【最近は、こんな感じ】 夢は、誰かの夢になること。
上海で生活する女の子たちの日常って?
ファッション、メイク、食べもの、よく行くお店。あと、普段考えていること。悩んでいること。そして目標。
そんなあれこれを、同じ目線で聞いてみた。
@mie_shanghai
24 千千
アナウンサー志望の大学生・千千さんとは
今年の6月に知り合った。
卒業に向けて大忙しだと言っていた。
秋になって思い出して、
「覚えてる?」と連絡してみたら、
微信に返事が来た。
――今年の6月に大学を卒業したばかりなんですよね。
千千 はい。その後、全然専門外だった金融系の会社に就職しました。担当しているのは100人くらいのキャパの金融関連のイベントや発表会などの司会です。いきなり入った業界なので、最初は参加者が何を言っているのかもわかりませんでした。今もずっと勉強中です。
――大変だ……。
千千 専門用語が出てきたら百度で調べたり、コーヒーをおごって詳しい人に教えてもらったり。でも、ゆくゆくは財経系番組のアナウンサーを目指そうかなと思い始めたりもしています。あと、出張もあって。福建省が多いですね。でも、行ったら行ったでおいしいものが食べられるのでいいんですけど。
――なぜアナウンサーを目指そうと思ったんですか?
千千 子供の頃はすごく内向的でした。安徽省で生まれて、その後蘇州に引っ越したんですが、学校の友達と言葉もあまり通じなくて。その後、高校に入ってから委員会とか季節イベントの司会を任されることがあって、これ、楽しいかもって思い始めた。その頃、勉強ができたのも自信になりました。勉強すればするほど成績が上がる状態で、このまま行けるんだったら自分のやりたいことを目指せるのではないかと思ったんです。
“せっかくなので、今日は漢服”
――出身は淮北市とのこと。どんな場所ですか?
千千 昔から鉱業で有名な場所ですが、最近は観光にも力を入れているみたいです。とにかく人が少ないから静か。山も湖もあって、リラックスできる場所だと思います。名物は燙麺。細麺で、高菜、キクラゲと挽肉、羊油など具材によっていろんな味がある。特に羊油。羊の風味が濃くておいしいです。でも、上海にはまだ専門店がないと思う。柳州の螺螄粉みたいにバズればいいのになー。
――毎日すごく忙しいと思いますが、お休みの日は何をしていますか?
千千 寝てます(笑)。あとは友達と出かけたり、街で写真撮ったりですね。
――普段、洋服はどんな風に選んでいますか?
千千 今日のこの服は従姉妹の姉にもらったもの。なんかこういう、デザインが変わってて特徴的なのが好きですね。ブランドだと『FUSSED』が好み。季節ごとに揃えてます。仕事ではずっとスーツです。
――仕事柄、メイクや美容にも気を使わないとですよね。
千千 コスメは『3CE』と『CANMAKE』をよく使っています。あとはたまに医美(医療系エステ)に。5分の施術で1000元くらいかかる。すごい高いです(笑)。でも肌が柔らかくなるし、医療系は効果があると思います。
――今日は漢服も持ってきてくれたとか。
千千 せっかくなので(笑)。でもこれ、初めて買ったんです。
――漢服、なぜ流行ってるんでしょう。
千千 きれいだし、着る人の個々の風格や清楚な雰囲気が出るからかな。色の組み合わせも楽しめるし。あと、最近は馬面裙(明〜清代の巻きスカート)も流行り始めていると思います。
――アナウンサーを目指す人って中国では多いのでしょうか。
千千 少ないです。理由は、みんなもうテレビを見ないから。多いのは主播(ライブ配信のMC)を目指す人。商品の紹介をしたりする感じですね。簡単そうに見えますが、紹介する商品の機能なんかを完璧に覚えた上で、自然に、友達に話すような距離感で的確に話さなければならないので意外に難しいです。私もIT系の会社のインターンで少し体験しました。
“意義のある仕事をしている人に憧れる”
――卒業までいろいろな会社でインターンをやったと思いますが、何がいちばんおもしろかったですか?
千千 東方衛視(テレビ局)の仕事です。演者がステージに出るタイミングなどを伝えたり、立ち位置をチェックしたりする仕事で、意外に難しくて怒られたりしてた(笑)。でも、それまで私ずっと適当な性格だったんですが、この仕事を体験して以降、細かいこともきっちり覚えて的確に仕事をする人になれたと思っています。
――ところで、日本だと大学出たてくらいのアナウンサーがテレビに出てますが、中国は30〜40代が多いですよね。
千千 私も参加していますが、アナウンスのコンテストがあって、それである程度の成績を収めていくシステムになっています。それまでは、若い人は小さい番組を任されている感じ。で、アナウンサーの頂点は、中国では『春晩(春節の大晦日の特番)』のMCをやっている人たちになるのかな。
――では、千千さんがいちばん好きなアナウンサーは誰ですか?
千千 柴静さんです。アナウンサーというよりジャーナリストかも。伝えるだけではなくて、さまざまな問題に対し自分で取材に行って、切り込んだ話題を提供してくれる。彼女の書いた本もすばらしかった。ずっと、意義のある仕事をしている人だと思っています。なのにふわっとしたショートカットで、すごくやさしい雰囲気の女性なんですよ。
――では、千千さんの今後の目標を教えてください。
千千 高校のとき、先生に「あなたの夢は?」と聞かれて、「人の夢になること」って答えたんです。大人になってそれはすごく難しいことだとわかったけど、でも勇気を持ってその目標のために頑張りたいと思っています。
――では、今後もずっと上海にいますか? 故郷に帰るとか、別の都市に行きたいとかありますか?
千千 上海にいると思います。旅行は行きたいですね。今年の冬はハルビンに行こうと思っています。特に『氷雪大世界』(毎年冬限定の氷のテーマパーク)。きれいで、すごく神秘的だと聞いて。まだ冬の北方に行ったことがないので雪景色をたっぷり楽しみたいです。
(取材日:2023年10月29日 撮影地:延安西路1221号)
<彼女のお勧め>
『白日清澄』(上海市長寧区愚園路471号)
☆すごいかわいいお店。お茶漬けもおいしい。
『很久以前羊肉串』(上海市徐匯区陜西南路141号3楼 ※ほか市内に支店多数)
☆チェーン店の串焼き肉屋さん。結局ここという感じで、大学時代の友達や同僚とよく行く。
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萩原晶子
フリーライター。上海にて2007年頃よりガイドブック、ファッション誌、機内誌、ウェブなどの記事を手がけている。
カルチャー誌『Ketchup.』(上海と東京で販売)など。
ins:@hagiwara_akiko_
微博:Akiko06
photo
阿部ちづる
2006年にフォトグラファーとして独立。ファッション誌、ビューティー誌、週刊誌、写真誌等のグラビア、ポートレート写真を撮影。アイドルグループやグラビアモデルからのアーティスト写真撮影で指名されることも多く、女の子の新鮮な表情を切り取る。
佐々木希『ささきき』(集英社)、武田玲奈『Rena』(集英社)ほか多数。
ins:@chizuru0821
https://lov-able.com/photographer/chizuru-abe