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小学3年生のフィンランド留学体験記 第1章(全9章)
目次
1.登校初日
2.マンツーマンレッスン
3.給食
4.初めての友達
5.外国人教室
6.絶対外に出なきゃいけない中休みと昼休み
7.ワールドカップ2022
8.初めての遠足
9.雪山でソリ滑り
10.サッカー場デビュー
11.面白いテスト
12.授業サポートのマティアス先生
13.助けて翻訳機
小学校3年生のフィンランド留学体験記
まだ暗い中、お母さんと弟と1.2キロメートル先の小学校へと歩く。気持ちを落ち着かせようと、冷たい空気を胸いっぱい吸ってゆっくり吐くと、白い息がすーっとほほを通り過ぎた。今日からフィンランドの学校が始まる。緊張と不安で胸がぎゅーっと締め付けられた。
第一章 11月
1.登校初日
僕の名前は川島りくと。小学3年生だ。お父さんの仕事の都合で1年だけフィンランドに来ている。お母さんも弟も一緒だ。今日でフィンランドに来て1カ月。2回の学校面談を終えて、ついに11月10日の今日からフィンランド人が通う学校に転入する。
「学校行きたくないな」
と言うと、
「初日は誰だって緊張するよ」
とお母さんが言った。
小学校が見えると、もう行くしかないという気持ちになった。
9時にならないと校舎には入れなかったので、弟と校庭の遊具で遊んで待った。するとフィンランド人の男の子が同じ遊具で遊び出したので、弟と2人でその場を去った。後からお母さんに言われたけど、
「あの男の子、りくとと遊びたかったんじゃない?」
って、そうだったのかな? だとしたら嬉しい。一緒に遊べば良かったと少し申し訳ない気持ちになった。9時ちょうどにチャイムが鳴って、担任のエンミ先生が
「モイ(こんにちは)!」
と笑顔で出迎えてくれた。僕は弟と別れて先生と教室へ向かった。教室に足を踏み入れた瞬間、
「きゃー!」
「わー!」
とお祭りが始まったかのような大歓声。クラスメイトはみんな目をキラキラさせて僕を見た。すごく嬉しかった。とても歓迎されているみたいだ。先生が僕のことを紹介してくれた。
僕のクラスは母国語がフィンランド語ではない子供たちが集まる外国人クラスだ。フィンランド人のクラスに入るための準備クラスともいえる。生徒は13人。僕が入って14人になった。先生に教わりながらみんながフィンランド語で自己紹介をした時、いろいろな国の出身の子がいることが分かった。それにみんなフィンランド語を間違えている。間違えてもみんなにこにこして、クラスメイトも先生も温かい雰囲気だ。なんだかほっとした。エンミ先生も自己紹介をした。先生が
「私はフィンランド出身です」
と言ったときは
「そりゃそうだ!」
ってクラス全員がつっこんで、みんなで笑った。面談の時エンミ先生はクラスメイトのことを
「全員フィンランド語が全くできないままここにきているから、りくとの気持ちをすごく理解できるの。それにみんなお世話が好きなのよ」
と言ったのを思い出した。
僕が教室に入ったのはみんなにとっての2時間目だった。先生がゲームを企画してくれて椅子取りゲームなど3つのゲームをした。その後は長い中休み。一番背の高いアルティンが僕を学校案内に連れて行ってくれた。面談で先生が案内してくれた学校案内よりもっと詳しかった。音楽室って勝手に子供だけで入っていいんだ。日本の学校と違って自由だなと思った。アルティンがサッカーボールを借りてくれて、クラスメイトの男の子2人と弟も入って校庭でサッカーをした。みんなサッカーがうまい。なんとかついていけたと思う。サッカーボールは表に名前を書いて借りる。名前を書いた人が責任をもってボールを扱う決まりだ。返す時は名前を消す。全部アルティンがやってくれた。給食は10時だった。こんなに早いと思わなくて驚いた。それもそのはず、食堂は小さくてとても全学年が入れない。10時からは僕たちのクラスともうひと学年一緒に食べた。朝ごはんをしっかり食べてきたから、全然お腹が空いていない。サラダとフィッシュフライを少しだけ取った。他のクラスメイトはお皿山盛り。みんな朝ごはん食べてこなかったのかな?
3、4時間目は父の日のカード作成だった。エンミ先生が携帯の翻訳アプリでサポートしてくれた。カードはみんなそれぞれ自分の国の言葉で書いた。カードに書くことは決まっていた。お父さんにできるようになってほしいことか……そうだな、スケボー上手くなってもらって一緒にやりたいな。家の近くにスケートボードパークがあって、先月から弟とスケボーを始めた。上手い子がたくさんいるから刺激される。3時間目に僕より年下の子は帰っていって、僕は4時間目が終わった12時に帰ることになった。玄関に行くとお母さんが待っていた。校庭でもっと遊びたかった僕はお母さんに
「迎えに来るの早すぎ」
と言った。文句を言ったつもりなのにお母さんはなんだか嬉しそうだった。
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