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<<我が家の愛犬ストーリー>>
以下、今から11年前の2013年1月、初代ゴールデンりんごをお空に送り、のこを迎えたあと、友人から依頼を受け、GRCJ (The Golden Retriever Club of Japan)の会報【2013新年号 GRCJ News vol.131】に投稿させていただいた記事です。
<<我が家の愛犬ストーリー>>
茨城県龍ヶ崎市 清水美枝
今、私の足元には、我が家に来てちょうど一年、1歳2ヶ月のゴールデンの女の子「のこ」が気持ちよさそうにネンネしています。
のこは、とにかく自己主張する女の子。遊んで!お腹すいた!早く食べたい!怒らないで!怖い!私のこと好き?あれやこれや表情を変え、口調を変え何でも訴えてきます。そして、とにかく甘えん坊。キッチンに立てばキッチンに。トイレ掃除すればトイレに。そして、掃除機をかけると向かってきます。
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アイコンタクトはうちに来たときから、ばっちり。呼び戻しもばっちり。人の話をよーく聞きます。そして、よーく訴えます。
いろんなことに興味津々、それでいて慎重派。多分、飼い主が良ければ、かなり何でも出来る子に育つような気がします。
1歳でここまで、のこの性格やのこの言うことがわかるのは、のこが我が家にとっての2匹目のゴールデンだからなのです。
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我が家には、2003年1月8日生まれのゴールデンの女の子「りんご」が居ました。私たち夫婦が、初めて迎えたワンコ。
トリマーをやっている妹にブリーダーを探して迎えるようにとアドバイスを受けていたのに、ブリーダーの探し方もわからず、地元のペットショップやホームセンターを探し、たったの一日でみつけたのが、私の人生を変えたとまで言える「りんご」との出会いでした。
犬との接し方なんて全くわからない私は、ネット友達を作り、地元の公園で犬友達を作り、訓練師に習い、犬のしつけを必死で学びました。私は、とにかく、りんごをどこに連れて行っても恥ずかしくない完璧な犬にしたかった。私の左脇を私の歩調に合わせて歩き、可愛いお洋服と素敵なリードをつけて街中を颯爽と歩きたかった。そして、カフェでは足元で伏せをし、どこにでもお泊りに連れて行ける、そんなゴールデンに育てあげたかった。
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りんごとの生活が楽しくて、りんごの物を買い揃えるのが楽しくて、犬のことを知るのが楽しくて、手作り食の勉強もしました。
犬友達と遊ぶのもすごく楽しかった。そして、りんごと2人で、あちこち出かけるのも楽しく、カフェに通い、ショッピングモールをお散歩したり、銀行や郵便局にも連れて行きました。
おかげで2歳になるころには、りんごは、私一人でどこにでも連れて行ける思い描いていた通りのゴールデンに成長しました。
そんな中、パパとりんごと3人で10日間の北海道旅行に行きました。ラリー観戦と札幌に住むネット友達に会うのが目的でした。
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10日間3人で移動し、大勢のワンコに会うことも無かったので、りんごはさほど疲れず、穏やかにいられて、私たち家族の絆も深まりました。
そして、その北海道旅行で、札幌に住むネット友達に「りんごちゃんは、いっぱい話しかけてきてるよ。りんごちゃんの話も聞いてあげてね。」と言われたのです。
りんごは、とにかくお犬良しで、優しくて、穏やかで、平和主義で、控えめな子でした。なので、こちらがわかってあげないと、我慢してしまうような子でした。そんなりんごが自分を出せるように、私たちがりんごの声を聞いてあげることが必要でした。
私は、りんごの話に耳をかたむけ、りんごが望むことを考えるようになっていきました。そして、だんだんりんごと会話が出来るようになってきたのです。
