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【MBTI】あれ? 私のおじいちゃんのタイプって……

 皆さんのおじいちゃんは優しかったですか?
 私のおじいちゃんはバリバリの共産主義者でした。母方の祖父で、私にとっておじいちゃんといえばこの人を指します。
 父方の祖父は私が生まれる前に亡くなっているので、話したことすらないですからね。

 さてその母方の祖父であるが、山奥に大きな屋敷を構え、広大な庭と山林を保有していた。そしてソ連が崩壊した後もずっと共産主義を信じていた。十代の頃にマルクス主義に傾倒し、それ以来ずっと与党を憎み続けていたのである。
 当たり前だが山奥の農村は、住民の大半が自民党支持だ。誰もが農業をやっているので、農家に一番多く補助金をくれそうな政党を支持するのである。特に深い考えもなく、

「おらが村に銭を落としてくれそうな議員センセを支持するべ」

 となるのだ。
 祖父はそれが許せないようで、

「お前達は何も考えていない、国家観がない、政府の犬だ、アメリカの犬だ」

 と若い頃から何度も近隣住民との揉め事……議論を巻き起こしてきたらしい。町内の会合に誘われるたびそうやって政治論争をし、時には怒り狂った農家が掴みかかってきたこともあるそうだが、容赦なく暴力を振るって撃退したそうである。
 祖父は大柄で筋骨隆々だったので、まず殴り合いで負けることはなかっただろう。
 おかげでご近所中に恐れられており、存命中に客人が訪問してきたことはほとんどなかった。祖母は何人か友人がいたのだが、祖父の友達というのはついに見たことがない。そもそも彼は大の人間嫌いで、血縁者以外は誰も信用していなかった。なんか門の前に漢語で「嫉妬深い人間は入ってくるな」みたいな標語も書いてあったし。

 祖父は子供の頃から人付き合いが苦手だったようで、周りに攻撃されては反撃するということを繰り返していたようだ。青年期もずっと単独行動を好んでいたと聞いている。

「世の中馬鹿しかいない」

 が口癖の、孤高の男だったのだ。
 祖父にとってこの世界は「敵」「愚か者」「身内」の三種類しかおらず、油断すると食われるという世界観で生きていた節がある。
 ここまでの情報からは喧嘩っ早くて粗暴な人物を連想するかもしれないが、むしろ普段はとても物静かな人だった。趣味は読書で、大抵はソファに寝転がって難しい本を読んでいた。とにかく資本主義をヨイショするような発言さえしなければ良い人なのだ。持論を守るためなら容赦しないだけで、本来の気質はインテリである。
 そう、祖父はとても頭の良い人だった。本棚には小説や共産主義の本やよくわからない専門書がズラリと並んでいた。貧しい農家の生まれなので学歴はないが、蔵書の内容はきちんと理解していたようである。その証拠に独学で様々な技術を身に着け、住宅の設計に小屋の建設に浄水設備の製造と、なんでも自力でこなしていた。
 己の頭脳と電卓のみを頼りに図面を引き、その通りに組み立てると複雑な設備が出来上がる。明らかに理系の素養がある人物だった。
 祖父はその能力をフルに発揮し、なんと自分の屋敷の設計も行っていた。さすがに施工となると大工の力も借りたようだが、それでも大部分はメイドインおじいちゃんである。
 おかげで世間が思い描く「田舎のおじいちゃん家」とはかなり様相が異なり、要塞の如き防御力を誇っていた。
 祖父は一体あの家で何を守ろうとしていたのか?
 おそらく家族であろう。
 彼の愛情表現は「守る」「アドバイスをする」「物を贈る」といった感じである。あの人が家族に愛してるとか可愛いとか言ったことは一度もないはずだ。当然、孫にとってもそれは同じ。
 私は祖父の家に遊びに行くと、よくお絵描きをして遊んでいた。そして一枚完成させるたびに「おじいちゃん、できた!」と見せびらかすのだが、褒めてくれることはまずなかった。

「そこは普通、青色だろう」

 とか、

「蝶々はそんなに大きくない」

 とか、そういったアドバイスが飛んでくるだけだ。
 ちぇー、褒めてくれてもいいのになーと思うのだが、それでも祖父が私を悪く思っていないのは伝わってくるため、私は飽きずに絵を見せびらかしていた。
 祖父の眼光はヤクザや戦国武将のように鋭かったのだが、怖がりな私が全く威圧感を感じなかったということは、孫に対してはちゃんと愛情を抱いていたのだろう。きっと庇護対象として見守っていたに違いない。
 実際、彼は女子供を守ることにはとても気を配っていた。

