【2021衆院選】過去10年の予算からみる政府の方針(後編)
この記事は前編と後編に分かれています。
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c.地方交付税
次に、地方交付税交付金について説明します。
地域の経済状況などによって、それぞれの地方公共団体の財政力には違いがあります。それでも、地域ごとに提供する公的サービスに格差が生じないようにしなくてはなりません。そこで、国が地方公共団体の財政力を調整するために支出するのが「地方交付税交付金等」です(2)。
総額は予算編成時に、地方財政計画によって決定されます。その後、94%は普通交付税、6%は特別交付税として各地方自治体に配分されます。普通交付税額は、基準財政需要額から基準財政収入額を引いた、財源不足額を基本として交付されます。特別交付税とは、普通交付税の算定に反映することのできなかった具体的な事情を考慮して交付されます。例えば災害などの緊急時に交付されることになります(xii)。
地方交付税交付金の10年間の変化は以上の通りです。この増減には各地方公共団体の財政状況が関係しています。年度の都道府県/市町村ごとの算定結果は7月に決定します。あなたの住む地域はどうでしょうか?
歳出予算全体から1.国債費に加え、地方交付税交付金等を除いた経費を「一般歳出」と呼びます。地方交付税交付金「等」とは、地方交付税交付金と、地方譲与税剰余金、地方特例交付金のことです(vi)。
地方特例交付金と、地方譲与税剰余金の説明は以下の通りです。
・地方特例交付金:個人住民税における住宅借入金等特別税額控除の実施に伴う地方公共団体の減収を補塡するための費用。
・地方譲与税剰余金:国税として徴収し、地方公共団体に譲与する税。地方公共団体の財源とされているが、徴収事務を国が代行している。
d.公共事業関係費
4番目に解説するのは、公共事業関係費です。
これは、”道路や港湾、住宅や下水道、公園、河川の堤防やダムなど、社会経済活動や国民生活、国土保全の基盤となる施設の整備に使われる費用” です(4)。
詳しくは、下記の項目が含まれています。
・治山治水対策事業費:風水害を防ぐ工事をするための費用。
・道路整備事業費:道路の建設・整備をするための費用。
・港湾空港鉄道等整備事業費:港や空港の整備のための費用。
・住宅都市環境整備事業費:住宅建設などのための費用。
・公園水道廃棄物処理等施設整備費:公園・上下水道の整備のための費用。
・農林水産基盤整備事業費:農地や農道の改良のための費用。
・社会資本総合整備事業費:町の整備や住宅支援のための費用。
・推進費等及び公共土木施設等の災害復旧等事業費:当初予算では目的を定めず、必要に応じて使われる費用(xiii)。
2019・2020年は特別措置の影響で増加が見られます。「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」:重要インフラの機能維持のため、緊急対策を2018-2020年度の3年間集中的に実施する。
等が計画されています
また、2021年~2025年には「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」(xiv)(xv)が行われており、災害対策などのために今後も継続的な支出が見込まれる分野です。
e.文教および科学振興費
5番目に、文教および科学振興費を見ていきましょう。
これは教育や科学技術の発展のために使われるお金です。内訳は以下の通りです。
・教育振興助成費:国立大学法人の運営、私立大学への補助、教科書の無償配布に使われる費用。
・義務教育国庫負担金:義務教育にかかる費用。教員の給料のうち3分の1もここから支払われている。
・科学技術振興費:基礎研究のほか、宇宙開発、海洋開発、ITの研究開発などの推進に使われる費用。
・育英事業費:日本育英会による奨学金に使われる費用。2017年より給付型奨学金制度を開始。
・文教施設費:公立の小・中・高校の校舎改築などの施設を整えるための費用。
傾向としてはほぼ一定です。
f.防衛関係費
防衛関係費はその名の通り自衛隊など防衛に関する予算のことです。
近年は安全保障上の環境が悪化していることもあり、予算は緩やかな増加傾向にあります。
g.予備費
