【盆休み全力脱力企画】ドラえもんに頼んで中学3年生に戻ってみた
私はよく、中学3年生の夏に初めて彼女が出来たものの、私の不甲斐なさから半年後に三下り半を突き付けられてフラれてしまい、以後失恋記録を更新していく…ということを自慢(いや、自慢ではない)のように書いていますが、やっぱり初めての彼女さんともっと長く、積極的に付き合いたかったという本音が隠れているのは否めないところです。
そこで今日は盆の入りということで、特別ゲストにドラえもんを迎え、まず私を昭和60年の中3の夏にタイムマシンで送り返してもらうこととしました。
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ド「今回はレンタルドラえもんのご利用、ありがとうございます。どんな御用で?」
私「僕を35年前に送り届けてほしいんだ」
ド「まず今の50歳の君のまま、35年前に送り返す訳にはいかないね」
私「え?いきなり難題を…。どうすればいいのさ、ドラえもん」
ド(四次元ポケットに手を突っ込み…)「タイム風呂敷~♪」
私「なるほど!」
ド「35年前に戻る…に設定して、さ、包んで上げるから入って」
私「ありがとう!」
~BGM~
ド「どう?」
私「おぉ、自分は変わってないつもりでも、痩せてたんだね~。ズボンがブカブカだし、シャツも袖が余ってるよ。声も若い!」
ド「じゃあ今からタイムマシンに乗ろう!…しかし今の君の家は汚いな、もっと掃除しなきゃ、タイムマシンの出入り口になれそうな引き出しが少なすぎるよ」
私「ご、ごめんなさい。とりあえず妻の化粧台の引き出しからどうぞ」
ド「狭いな~。でも仕方ない、ヨッコラセ。さ、早く君も乗って」
私「はいはい。…せ、狭い…。ごめんね、ドラえもん」
ド「乗ったかな?」
ドスン!という音と共に、タイムマシンに尻から落ちた。
私「イテテ…。じゃ、とりあえず、中学3年の夏にレッツゴー!」
ド「うーん、もうちょっと詳しく教えてよ。場所とか日時とか」
私「えっ。じゃあ夏休みの吹奏楽コンクールが終わった次の日の夜7時、広島県大竹市で当時住んでいた社宅の玄関前にでも…」
ド「分かったよ。ウーン、なるほどね…っと、設定完了!じゃ、今から向かうから覚悟してね。しっかりタイムバーを握っておくんだよ」
私「分かったよ!興奮してきた~💓レッツゴー」
~BGM~
ド「着いたけど、大丈夫?」
私「…オエーッ、こんなにタイムマシンって、乗り物酔いするものなんだね、オエーッ」
ド「そりゃそうさ。本来はあり得ない時空のゆがみに無理やり侵入して、なおかつ希望設定の通りに着地するよう、相当異次元空間に負荷をかける乗り物だからね」
私「マンガだとのび太は気楽に乗ってるけどなぁ」
ド「のび太はもう慣れちゃったから酔わないんだよ。君も慣れればいいだけだよ。それはそうと、なんでこの日時を指定したの?」
私「そ、それはね、僕が中学校から帰ってくる前に、初めての彼女さんから僕宛に、初めての電話が掛かってくるんだ。昔は帰宅したらその話を母に聞いて、折り返して掛け直すのに凄い勇気が必要だったけど、今ならすぐ電話に出て、そしてあの時は言えなかった初デートのお誘いを切り出すつもりなんだ。おぇー…」
ド「じゃあ本物の君が帰って来るまでに、君が先に社宅の部屋に帰ったことにしなくちゃ。早く、早く」
私「そ、そうだよね。ォェ」
ドラえもんは透明マントをかぶり、他人からは見えなくしておいて、一緒に社宅へと入った。
私「ただいまー」
母「おかえりー。コンクール、どうだった?」
私「銀賞だったよ」
母「銀?凄いじゃない!広島県で2位なの?」
