不条理 Ⅱ
隣街の古い貴族の館は
継ぐ者がいなかったとみえ
今や廃墟になり
幽霊や死霊を見たとか
噂が絶えない
どうやら怖いもの見たさにやってくる
若者たちが絶えないらしい
噂ではそこにはある時間になると
竜巻が吹き荒れ
館内の物を片っ端から吹き飛ばしているようだ
でもその時間にさえ行かなければ
ロウソクを立てて
ちょっとしたパーティー気分を味わえると
若者たちの間で評判になっていた
ある日、時間を見計らって来た筈なのに
竜巻はいつもより早くやってきた
竜巻いやウズマキに飲み込まれそうに
なりながら若者たちは急いで逃げ出した
しかし妙な声を聴いたのだ
ウズマキをよく見ると
中央に女性がいて歌っているのだ
その美しい声に皆囚われ
館の外へと逃げ出しながら
聴いてしまっていた聴き入ってしまうと
ウズマキの犠牲になってしまう
耳を塞げ!と言う仲間の声も虚しく
聴いてしまったダフィーは
歌は勿論、更に美しい彼女の容姿に
すっかり惚れこんでしまった
しかし彼女は近ずいてきたダフィーに
ニコリともせず、視線すら合わせない
誰も居ないかのように
ただ一人で歌っている
それでも諦められないダフィーは
彼女の傍に行き「君の名前は?」と聴いてみた
すると彼女は目を合わせずに言った
「私は眼を亡くしたわ
この化け物のウズマキに盗られたの
この眼は義眼よ
私の名はマリーネ、マリーでいいわ
早く逃げ出さないとダメよ
今ならウズマキの機嫌がいいわ
今の内よ!! 」
そう言う彼女の眼は何処を向いているのか
ダフィーには見分けられずにいた
戸惑うダフィーをお構い無しに
マリーはウズマキが静かにしているその隙に
館の外へダフィーをそっと押し出した
ダフィーは正直なところ
外へ出られて安堵した
しかし、このままマリーネを
あのウズマキの傍に置いておくなどできないと
強く思った
そして自分の胸に誓った
マリーネを助け出し
あのウズマキの正体を暴いてみせると。