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そして、カフェやショッピングモールではなく、りんごが心底楽しむことを私も一緒に楽しむように。海や、山や、川や、とにかく自然の中で遊びました。りんごの笑顔が見たくって。
写真を見るとわかりますが、どんどん表情も穏やかになり、控えめですがアイコンタクトもしてきてくれるようになってきました。
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りんごが8歳になって、あうんの呼吸で会話が出来るようになり、これから穏やかなシニア生活を向かえることになるんだろうな、って思った矢先にあの震災が起きました。我が家のある茨城県は、震度6の揺れに見舞われました。
そろそろお散歩に行こうかなと思っていた午後のひと時、庭を見ていたりんごが私が揺れを感じる前に庭に飛び出し、何かと思いりんごと一緒に庭に出たら、立てないほどの揺れ。りんごと庭の片隅で抱き合って揺れが治まるのを待ちました。
その恐ろしい揺れに、りんごもすっかり怖がるようになってしまい、しかも、茨城県は余震の回数も大変多かった。りんごも、地震が起きると、お風呂場に入り込んで震えるようになってしまいました。
毎日必ず揺れていた余震が二日おきくらいになった7月。りんごの体調がおかしくなってきました。免疫介在性血小板減少症と診断されました。
薬は副作用がひどくて使えない・・・免疫力が落ちてしまってひどい皮膚病になり・・・まだ、闘病中のことは、綴ることができません。4ヶ月にわたる闘病生活でしたが、私の意志を尊重して下さるドクターに巡り会い、そして、多くの友人に助けられ、私たち夫婦はその日が来るまで全力でりんごに尽くすことが出来ました。
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最後の最後まで私たち夫婦が望む方法でりんごは旅立っていきました。
8歳9ヶ月でした。
りんごを迎えた頃、先輩ママさんに、「りんごちゃんはゴールデンの雑種ね~」と、言われたことがありました。また、別の先輩ママさんには「りんごちゃんは、お買い得だったわよね~。」と。
ゴールデンの雑種でも、私たちにとっては最高のゴールデン、ショーに出すわけでもないし、関係ないって思っていました。そして、お買い得って言う意味も、血統書が立派じゃなくても、こんなにフレンドリーで優しく、アレルギーや大きな病気もないゴールデンは居ないんだから、本当にお買い得だったんだな、って思っていました。でも、こう言われたことは、ずっと、私の頭の片隅に残っていたのです。
りんごに教わったこと・・・・。
世の中にはブリーダーの乱繁殖や素人の繁殖で、遺伝子疾患を持っているゴールデンがたくさん居るということ。スタンダードとは程遠い体系や性格のゴールデンが、日本中に増えてしまっていること。りんごの早すぎる死はもしかしたら、そういうことから来ているのかもしれない。次に迎えるゴールデンは、OFAに合格した両親から生まれたスタンダードのゴールデンがいいと・・・・。
そして、犬にも気持ちがあると言うこともりんごからたくさん学びました。次の子を迎えたら、うちに来たその日から、その子の声に耳をかたむけようと。
また、保護犬も世の中に沢山居るということもりんごを育ててる間に知りました。次の子の選択肢に保護犬を迎えるべきじゃないかという思いもありましたが、私は、まだ、ゴールデンを育て上げたって言う気持ちにはなれなかった。
りんごがシニアに入る直前に亡くなってしまったので、もう一度一から育てて、シニアまで育て上げたいっていう思いが強かったのです。
そういう思いの中、ブリーダーを探しました。探し始めたのは、りんごが旅立って1週間。早過ぎるという批判の声もあちこちから聞こえてはきたものの、もうすっかり犬中心の私の生活に、犬がいないなんて考えられなかった。それに、なんとなく、りんごが後押ししている気がしていました。ゴールデンの居ない生活の中で、ゴールデンのことを忘れるどころか、ゴールデンの基本的なことを学ぶ気持ちになっていました。
スタンダードとは?ショーに出るゴールデンとは?遺伝子疾患にどんなものがあるのか・・・・。ちょうどその頃、GRCJに入会いたしました。