私「違う、違う。参加さえすればもらえるのが銅賞で、まあまあの演奏したら銀賞、めっちゃ上手い演奏したら金賞なんだよ」
と、本来なら約1時間後に帰って来る自分が言うはずのセリフを、先に言ってしまった。
母「でもとにかく賞が当たるのは良いことじゃない、頑張ったわね。おめでとう」
私「ありがとう」
ここでドラえもんが聞いてきた。
ド「彼女さんからの電話って何時頃掛かって来るのさ?」
私「確か僕が8時過ぎに帰った時に、30分ほど前ってお母さんが言ってたから、7時半頃かな?」
ド「じゃあもう5分しかないよ!電話機の前で待ってなきゃ!それと、電話はとっとと終わらせて、本物の君が帰って来る前にこの部屋を出ないといけないよ!」
母「誰か友達でも連れてきたの?」
私「ううん、独り言~。気にしないで」
ワチャワチャとしてきたが、ドラえもんから残り時間を聞かされ、急に心臓がドキドキしてきた。中身は50歳のオッサンだというのにだ。
ド「残り3分…」
うーん、上手く当時の自分に帰ってデートに漕ぎつけられるかな?焦ってきたぞ。
と頭の中が混乱し始めてきた頃、電話のベルが鳴った。
ド「ほら、早く!早く出なくちゃ!」
私「うっ、うん。出ないとね!」
受話器を取った。僕は深呼吸してから…
私「モシモシ?」
?「あ、ご主人様ですか?只今、とってもお得に布団が買えるセールを…」
私「今忙しいんですっ!」
ガチャンと電話を切った。
母「何、今の電話」
私「変なセールス!すぐ切ったから大丈夫!」
本当に今は大事な局面なんだから、余計な電話なんかしてくるなっつーの!
ド「まだ残り1分あったよ。慌てさせちゃった、ごめんね」
私「大丈夫、大丈夫、僕じゃなくて親が出たら逆に大変だから」
と言っていたら、今度こそ?の電話が鳴った。すぐに出てみる。
私「モシモシ?」
女「…モシモシ?あの、アタシ、Oというミエハル君と同じクラスの者ですが、ミエハル君いらっしゃいますか?」
私「僕です。僕がミエハルです」(やった❗あの頃のОさんだ💖)
О「えっ、ミエハル君?なんか電話で聞くと、声が違って聞こえるね」
私「そ、そう?気のせいだよ」
О「あのね、コンクールも無事に終わったし、しばらくお話し出来てなかったから、お話ししたいなと思って電話したの。すっごい勇気を出して電話してみたんだよ」
私「だよね。この頃は携帯電話なんかないから、異性の家に電話するのって、物凄く勇気が要るよね」
О「???ケータイデンワ?何それ。何言ってんの?ミエハルくーん、何かSFドラマか小説でも読んでるの?」
パカッ👊横からドラえもんに殴られた。僕もあっ、ヤッテモータ感で一杯だった。
私「いや、ごめん、1人1台電話を持つ時代の小説読んでたから、ちょっと空想しちゃってた」
О「もう、ビックリさせないでよ。でもそんな時代が来たらいいよね。お互いにそんな電話持てたら、親に隠れて電話したりして…キャッ、アタシ何言ってんだろ」
私「本当だよね。でもあと10年ほどしたら実用化されるよ」
ボカッ🤜またドラえもんに殴られた。つい50歳の自分が顔を出すなぁ、いかんいかん。
О「あと10年?ニュースか何かで言ってたの?」
私「あっ、そうそう。研究してるらしいよ」
О「そうなんだぁ。早くそんな時代が来るといいよね。あと10年かぁ。ねぇミエハル君、10年後もアタシ達、付き合ってるかな?」
私「えっとねぇ、Oさんは大学の彼氏と付き合ってて、僕は失恋記録更新してるんだ」
アイタッ🦶今度はドラえもんに蹴られた。
ド「話が滅茶苦茶だよ!中3に戻って話したいんだろ?未来のことは話しちゃダメ!」
