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いつまで続く汚染の残るALPS処理水の海洋放出?!そしてやっかいなフランジタンクの解体が始まった


1年で3万1572立法m減った

東電は福島原発事故の汚染の残るALPS処理水を汚染した海水で希釈して海洋放出していますが、2023年12月21日から2024年12月19日までの約1年間(365日間)で減ったタンク内の処理水は3万1572立法mでした。
23年12月21日=132万5712立法m
24年12月19日=129万4140立法m
差し引き 3万1572立法m
365日で割ると 86.5立法m/日
残り129万4140立法mを、86.5立法m/日で割ると
1万4961日となり、約41年かかることになります。
(処理水の量は処理水ポータルサイトより)https://www.tepco.co.jp/decommission/progress/watertreatment/alpsstate/

41年では済まない

つまり昨年同様の放出を続けるとタンクが空になるまで41年かかるということになりますが、これはあくまで単純計算の結果です。
「処理水ポータルサイト」をみると、タンクには希釈するだけで放出できる処理水は約3割で、残りの7割は「処理途上水」つまり汚染がひどいので、放出するためにはもう一度処理しないといけない汚染水があります。またストロンチウム処理水が9757立法mあります。

実際に放出したのは5万4934立法m

24年には7回海洋放出しています。7回分の放出量を合計すると、5万4934立法mになります。(タイトル画像、単位は立法m)
さきほどの1年間で減った分の3万1572立法mと実際の放出量5万4934立法mの差、2万3362立法mは何かというと、福島第一原発の中に入り込んでいる地下水や雨水の量です。
こちらも365日で割ると、64立法mとなります。処理水の増加量は「2025年までに1日100立法mに抑える」ことが目標になっていましたので、この1日64立法mという数字はかなり優秀です。12月は降水量が記録的に少なかったからでしょうか。しかしそれは「がんばって流入量を減らしてもようやくこれだけ」ということでもあります。

処理途上水はどうなっているか

ALPS処理⽔等の告⽰濃度⽐(推定値)毎の貯蔵量(2024年9⽉末時点)https://www.tepco.co.jp/decommission/progress/watertreatment/images/increase.pdf  
同じく「処理水ポータルサイト」の図をみると、処理途上水の24年9月末現在のタンクの中の濃度別の量がわかります。


処理途上水の現状 24年9月末現在

一番左の告示濃度比1倍以下の水色のところが、そのまま希釈して放出できる処理水ですが、ここが36%となっています。右側4つ、告示濃度比1倍を超える処理途上水の合計で64%になります。(ここで「はて?」となりました。「処理水ポータルサイト」の「ALPS処理水等の状況」をみていると、先ほども書いたように、海洋放出前からずっと「ALPS処理水は約3割、処理途上水は約7割」という表示のままになっています。これはどういうことでしょうか?また東電にきいてみます。まともな回答があればお知らせします)
注記の*5を見ると「ALPS処理⽔受⼊のため,10〜100倍 2,500m3増加」となっていて、これが日に64立法m増えているものの一部だろうと思います。かなり濃度の濃い汚染水が増えています。このままでは放出はできません。この状況をみても、昨年同様に41年間海洋放出を続けても、海洋放出は終わらない可能性がとても高いと思います。

更地になったタンク置き場には燃料デブリ?

海洋放出に踏み切った理由のひとつは、タンクの置き場がないことでした。東電は海洋放出で空になったタンクや以前使用していたフランジタンクを解体した後、そこに取り出した燃料デブリの置き場をつくると言っています。しかし昨年取り出した燃料デブリはわずか0.7gでした。そもそも計画段階から一度に3g以上は取り出せない計画でした。早急に燃料デブリ置き場が必要だとはとうてい思えません。

やっかいなフランジタンクの解体作業が始まった

汚染水が漏れるので撤去を進めてきたきたフランジタンクですが、一番やっかいなとても放射線濃度の高いものが入っていたため解体できなかったD1タンクの解体作業が1月9日に始まりました。*1 
めちゃくちゃ高い放射能をもつ粘度の強いスラッジがたまっていて、過酷な被ばく労働を強いられる作業となっているようです。
福島第⼀原⼦⼒発電所 Eエリアフランジ型タンク解体の進捗状況 (1月9日)

https://www.tepco.co.jp/decommission/information/newsrelease/reference/pdf/2025/1h/rf_20250109_1.pdf

詳しくは以下↓のおしどりさんの1月9日の東電会見キャス配信で。
開始1時間28分ごろからの東電を出たあとのマコさんのコメントを聞くと状況がよくわかります。このフランジタンクは「アルファ核種がとても高い、だからずっと手をつけられないものだった」のに解体開始の説明資料に放射線量などの「基本情報が抜けている」。「高線量の被ばく作業を、その情報を出さずに説明しよる」と東電の広報の姿勢のひどさをマコさんは指摘しています。こういう情報をもっと知りたいし、広めていきたいです。

汚染の残る処理水の海洋放出反対!

目の前のことしか考えず、廃炉とは何かの定義もないままの「汚染の残る処理水を汚染した海水で希釈しての海洋放出」強行にあらためて反対します!

*1 フランジタンクとは、鋼鉄製の部材の接合部にパッキンを挟み、ボルトで締めたタンクです。福島原発事故当初、タンクをつくるのが簡易なので、フランジタンクに汚染水を溜めていました。しかしフランジタンクは継ぎ目などから水が漏れるリスクが高いので、溶接型タンクへの移行がすすめられてきました。
フランジタンクの中身を全て空にして、解体が進められてきました。しかしその中で非常に汚染の強いD1タンクの解体にはずっと手がつけられてませんでした。モックアップ試験などを経て、ようやく1月9日から解体作業がはじまりました。
【第5部 汚染水の行方】(4)タンクの不安 溶接型への変更 急務 2013/11/01 福島民友

引用「なぜフランジ型にしたのか-。東電は、一日四百トンのペースで増える汚染水に対応するためだったと説明する。溶接型タンクが製造から設置まで六カ月かかるのに対し、フランジ型は半分の三カ月で済むからだ」
「下請けの依頼を断った業者は『五年もつ丈夫なパッキンを使える金額じゃなかった』と振り返る。東電はタンク製造に掛かる契約額を明らかにしておらず、十分な耐久性が確保できる予算を投入したのかは不明だ。業者は『何重にも下請けに出され、うちのような現場に下りてくるころには、予算がかなり目減りしてしまうということはあり得る』と推測した」

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