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見える景色が変わる!在宅医療の醍醐味とは?

今回は、健やか薬局津駅西口店の管理薬剤師:石橋さんにインタビューしました。健やか薬局の中でも、特に津駅西口店は在宅に特化しており、たくさんの学生さんが毎年見学に来て頂いている特徴ある店舗となっています。


--津駅西口の特徴を教えて下さい。
津駅西口は主に在宅業務に力を入れている店舗になります。
外来は近隣の方が少し見える程度。今は通院できるけど、できなくなったら在宅にしたいという予備軍のような方もいらっしゃいます。

外出が多いので時間も取られますが、安定している方は月1~2週間に1回程度の訪問です。ガン末期の方ですとほぼ毎日行くこともありますね。

具体的には、在宅医の先生が往診に行かれたあとに、先生と患者さんの状態について相談し、そのあと自宅を訪問しお薬の説明をしたり、残薬の確認をしたり、服用状況の確認を行っています。必要に応じて管理方法を工夫したり、ほかの職種と相談しながら、お薬がきちんと飲めるようにしています。

--1日の流れを教えて下さい。
まずみんなでバイタルリンクというインターネット上で多職種連携しているサイトがあるのですが、そこを見ることが1日の始まりです。
ここに昨日の夕方から朝までに起きた情報があがってくるので、一人一人のご様子を確認します。バイタルサインや、夜間の緊急呼び出しがあったときの情報も上がってきますし、お薬の指示も書いてあるので、今の状況を全員で把握し、情報共有します。
この情報を見て、緊急性が高い方から訪問するように割り振りして訪問計画を立てます。

北エリアと南エリアにわけて1日の訪問予定を組み、薬剤師同士で朝、昼、夕方と3回カンファレンスを行っています。

--在宅に行く際にバッグを持っていかれてますが、かなりたくさん持っていかれるんですね。
自分の身を守るカバーとか、お薬をまとめたりする備品も持っていきますね。ハサミやマジック、テープやのりなども必需品です。お薬を抜いたり作り変えるときに使います。
あと、カレンダーセットするときにテープでくっつけて見やすくしたりもしますし、ホチキスでお薬をとめたり。
注射針とシリンジとアダプタなども。シューズカバーや手袋も患者さんの褥瘡の措置をするのにときに使ったりします。

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バックの中身を見せてもらいました

店舗にいるときはどのようなことをされてますか?
外来のお薬を作ったり、注射の調剤をしていることがほとんどです。
一人が出かけていくときは、一人が残って調剤をします。
判断に迷うときはお互いに連絡が入りますし、状態が悪いときは担当薬剤師の判断で先生に連絡してもらったりしています。

写真がアップできるので、患者さんの了解を得たうえで写真を撮影して、アップしてもらい、目視で状況把握できるようにすることで、チームですばやく共有できる仕組みを整えています。
また看取りが近い方ですと、お薬の量を加減したりもしますし、血圧や脈拍、体温、尿量などどういう状況なのかを随時把握するようにしています。

--在宅医療に携わったきっかけを教えて下さい。
在宅医の先生と出会えたことがきっかけです。
前職で先生とお仕事することがあり、メディカルリンクに入社して引き続き、お仕事をしている状況です。

--在宅医療における薬剤師の役割はどのようなことだと思われますか?
先生が患者さんに必要と考えるお薬を、きちんと飲んでもらえるよう日々試行錯誤することかなと思っています。
患者さんのご自宅の環境や生活リズムを把握した上で、飲みやすい剤型や調剤方法を変更したり、自宅での管理方法を多職種も巻き込んで安心して服用して頂ける環境づくりをするのが私たちの役割だと思っています。

--日々、心がけていることはありますか?
チームで動いているので、そのチームの中で何ができるかを常に考えて行動するようにしています。
バイタルリンク(多職種連携情報共有システム)を利用しているので、患者さんのバイタルサインの様子などがリアルタイムで上がってくるので、情報を正確に把握して、必要な情報は自ら発信するように心がけています。

--在宅ではどのようなスキルが必要になりますか?
特別なスキルは必要ないと思うんです。
いろんな疾患を抱えた方がお見えになるので、その方の病気について自分で調べて勉強していくことが大事かなと思っています。
できることを一つひとつクリアしていけば、その患者さんにとって必要な医療は提供できると思っているので、わからないことがあったらわかる方に聞いて、自分のものにしていけば困ることはないかなと思います。

私は病院出身ですが、病院で身に着けた知識があるから在宅に取り組めるわけでもなく、薬局からでも介入していくことは十分可能です。
たくさんの処方箋をみて、すでに身についているものがあるので、注射剤をみたときにこういうことが注意だな、という意識があれば、確実にできるし、適正な判断ができると思います。

また、先生がどのような医療を実現したいのかを確認して、その流れについていくこと。
先生は何がしたくて、どう判断されているのかを把握する。そうしないとお薬が適性かどうかも判断できないので、先生やチームがどこを向いているのかをきちんと判断することが必要になります。

