栄水産」オンライン訪問
③「相可高校」と「伊勢すえよし」の授業
④「外湾漁協」オンライン訪問
⑤「伊勢志摩冷凍」オンライン訪問　　　←イマココ
⑥「商品開発案発表」　
⑦「ぎゅーとら」オンライン訪問
⑧～⑭商品開発会議
⑮商品販売スタート

⑦「ぎゅーとら」オンライン訪問の後から、7～9回と、結構な回数の開発会議・試食会が続く予定です。現在の進行具合は、おおよそ1/3進んだところです。

④「外湾漁協」オンライン訪問
⑤「伊勢志摩冷凍」オンライン訪問
を経て、「未利用魚を活用魚に！」すべきお魚が二種類見えてきました。

ギマ（銀馬）

ギマという20㎝くらいのカワハギに似たお魚です。夏以外の通年で水揚げされるお魚で、お味は

とっても美味しい！　なのに、活用されてない！

というお魚なのです！

トゲやザラザラの皮やぬめりにより
他の魚を気づ付けるというのと、皮が固く加工が難しいというのが活用されていない原因となっております

■味の特徴

・たんぱくな白身魚の味わい
・刺身で食べてみるとカワハギに似ていて美味しい
・揚げてみると身がプリッとしてとても美味しい
適切な処理をして揚げたギマの味は、まさにフグ！！
こんなに美味しいお魚が利用されにくいというのに驚きました！

■活用されてない理由

①トゲやザラザラの皮やぬめりにより他の魚を傷を付ける
②皮が固く加工が難しい
③認知が無く、購入動機に繋がらない

青魚の小魚

鰯、ひいらぎ、アジ、サバなどの青魚の小魚が、色々と混ざって水揚げされる、季節性の小魚で、こちらのお味も

とっても美味しい！　なのに、活用されてない！

という小魚なのです！

鮮度がすぐに悪くなるお魚で、春先にたくさん上がり過ぎてしまうため活用しきれていません。

■味の特徴

・カタクチイワシや、いかなごのような小さい青魚の味わい
・カリッと揚げてみると、大変美味！！
・骨まで柔らかく炊いてあげると、美味しい！！
頭ごとバリバリと食べられるようにカリッとあげた小魚は食べる手を止められなくなるほど美味しいです。
骨まで柔らかく甘辛く炊いたら、御飯が止まりません！
小骨の課題はありますが、きちんと調理すればご馳走になるお魚です！

頭や骨ごと美味しく食べられる加工をする事ができれば、栄養価満点！！海の恵みを余すことなくいただけます

これら二種類以外の活用されにくいお魚が見つかれば、そちらにも取り組んでいきたいと考えておりますが、まずはこの二つの商品開発を視野に試作を始める予定です。

■前回の伊勢志摩冷凍オンライン訪問の振り返り

先日、伊勢志摩冷凍さんへオンライン訪問をさせていただき
『加工技術』『冷凍技術』『衛生管理』について学ばせて頂きました。
訪問の詳細の記事は、相可高校調理部２年生の宿谷さんがとてもよくまとめてくれた記事がありますので、こちらも是非ご覧ください。

授業を通して見えてきたのは、未利用魚の商品開発の”加工の選択肢”についてです。
いよいよこれから、生徒と共に試作・試食を繰り返していく段階に差し掛かります。
私が、三重の恵みの「伊勢まだいのかぶせ茶漬け」の商品開発をする際にポイントだったのが、この”加工の選択肢”についてきちんと把握しておくことでした。

料理人の考えたレシピをなんでも商品加工できるわけではありません。機材、設備、工程数、等の制限により、どんな商品加工なら実現可能か考え、その制限を踏まえて、商品開発案を出していく必要があります。
生徒と私から様々な商品開発の草案を石川さんに質問して、今回の商品開発の加工の選択肢を理解することができました。

■事前撮影の準備

衛生管理を徹底している伊勢志摩冷凍さんでは、工場内に外気が入らない完全密閉の設計になっております。そのため、電波が届かないため、加工場の風景をリアルタイムで見てもらう事ができません。その点を解決するために、事前撮影をしていただき、いつもの工場の作業風景の撮影と、ギマの試作風景の撮影をしていただき、その動画を授業で見せる事にしました。
石川さんは、不慣れな撮影に対しても快く対応してくださいました。
伊勢志摩冷凍の皆さんも扱ったことのないギマの試作をしていただき、今回の授業の準備をする事ができました。

