油断大敵な、夫と妻。
「今日、南野さんとふたりで散歩した」
夫が帰宅するなり、そう言った。
南野さん(仮名)とは、夫の勤め先の女性事務員さんだ。もう一度言う、女性だ。男性ではない。
自己申告とは、いさぎよいではないか。
よかろう。話を聞こうではないか。
妻は本腰を入れて、「続きをどうぞ」と促した。
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ことの経緯を説明する。
この日(3月21日9時ごろ)茨城県南部で地震があった。最大震度5弱。
東京のオフィス街は、最新の技術とテクノロジーを象徴したビルが立ち並ぶ。揺れの程度は最小限に抑えられたとしても、自然の力には叶わない。地震は、私たちの日常をいとも簡単に変えてしまう。
幸い、この地震で人的被害はなかったとニュースで知った。良かった。安心した。
夫の職場のビルも、もれなく揺れた。
真新しい建物のため、すぐに仕事に戻れる程度であった。
だが、夫の隣の席に座る南野さん(女性事務員さん)の手は、震えが止まっていなかった。
「大丈夫です」と強気な言葉を発する彼女に、夫は「外に散歩でも行く?」と声をかけた。
散歩の中は、地震の話をするでもなく、仕事の話をするでもない。本当にたわいもない話をしていたとのこと(妻は真相までは知らない)。
その時間は10分ほどで、ふたりでオフィスに戻り、仕事を再開したとのこと。
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夫よ、、!
あなたはなんと尊い人なのか。
先ほどまでの喧嘩腰は、もの腰やわやかくなっていた。
夫は、深く考えず行動に移している。いつもお世話になっている人が困っていれば、助けになりたい、その一心で。そこに損得はないからこそ、相手も安心して提案を受け入れられるのだと思う。
私が南野さんの立場だったら、夫の行動を受けて、恋心が芽生えてしまうかもしれない。既婚者だと分かっていても、「好き」という気持ちは、別物。止められない。
こんなことを書いていると、私が不倫賛成派と思われる方もおられるだろう。
賛成 or 反対… うーん。
正直なことろ、どちらでもない。正確に言うと、どうでもいい。
今回の散歩スキャンダルを受けて。
「こんな素晴らしい人を、私だけがひとりじめしていいものか」
と思った。
もし日本で一夫多妻制が認められていたら。夫が第二婦人を望んでいる、または第二婦人になることを望んでいる女性がいるとしたら…
私は迷わず夫に同意する。
お金の余力はもちろんのこと、心と時間にもある程度のキャパシティーが必要になる。全ての方が叶えられることではない。叶えられる方が叶えたらいい。私はそう考える。
私の考えを夫に伝えた。
「あかんあかん!なに言うてるん!笑」
どうやら、夫自身が、不倫反対派、一夫多妻制は受け入れない派だったらしい。
一件落着。
最後に、私が尊敬するデヴィ・スカルノ夫人のお言葉を紹介する。
夫の言葉に甘えすぎぬよう、妻は日々精進していくと誓った。