世代交代は進んだのか? ~データから振り返る2021衆院選~
1,はじめに
自民党の勝利という形で終わった2021年の衆院選ですが、大物議員の落選があったこともあり「世代交代」の選挙だったという論調もありました。では本当に衆議院の世代交代は進んでのでしょうか?実際のデータをもとに年齢や男女比、投票率、比例票などの分析をしていきたいと思います。
2,年齢分布と世代交代
まずは過去2回の衆院選との比較をしていきましょう。
当選時の平均年齢は、2014年:53.04歳、2017年:54.74歳、2021年:55.53歳と推移しています。
では年齢ごとの分布はどうなっているのでしょうか?
年齢分布を見ても高齢化が進んでいる印象を受けます。
2021年の選挙後では一番のボリュームゾーンは55~59歳で全体の20%を占めます。一方40歳未満は4.9%,50歳未満でも30%です。
では政党ごとの年齢分布はどうなっているのでしょうか?
※ れ新=れいわ新撰組、無=無所属 (以下のグラフも同様)
全体的には当選者の比率と同様の傾向が見られます。また母数の違いはありますが維新、国民、れ新は全体と比べると若い議員で構成されています。
議員の年齢構成は有権者の投票行動よりも、そもそも候補者の年齢分布に依存するのではないでしょうか?
当選者と候補者の年齢分布を比較してみましょう。(データの関係で小選挙区のみの分析となります。)
やはり概ね候補者の分布と一致します。
では少し切り口を変えて当選者のうち前・新・元の割合はどうなっているのでしょう?
やはり自民や立民のように多数派を占める党は80%前後が前職の方です。
前職の立候補者が多く、前職の強い選挙においては、意識的な対策をするか新しい党の躍進がなければ議員の高齢化が進んでしまうのは当然のことかもしれません。
3,男女比
つづいて男女比の分析をおこないます。
この分野は政治分野における男女共同参画の推進に関する法律[1]において政党に努力義務が課されるなど改善が期待される分野でもあります。
まずは過去2回の衆院選との比較をしていきましょう。
10%で停滞の傾向が見られますね。
また、総務省の作成したデータ[2]を見ても長期では比率の上昇傾向は見られるものの、衆議院では10%参議院では20%前後で停滞の傾向があります。
政党ごとの当選者、候補者の男女比を比較しておきましょう。
政党ごとに違いはあるもののやはり男女比には大きな差があります。
男女比について改善したいと考えるのであれば、候補者の男女比を考え直すことは必須でしょう。
4,投票率
今回の投票率は55.93%でした。2000年代の衆議院選の投票率を振り返ってみましょう。
民主党による政権交代が行われた2009年の69.28%でした。[3]
今回の投票率をどう捉えるかはいろいろな意見があるかもしれません。
しかし、日本の有権者の数は1億500万人おり、投票率1%の変化は105万人の変化を意味します。選挙ごとにそれだけ多くの人の行動の変化がみられます。
5,比例票
では最後に政党ごとの分析もしてみましょう。
比例票の行き先から有権者がどの党を支持しているのか考えることができます。
棄権者の数を勘案すると自民党への票数は20%程度です。もちろん棄権者の意思は図れないので20%の支持しか得ていないということはできませんが、これも現在の政治制度の正しい姿ととらえることもできます。
過去数回の衆参での比例票の行き先を追ってみましょう。
長期的にみると自民公明共産は安定した票数を得ています。民主党系は2012年に政権を自民党に奪われた以後の低迷からの回復途上、維新系は当初の人気への回復途中といえるかもしれません。
6,まとめ
データに基づいて2021年の衆院選を振り返ってきましたが、いかがだったでしょうか?
議会の年齢分布や男女比のあり方については多様な意見があるでしょう。しかしイメージで語られることの多い選挙・政治について、データから現在の正しい姿を認識したうえで考えることが重要だと思います。
参考資料
グラフのデータは総務省の発表資料に基づいております。
https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/data/index.html
[1] 政治分野における男女共同参画の推進に関する法律
https://www.gender.go.jp/policy/seijibunya/seijibunya_law.html
[2] 男女共同参画白書 (国会議員に占める女性の割合)
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h30/gaiyou/html/honpen/b1_s01.html
[3] 国政選挙における投票率の推移
https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/ritu/index.html