電力カルテル事件から見えた関西電力の闇の深さ
7月28日、日本一の老朽原発高浜1号を再稼働した関西電力(以下関電)。高浜町元助役からの不正金品受領、取締役報酬の闇補填、高浜町市議会議員への不正な支出、電力カルテル、子会社の顧客情報の不正閲覧と次から次へと不祥事がでてきます。こんな関電に原発を動かす資格はありません。
カルテルの始まり
2016年4月、全面的な電力自由化が行われ、一般家庭でも自由に電力会社が選べるようになりました。
2017年11月から12月ごろにかけて、関西電力(以下関電)は中国電力、中部電力、九州電力に対して、お互いの管内を超えての営業に関して情報交換を行ない、これを「仁義切り」と呼んでいました。
2018年10月から11月ごろ、今度は安値競争でお互い疲弊するのを防ぐため、営業活動などを他の電力管内では行わないことなどを伝えました。九州電力、中国電力には森本関電副社長が、中部電力には川崎関電執行役が伝えたと会見で発表しました。
多額の金品を不正受領した事件が発覚
当時、関電社内では元高浜町助役からの金品不正受領問題が発覚し、社内調査が進められていました。2019年9月、不正受領の社内調査結果を公表した関電は「(金品は)預かっただけ」「違法性はない」と主張。自らも金貨を受け取っていた岩根社長は当初は辞任しない姿勢を見せていました。しかし、世間の批判に押される形で、第三者による調査委員会を設置、2020年3月、第三者委員会の報告を発表し、岩根社長は辞任しました。
新社長に就任した森本孝は「二度とこういうことが起きないよう最善を尽くすことが私の役割」と記者会見で語りました。4月、関電はコンプライアンス推進室を設置、その室長に就任したのは、川崎執行役の直属の上司である彌園豊一副社長でした。
カルテル発覚後すぐに課徴金減免申請
2020年秋ごろ、外部からカルテルの情報提供があり、関電は社外の法律事務所に調査を委嘱して社内調査を行いました。この調査結果に基づいて10月29日には公正取引委員会へ課徴金減免申請を行いました。課徴金減免制度とはカルテルなどの違法行為を行った際、一番初めに課徴金減免申請を行い、捜査に協力した会社は課徴金を全額免除されるという制度です。課徴金減免申請をするということは「自ら罪を認めて捜査に協力する」ことを意味しています。しかし関電は減免申請は速やかに行ったにもかかわらず、主犯である森本や彌園らの社内処分を行いませんでした。処分するどころか、2021年6月の株主総会でも森本は社長、彌園は副社長でしかもコンプライアンス推進室室長のまま、1年間でそれぞれ7300万円、5600万円もの報酬を支払っていました。2022年6月の株主総会でようやく2人は退任しますが、森本はその後も特別顧問となり、月300万円の報酬をもらっていました。
今年4月ようやく取締役報酬減額処分
2023年4月12日、ようやく関電は処分を発表しました。https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2023/pdf/20230412_2j.pdfによれば、
森本 孝(当時 代表取締役副社長執行役員)月額報酬50% 6ヶ月
彌園 豊一(当時 代表取締役副社長執行役員)月額報酬50% 6ヶ月
岩根 茂樹(当時 代表取締役社長) 月額報酬50% 3ヶ月
川崎 幸男(当時 常務執行役員) 月額報酬30% 3ヶ月
森本 孝については、特別顧問を辞任する旨の申出があり、4月12日付 けで受理
現経営陣 森 望 (取締役代表執行役社長) 月額報酬50% 3ヶ月
稲田 浩二(取締役代表執行役副社長) 月額報酬50% 2ヶ月
指名委員会、報酬委員会は機能せず
関電は金品受領事件を受けて、コーポレートガバナンス体制構築のために会長を外部から招聘しました。2020年6月末、元経団連会長の榊原定征氏が会長になりました。同時に関電は委員会等設置会社となり、指名委員会、報酬委員会、監査委員会を設置しました。榊原会長は指名委員会の委員長であり、報酬委員会の委員でもあります。2020年秋の社内調査で森本社長が関与を認めた後も、指名委員会は社長を続投させ、報酬委員会は7300万円の報酬を決定しました。朝日新聞の記事で榊原会長は「独占禁止法違反にならないと信じていた」と語っています。課徴金減免申請は素早く行ったのにです。ガバナンス体制の立て直しより課徴金の減免が大事だったとしか思えません。外部から会長を招聘しても、指名委員や報酬委員に社外取締役を起用しても、コンプライアンス推進室を作っても、まったく機能していないことは明らかです。
関電社長たちの辞任の連鎖
10代社長森詳介、11代社長八木誠、12代社長岩根茂樹は3人とも、元高浜町助役からの不正金品受領事件や取締役報酬闇補填事件を受けて、それぞれ相談役、会長、社長を辞任しました。12代社長森本孝は今回カルテル事件で特別顧問を辞任。また子会社である関西電力送配電の顧客情報を15万件以上も不正に閲覧していた問題で、5月12日には、12名の役員等の報酬減額処分を発表しました。
今年6月の株主総会で「これで不祥事は終わりか、まだでてくるのか、イエスかノーかで答えてほしい」と株主に聞かれた関電役員は「道半ば」と答えました。
日本で一番古い原発を動かした関電
そんな関電が運転開始から48年という日本一古い高浜原発1号機を、7月28日に再稼働しました。
悪いことをしたと自首したのに、社長たちの処分は先送りにした関電。
たった200tの使用済核燃料を仏国に運ぶ計画を発表しただけで「約束は果たされた」という関電。(詳しくは 関西電力 中間貯蔵施設の「約束」をめぐる黒歴史をご覧ください。https://note.com/mie629/n/n2d6d67903103)
嘘とごまかしばかりの関電に原発を動かす資格はありません!(肩書きは当時)
*「脱原発へ!関電株主行動の会のニュース」に書いたものに書き加えています。https://datugenpatukabunusi.hatenablog.com/
*10月12日、中部電力、関西電力、中国電力、九州電力4社の株主がカルテルで株主代表訴訟を提訴しました。
関電カルテル株主代表訴訟のHPができました。