О「ん?誰かいるの?」
私「いやいや、ごめんね。新聞紙に足滑らせちゃって、ハハハ」
О「ミエハル君、大丈夫?アタシ、10年後もミエハル君のこと…きっと…」
私「10年後かぁ。今なら言える。Oさんと一緒の人生を歩みたい」
О「そんな、照れちゃうよ。それってプロポーズみたい!結婚はまだ早いわよ」
私「そ、そうだね。25歳だと、うーん、確かにまだ結婚してないし」
イテッ💥ドラえもんにまた蹴られた。
О「何か今夜のミエハル君、変だよ。疲れてる?部長としてコンクールまで引っ張ってきて、やっと解放されたから…」
私「そうだね、部長だったもんね。課題曲の『波の見える風景』は、いい曲だよね」
О「でもクラは連符で大変なのよ。出来ればもう吹きたくないかも~」
私「いや多分この後、10月に交通安全大会で、11月に文化祭で吹くよ…ウガッ」
ドラえもんに口を塞がれた。
ド「未来のことは、例えほんの少し先でも言っちゃダメ!」
О「ねぇミエハル君、大丈夫?風邪引いてる?」
私「あっ、うん、ちょっと夏風邪気味かもしれないね、ゴホゴホ」
О「そうなんだ…。実はね、2学期が始まるまであと3日あるでしょ?だから、どこか1日2人でお出掛けしたいなと思って電話したんだけど、夏風邪引いてたらやめといた方がいいね」
私「えーっ、だ、だ、だ、大丈夫!絶対大丈夫!熱があっても大丈夫!」
О「余計怪しいよ、ミエハル君。結構風邪、酷いんじゃない?あ、だから変な話したり、声も違って聞こえたのかな。夏風邪は長引くっていうから、無理しちゃだめだよ。お出掛けは、ちょっと先延ばししようか?」
私「そ、そんなぁ」
О「ウフフ。別れるわけじゃないもん、大丈夫だよ。元気なミエハル君とお出掛けしたいもん。早く風邪治してね。それじゃあまたね。2学期、元気になったミエハル君と再会するのを楽しみにしてるから。おやすみなさい」
私「…おやすみ…」
電話は切れた。
ド「本当に君ってヤツは何と言っていいのか…。それより、この時の君がもうすぐ帰って来るんだろ?早く元に戻らなきゃ!」
私「そうだねぇ…トホホ」
2人は母親に気付かれないよう、そっと外に出た。
タイムマシンの出入り口へ近づくと、自然と穴が開き、2人は吸い込まれた。
なるほど、ちゃんと元の世界に帰れるように、セッティングされているんだな。
ド「しっかりタイムバー握っといてね。じゃあ戻るよ」
私「頼むよ…」
タイムマシンは出発した。相変わらず激しい動きで、酔わずにはいられないが、さっきよりは慣れたのか、多少は気が楽だった。
ド「到着~」
私「もう着いたの?早っ!ォ、ォェッ」
ド「さっきよりは乗り物酔いも酷くないみたいじゃん。タイムマシンに慣れれば、大丈夫だよ。じゃあタイム風呂敷で、君を50歳に戻すよ」
僕はタイム風呂敷に包まれ、元の姿に戻った。
ブカブカだったズボンも、長くて折り曲げていたシャツの袖も、元に戻った。
ド「じゃあ僕ものび太君の所へ帰るからね。また何か用があれば、レンタルドラえもんにご用命をお待ちしてます。今回の料金は、初回限定で無料だけど、次回からは料金が掛かるから。ではまたね~」
妻の化粧台の引き出しにドラえもんは飛び込んだ。
もう一度同じ引き出しを開けたら、普通の引き出しだった。
私「結局Oさんとは上手くいかない運命なんだな」
という結論に、僕は達したのであった。
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結局、ドラえもんに頼っても最初の彼女さんと上手く付き合うことは出来なかったみたいです。
やっぱり自分自身で道を切り開かなきゃいけませんね!