 私の祖母はすぐ「もう死にたい」と口にする悲観的な性格で(私との確かな血の繋がりを感じる)、それが災いしたのか嫁いできたばかりの頃、近隣の奥様連中に虐めを受けたそうなのだ。
 祖父はそのことを死ぬまで根に持っており、定期的に近所を巡回してはあちこち睨みつけていた。目つきの悪い彼が肩をいからせて周囲に殺意を振り撒くと、空気がビリビリと震えるかのようであった。
 二度と俺の妻に危害を加えるな、と猛烈な圧力をかけていたのである。
 また私の母に対しても一度も手を上げたことはないそうだ。言葉こそ厳しかったものの、物理的には優しかったらしい。
 ちびまる子ちゃんに出てくる友蔵のような、穏やかな優しさこそなかったものの、祖父なりに親族を労わっていたのがわかる。

 彼の人柄を象徴するような出来事がある。
 祖父は私と一緒に山を登る時は、大抵チェーンソーを持ち歩いていた。
 木を切る予定がなくても手にしていたので、きっと熊と遭遇した時に斬殺するための護身グッズだったのだろう。祖父が一人で山登りする時は手ぶらなことが多かったので、孫を守るための行動だったのが伺える。
 そして私が山歩きに疲れ始めたら無言で湧水をコップに汲み、目の前に差し出してくる。「飲め」ということである。
 私が一気に飲み干して「水道の水よりおいしい!」と元気を取り戻すと、祖父はまた歩き出す。私達はそんな距離感だった。
 思えばおじいちゃんには色んなことを教わった。資本主義は狂ってるとか、このままでは日本経済は駄目になるとか、ソ連はやり方を間違えただけで北欧のように正しく社会主義を運用すれば豊かな国になるとか……孫に一体何を言い聞かせてるんですかねあの人は。
 私が資本主義を嫌いなのはINFPだからって理由の他に、何割かは祖父の影響なのでは……。
 あとお寺に連れて行かれて地獄絵図を見せられて、「盗みや殺しをしたらこんな風になるぞ」と教わったこともあったなぁ……。
 まあ、祖父なりに孫を教育したかったんだと思う。
 もっと色んなお話がしたかったけど、残念ながら数年前に癌になってあっさり亡くなってしまった。
 でもウィルスや病原菌ではなく、自分自身の細胞に敗れたあたり実に祖父らしい死に方と言える。あの人は最後まで他の生き物には負けなかったのだ。
 

 さて長々とおじいちゃんの昔話をしたが、実はこれには目的がある。
 あの人のMBTIタイプを特定したかったのだ。

 まずE型かI型かだけど、これはどう見てもI型でしょう。
 人付き合いの悪さが只事ではないし、いつも自分の世界に入り込んで考え事ばっかしてたもん。

 次いでS型かN型かだけど、明らかにN型。山間部の農村地帯でひたすら共産主義に傾倒していて、まったく常識に合わせるつもりがない。
 それによく日本の未来や世界の未来について語っていた気がします。このまま資本主義を続けたらどうなっても知らんぞ、とひたすら先を憂いておりました。今この瞬間よりも百年後に関心があったように感じますね。

 で、F型かT型かでいえば見るからにT型。
 
人懐こい感じは全然ない。無駄な共感も示さない。論理的で問題解決を第一に動く昭和の男である。おじいちゃんが感情論に引っ張られたことは一度も見たことがない。
 

 どうやらINTまで絞れたようですが……。
 こうなるとINTPかINTJの二択。で、この二つの見分け方ですけど、ぶっちゃけ「強そうか弱そうか」で判別できると思ってます。
 INTPはふわふわしてるというか圧力がないというか、エニエグラムだとタイプ5か9が多いらしいですからね。
 それに対してINTJは強そうなインテリというか……エニアグラムだと5と8が多いとされています。

 ああ……そっか。
 私のおじいちゃんって、INTJだったんだ。
 まあNT型っぽい知識人オーラはあったしね~。
 あとエニアは8だよねえこの雰囲気だと……。
 山奥に要塞を作って、女子供を守りながらギラギラ周囲を警戒することに命かけてたもんねえ……。

 以上が私の考察ですが、INTJの皆さん、どうですか? おじいちゃんは貴方達と同じタイプだと思いますか?

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