--先生がどうしたいのか、気持ちを汲み取るのは難しくないですか?
毎月、カンファレンスを2時間行っています。
すべての方に対して振り返りと治療方針を確認するので、まずそこで先生がどう判断されているのかを確認できます。
看護師さんも同席されているので、その方の問題点や改善点を確認しているので、ある程度先生の考えがわかるようになってきます。
大切なのは、1日何回も先生とお話することでしょうか。

--看取りに対しては、どのように気持ちの整理をするのでしょうか?
看護師さんはブリーフケアといって、亡くなった方のお家にいって回想法ということをされています。
私たち薬剤師は、「ご飯は食べれなかったけど、こんなことはできたよね」といろんなことを振り返って、「最後おうちに帰れてよかったね」と、薬剤師同士で気持ちを受け入れていくようにしています。

「こういうことはうまくできたけど、これはできなかったね」という反省も含めてみんなで振り返って、受け止めるという感じでしょうか。
ひとりで受け止めるとしんどいので、みんなで受け止めて、自分たちの中で気持ちを整理していくようにしています。

--在宅患者さんに会うときはどのような気持ちで行かれていますか?
告知か、未告知かによりますが表情には出さないように気を付けています。
先生も絶対に白衣を着ないですし、スーツで自宅へ行かれますので、健やか薬局の制服も圧迫感を与えないような色になっています。
せっかくお家に帰ってみえたので、患者様がこわばった表情にならないように心がけています。
こちらの表情は患者様にも伝わってしまいますから。「おうちにお邪魔します」という態度でご訪問するようにしています。

--患者さまのご家族が構えたりはされないのでしょうか。
先生がおだやかな方なのであまりないですね。
初回は先生、看護師、薬剤師、ケアマネチームで訪問します。
ご家族も交えてアットホームな感じで訪問しますので、緊張感や威圧感がないように心がけています。

それに、在宅に関わっている先生は優しい先生が多いんです。
患者様も知らない方がお家にくる距離感は感じずに受け入れてくださる方がほとんどです。
患者様がお家に帰ってやりたいことができるよう、先生がやさしく聞いてくださいますので、最初は患者さんもこわばっているけど、だんだんお顔も緩んできて、やりたいことを話されたりするのは、先生の雰囲気づくりのおかげかなと思いますね。

先生がご本人と話しているとき、私たちはご家族としゃべることが多いです。
薬剤師はどうしても難しい言葉で話してしまうことがあるので、わかりやすい言葉で説明するように心がけていますね。
高齢の方も見えますので、「今、患者さんはエコーをされていて、先生はこんなことを見られているんですよ」と私たちが説明します。
先生が何をしていて、何を心配されていて、それがどういうことにつながるのかをわかりやすく説明することで、安心してもらえるようにお話しています。
ご家族が今の状況から置いていかれないように、一緒に会話に入る役割も多いです。

先生は必ず、「その方はどういう人生を歩まれたのか」を確認されています。
みなさん大切なものを身の回りに置いていることが多いので、趣味のものだったり、表彰状が飾ってあったりなどを確認されたあと、その方はどんな人生を歩まれたか、をご本人に教えて頂きます。
お薬だけではなく、その方の人生そのものを見ることを大事にされているんです。
チームのみなさんも観察力がすごいので、次はこういう話をしましょう!と、終わってから話し合いをするようにしています。

--話すのが苦手な薬剤師さんは何を話したらいいんだろう?とならないですか?
こちらが緊張すると相手も緊張してしまいますので、新人さんの場合は、最初はできるだけ先輩と一緒に行くようにして、慣れた頃に一人でいってもらうにしています。

--外来と在宅の違いは何かありますか?
在宅に行くといろいろなものが見えてきます。よそ行きの顔ではなく、家にいるときのその方のお顔を見せていただくので、そこが決定的に違うかもしれません。
どんな環境で暮らしていて、冷蔵庫には何があるのかも見せてくださるので、生活全般を全部把握したうえで、その方にあったものをチョイスしていく。その方の家族も含めて。
外来だけの調剤と見える風景はまったく違うかなと思っています。
半分家族みたいな感じ。私たちは親戚や孫世代になるので、そういう雰囲気で訪問していますね。

--在宅医療に関わるやりがいはどんなときに感じられますか?
お家に帰りたい方がお家に帰ってきて、ご家族と楽しそうに過ごされているのを見ると、在宅医療に関われて本当によかったなと思います。
日々一生懸命取り組んでいるので、これからも引き続き在宅医療に携われたら幸せだなと思っています!


編集後記
石橋さんが穏やかに患者様のことをお話されていたのがとても印象的でした。ご自宅へ行かれた際も終始穏やかな雰囲気で、ご本人やご家族とお話されている姿が目に浮かびます。
だからこそ、たくさんの先生方から依頼が来るのだと感じました。

そして、在宅医療に関わる現場は日々、変化していると感じました。
私たちが知らない、患者様の人生そのものに関われる薬剤師の仕事ってやはりやりがいがある仕事だと思います。

薬剤師が変わることで、地域医療は変わりますし、何より、ご本人にとってより良い看取りが叶うと信じたい、そう思えるインタビューでした。


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