探せば探すほど、りんごとは容姿も体系も違う。でも、りんごに似ている子がいいし。美人さんぞろいのブリーダーの所は、震災の影響か子供が生まれないと・・・。りんごに似たゴールデンのブリーダーは、とっても可愛いと思ったのですが、OFAの検査などは受けてない。体系もスタンダードのゴールデンとは違う・・・。他のブリーダーの所では、スタンダードとされる体重よりかなり小さなゴールデンが産まれていたり。
そして、巡り合ったのです。りんごが小さい頃ペンションで遊んだことのあるゴールデンの飼い主さんが、紹介して下さいました。その子の兄弟が出産したと。やっぱり、りんごの次の子は、りんごが導いてくれました。
もう迷いはありませんでした。愛知県まで会いに行き、そこで会ったパピーたちは、びっくりするほどコロコロ太ってて足が太くて、素人の私が見ても健康そのもの。
その日はまだどの子がうちに来るのか決まらなかったのですが、後からわかったのが、パパの大きなお腹の上ですやすや寝ちゃった子が「のこ」だったのです。
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家族になると決まった子は、それはそれは、りんごとは似ても似つかない顔。まるでお饅頭のような大きな頭にまん丸なお顔。コートの色は、きれいなゴールド。足が太くて、コロコロなパピー。確か、りんごは、3キロしないでうちに来たと思ったのに、のこは、7キロを越えてました。
りんごに似た子を、って探していたのを知っていた友達は、爆笑。でも、その頃には、私は、りんごの代わりではなく、次の子として「のこ」を迎える気持ちになっていたのです。
りんごはりんごで天寿を全うし、りんごの代わりは誰にもなれない。のこは、のことして、新たな人生ならぬ犬生を歩んでもらいたい。
りんごが居たおかげで、私たち夫婦は、犬とのコミュニケーションのとり方をすでにわかっていました。なので、のこは、生後半年ですでに、日本語のわかるゴールデンレトリバーに成長していました。
自分の気持ちを抑えてしまいわがままは一切言わなかったりんごと違い、のこは自己主張ばっちり。喜怒哀楽も激しい。これは、私がりんごに望んでも叶わなかったことでした。もちろん、わがままし放題ですと、苦労するのは飼い主の私たちなので、ダメなことはダメとはっきり伝えます。
伝え方もわかっているので、のこはすぐに理解してくれます。また、出来なくても、大暴れしても、私たちはいづれやらなくなるだろうっと、おおらかな気持ちで、のこと接することが出来ます。引っ張る力はすごいのですが、まぁ、さほど悩まず、楽しく子育てが出来てますね。
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こんな、りんごとは全く違うのこですが、ひとつだけ、りんごと全く同じことがあるのです。それは、誰とでもフレンドリーに遊べること。りんごは、喧嘩はもちろん、生涯一度も威嚇さえしたことがありませんでした。のこも、りんごのようにフレンドリーに育ってもらいたいと思い、ワクチンが終わる前から、りんごの友達のワンコたちに家に来てもらい、社会化を学んでもらいました。そのお陰で、今では、どんな子とも仲良く遊べます。
小さい子には身体を小さくして挨拶し、怒られれば身を引き、威嚇もなし。相手が嫌な顔をすれば、しつこくしません。ただ、相手が遊びたがれば、ノリノリで遊びます。
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りんごの一番いい性格の部分を引き継いでるのこ。それでいて、りんごには無かった、ストーカーのような甘えん坊ののこ。しつこいほど抱きしめても、逃げていかないでむしろ体を預けて甘えてくるのこ。袖を引っ張って、パパ遊んで~って訴えてくるのこ。我が家に来て、まだ1年ですが、もう無くてはならない家族となりました。
愛するパートナーを虹の橋に送っても、体力が続けば、年齢が許されれば、ぜひぜひ、次の子を迎えてほしい。絶対に、前の子が残してくれたものを実感することが出来るから。
最初の子の良さが、最初の子に対する愛情がますます深まるから。そして、素晴らしい犬生活を、再び味わうことが出来るから。