■裏話！ギマの発見！？

実はギマは誰も知らないお魚でした。

普段から魚を扱う石川さんも、私も、先生も、生徒も初めて知った魚です。この誰も知らなかったギマに、なぜ気づいたのかというと
事前撮影で石川さんが定置網漁の船に乗船した際に、偶然水揚げされて放流されているのを発見したからです。
漁師さんは、他の魚を傷つける扱いづらい”ギマ”を漁獲してもすぐに放流していました。そのため今まで石川さん始め、私たちの目に触れるところまで運ばれていませんでした。
漁師さんは知っていたけど、我々は知らなかったのです。

話の後に調べた中京テレビの記者の方から、こちらの動画を教えていただきました。　国会に参考人として呼ばれた”さかなクン”が、まさに未利用魚の例としてギマを紹介し美味しい魚と発言（＊動画6分25秒～9分7秒）していたのです！

情報の源は「現場」にある。

三重と向き合っていても知らないことはある。

今回のプロジェクトを通じて、我々も新たな情報を知れて嬉しいです！！

中京テレビさんも国会のさかなくんを調べてくださって”ギマ”について放送してくれました。今後”さかなクン”から”ギマ”について生徒に教えてもらいたい、、、リモート授業でお願いできないか、、、と思いを巡らせています。。

もしかしたら、まだ他にも知られていない未利用魚が眠っているのかもしれません。今回のプロジェクトは「全ての魚を活用魚にしよう！！」という取り組みを地域全体で続けていく”きっかけ”を作ることが目的で、継続させる必要性があります。
地域全体で今後も続けていく機運が、今後の水産資源を持続可能にしていくためにとても大切だと考えています！！そのために、今回のギマと小魚の商品開発を
「絶対的に美味しい料理」に仕上げ、沢山の人にこの活動を知ってもらう！
地域の人に愛され地元名産品となり、さらに全国の人にも食べていただける！そういった商品開発を実践していきます！！

そして、この商品を食べてもらうだけではなく、キッチン三重の恵み＝全国の活用魚モデルに！！世界全体に循環を巻き起こす！これが私たちの目標です！！

同じように、未利用魚の課題や、食に関する地域の課題を抱えている方に、この”カタチ”が参考になれば。今後も私たちの試行錯誤をnoteに綴っていきたいと思います。

■未利用魚の課題を紐解いていく

改めて私が思ったのは、伊勢志摩冷凍さんは特別な加工場だという事です。伊勢志摩冷凍さんは「心・技・体」が揃っています。

『心』

石川さんのこれからの水産資源に対する想い、地元の水産物に関わる人との繋がり

『技』

志摩で唯一の全ての魚を手さばきする加工技術、特殊な装置による鮮度を維持する冷凍技術

『体』

徹底された衛生管理、効率化と職人技による量産できる体制、魚の鮮度を維持できる立地

未利用魚には利用されづらい理由があり、その課題を一つずつ紐解いていく事が今回の肝です。

伊勢志摩冷凍さんの「心・技・体」を活用させていただく事で、その課題を紐解くことができます！！

ギマ課題：①トゲやザラザラの皮やぬめりにより他の魚を傷を付ける
→「心」により解決可能！
漁師さんがきちんと価値が付くことが分かれば、別の籠を用意して他の魚に傷を付けない方法を取り入れることができます。
ただ、その際には今までにはない新しい作業を新たに漁師さんにお願いする必要があります。漁師さんとの繋がりがとても強い石川さんにはそれを実現する事が可能です

ギマ課題：②皮が固く加工が難しい点
→「技」により解決可能！
手さばきで全ての魚を処理をする技術を持ち合わせている伊勢志摩冷凍さんには解決可能です

小魚課題：④水揚げの量が多過ぎる（季節性）
→「技」により解決可能！
伊勢志摩冷凍の冷凍技術により鮮度を維持したまま保存できるため解決可能です

小魚課題：⑤劣化のスピードが速い
→「体」により解決可能！
伊勢志摩冷凍の立地が複数の港から30分という立地により解決です

ギマ課題：③認知が無く、購入動機に繋がらない
小魚課題：⑥小骨が多い
についてが今回の生徒たちと私と先生で商品開発を進める最大のポイントで、この課題を美味しく紐解くことがミッションなのです。

■次回予告

次回は、ついに商品開発スタート！！
生徒たちから、どんな商品案が出てくるのでしょう！？

2021.2.21
田中佑樹