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本音を言えば全人類と結婚したい

 自分の欲望を包み隠さず明かすと、こんな風になってしまいます。
 本当は世界中の男性を夫にしたいし、世界中の女性を妻にしてみたいんですよね。だって私は皆のことが大好きですからね?

 80億の人類が「まふゆちゃんだけが好き!」と絶叫して、私も「うん、みんなのこと好き~♡」と答える。
 これこそが私にとって理想の世界なのですが、倫理的にも物理的にも絶対に許されないので妄想でしかありません。困ったものですねー。
 仕方ないので私は小説家となり、自分の分身であるヒロインに読者達が好き好き言ってくれてるのを見て憂さ晴らしをしているわけです。創作物なら合法的に大勢の人間を誘惑できるんだから、素晴らしいことですよね。万人に愛されたい、という尽きることのない承認欲求を生活費に変換できるんだから天職だと思ってます。

 さてどうして急にこんなオタサーの姫LV99みたいな発言をし始めたかというと、Xを見ながらMBTI診断ごっこをしてたのが原因なんですよね。
 面識のない人のポストをぼーっと眺めて、「この人私と同じINFPなのでは?」とあたりを付ける。で、実際にプロフを覗き込んでINFPと書いてあったら私の勝ち。いえーい! 
 そんな遊びをしているうちに気付いたのですが、「この人私と価値観似てるなあ。絶対同じINFPでしょ」と確信した人はかなりの確率で性産業に従事してました。
 
もちろん職業に貴賤などありませんが、少し思うところはあります。
 あれなんですよね。「今日めっちゃキモイ客きた! 嬢が客を好きなわけねーだろ!」的な発言をしてる人はあんまINFPっぽくないんですよ。

「お客さんに可愛いって言ってもらえて嬉しい~」
「私で気持ち良くなってくれて幸せ~」
「普通の会社よりこのお仕事の方が私に向いてる~」
 
 みたいなネジの飛んだ人懐こさを放ってて、体を売るお仕事を天職っぽく語ってる人がいたら「私と同じINFPかもなぁ……」ってなるんですよね。そして今のところ結構な確率でタイプ判定が当たってたりします……。
 
 思えば私のお仕事って彼女達と紙一重な気がしますもんね。架空のヒロインになり切ってたくさんの男性読者に媚びて愛をせがんでるわけですし。
 私はたまたま小説を書く方向に進んだだけで、一歩間違えれば体を売る方向に向かっていた可能性は十分あります。というかそういう人生でも満足していたであろうと容易に想像できるので恐ろしくなります。
 だってどんなに馬鹿にされようが貶されようが、たくさんの人に好きとか可愛いとか言ってもらえるならそれで幸せですからね。皆に嫌われる総理大臣と皆に愛される娼婦だったら、後者の方がマシじゃないかと本気で思ってしまうくらいには愛に飢えてます。Te劣勢ってこういうことなんでしょうね。社会的地位もお金も要らないから、とにかく目に映る全員に好かれたい……。

 今にして思うと、この「愛されたい」という衝動を制御できないばかりに色々やらかしてきた気がします。
 私は十七歳くらいの頃からネットで小説を公開するようになったのですが、幼さもあって危うさ全開でしたね。
 なんというか……自分の作品に感想を書いてくれた読者に距離感のバグった返信を繰り返していました。
 当時の私のコメント返しを再現するとこんな感じになります。

 わ~感想ありがとうございます! 
 コメント凄く励みになってます、これからもいっぱい私の作品を読んでくださいね! 私も〇〇さんが大好きです! 
 あと、他の人の作品に感想付けてるの見てると嫉妬しちゃうので、私だけ見ててほしいです……。私だけのファンでいてほしいです。

 大人になった今ならわかるんですが、かなり不味い雰囲気を放ってますよねこれ。特に異性に送ったら誤解を生む匂いがプンプンします。
 しかもオープンなコメント欄でやるだけならまだしも、DMでもこの調子でしたからね。
 お察しの通りいくつかの致命的なトラブルを招いたあと、常識的な距離感を身に着けて(身に着けたつもりですよ?)今に至ります。
 でも根っこの部分はこの頃から何も変わってないんですよね。
 本当は商業デビューした今でも読者にこういうDMを送りたくてたまらないんですよ。

 〇〇君、いつも私の作品読んでくれてるよね。初版で本を買ってくれてるの知ってるからね。ちゃんとエゴサしてチェックしてるもん。〇〇君の感想を読むと凄く元気が出てきます。私のヒロインのセリフはね、全部君みたいな読者に向けて書いてあるんだよ。これからもずっと私の作品を好きでいてね。私も君のことを好きでいるからね。他の作家に浮気なんかしちゃダメだよ? そしたら泣いちゃうからね。

 ああ、こういうDMを片っ端から送りたいなぁ……、
 本心なんだけどなぁ……。
 本当に本当に読者のことが好きなんだけどなぁ……。
 別にこれをやって人間関係が壊れても構わないから、読者の心を永遠に私の元に留めておきたいなぁ……。
 
 ……はっ!
 
 危ない危ない、承認欲求と独占欲が危険水域に達してました。
 もちろん私にはちゃんと理性があるのでそんな不道徳なことはやりませんよ。めっちゃやりたいですけどね。
 
 そういえば「愛されたい欲が強いならアイドルも向いてるんじゃない?」と言われたことがあるんですが、絶対無理だと思います。
 だって私がアイドルなんかやってたら、二秒でファンと繋がりに行きますからね。
 
私のことを好きでいてくれる人を好きになっちゃいけないって、そんなの無理じゃないですか? ましてや直にファンの顔が見れるアイドルとなればねえ……。
 私だったら即座に裏垢を作って自分のトップオタと接触を持ち、贔屓しまくるでしょうね。
 なんならステージ上で「実は私、ファンの中に好きな人がいまーす!」とマイクパフォーマンスするかもしれません。そして運営に怒られようがグループが解散しようがどうでもいいや、と開き直って大ちゅきなファンと駆け落ちしてフェードアウトってところでしょうか。最悪のメンバーですね。

 そう考えるとファンを顔を合わせずに媚びまくれるクリエイターの方が絶対向いてることになります。
 いやー本当に作家になっておいて良かった!

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