予備費とは、予見し難い予算の不足に充てるための経費で、予算成立後において歳出に計上された既定経費に不足を生じたり、又は新規に経費が必要となった場合、その不足に充てるため、内閣の責任において支出できるもののことです。(i)
新型コロナウイルス感染症対策予備費には、ワクチンの接種推進や各支援などが行われています。2021年度では5兆円の予算が組まれており、8月時点で半分の額の使用実績があります。(xvi)
h.その他
上記以外の項目について一言ずつまとめます。(xvii)(xviii)
5.歳入
ここでは政府の歳入を見てみましょう。
予算ではなく、年度末に出される決算のデータを使用します。
(今までの項目では一般会計、特別会計の純計のデータを用いましたが、この章では一般会計の歳入のみを分析します。)
こうしてみると2020年度での大幅な国債発行の様子が伺えます。
税収は所得税、消費税、法人税の順に大きいのですが、2020年は消費税増税の影響もあり、消費税が所得税を上回っています。
国債の残高は増加し続けており、2021年3月末時点の残高は1010兆円に達しています。
※建設国債と特例公債
財政法によって、「国の歳出は原則として国債又は借入金以外の歳入をもって賄うこと」と規定していますが、一方で、ただし書きにより公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、例外的に国債発行又は借入金により調達することを認めています。このただし書きに基づいて発行される国債は「建設国債」と呼ばれています。
一方、建設国債を発行しても、なお歳入が不足すると見込まれる場合には、特別の法律によって国債を発行することがあります。通常、これらの国債は「特例国債」と呼ばれますが、「赤字国債」と呼ばれることもあります。(xix)
6.財政の諸問題
財政に関する問題は多数存在するが今回は代表的なものを取り上げます。
・財政健全化
政府が国債を発行することや現状の発行ペースにはさまざまな意見が存在しますが、政府は財政健全化策としてPB(プライマリーバランス、基礎的財政収支)の黒字化を掲げています。
・予算の使用、監視
現在政府の会計の監視機関として会計検査院が存在するが、その役割は決算検査報告など事後的なものになります。そこで「独立財政推計機関」が提案されています。「独立財政推計機関」は国の財政運営や予算の使い方などを分析・評価し、監視や助言を行う独立機関をさし、アメリカやイギリスなど多くの国に導入されています。2021年6月には、国会に「独立財政推計機関」の創設を目指す超党派の議員連盟が発足するなど議論が活発化しています。(xx)
7.おわりに
いかがでしたか。国家予算の増減を見てみると、国がどこに重点を置いているか・政策はどう実行されているのか、その全体像が見えてこないでしょうか?
ぜひ政府の予算や財政に関心をもって調べてみてはいかがでしょうか?
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(xi)厚労省ウェブサイト 社会保障制度改革 何のための負担なの?
(xii)財務省 地方財政について PDF版
(xiii)税庁ウェブサイト 税の学習コーナー 発展編 [国の財政] 歳出~公共事業関係費~
(xiv)「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」(xv)財務省 広報誌「ファイナンス」 平成31年度公共事業関係予算について PDF版
(xvi)令和3年度⼀般会計新型コロナウイルス感染症対策予備費使⽤実績
(xvii)財務省ウェブサイト 平成29年度決算の説明
食料安定供給関係費、エネルギー対策費、経済協力費、中小企業対策費、復興加速化・福島再生予備費
(xviii)総務省ウェブサイト 恩給制度の概要
(xix)財務省 赤字国債と建設国債の違いを教えてください
(xx)日本経済新聞 「独立財政機関」もう1つの目 国会は動くか
グラフの元データ
予算及び財政投融資計画の説明/付表11/歳出予算主要経費別純計表(一般会計と特別会計の合計) PDF版
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一般会計の歳入(決算)
参考:予算決算比較表/令和2年度一般会計決算概要(剰余金) /決算/歳入
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