【一駅日記】日々の翳りが ー 2023.12.14
ドラムのキックから始まらなければ。
「花束を空に放つよ。」じゃなく「投げるよ。」だとしたら。
日々の翳りが、日々の陰りだとしたら。
きっと、出会いは変わっていたのだろう。
仕事を終わらせた夜、渋谷の陸橋を歩いている。
私の前には光り輝くビルと、爆ぜるように灯を照らしながら前にしか進むことのできない車たち。
こんな夜は、死にたくなる。
ああ、ええと、正確には死にたくなっていた。
これまでは。
今の私は死にたくはならない。
だけど、死にたくなった夜を後悔したことはない。
ない方がよかったよそりゃ。
あの夜がなけりゃ、あんなに苦しんでないし。
殺してやりたい人は相変わらずいるし、風呂場に伝う水滴を眺めながら誰かを思い浮かべて、潰す瞬間は今でもある。
だけど、死にたくなった夜は、非常に尊いものであった。
死にたくなった自分との出会いは、すごく価値のある出会いだった。
どっかのセミナーに行くより、どっかの知らないYouTuberが帯にコメントを寄せているビジネス本を読むより、価値があった。
今週は何かがおかしい。
集中できないのだ、何事にも。
音楽も聞いていられない、ポッドキャストも聞いていられない。
仕事なんてできたもんじゃない。
8時間プラス残業6時間、座ってられない。
パソコンを眺めて、マウスを握るだけのこと。
なのに集中ができない。
それは寒さのせい。
それは寒暖差のせい。
それは仕事で疲れているせい。
それは彼女に会いたいせい。
それは寝不足のせい。
それは大谷翔平が異次元すぎるせい。
それはサッカーのシーズンが終わったせい。
それは後輩が一向に成長してくれないせい。
それは、それは、それは。
日に日に思うことは、
ああ、やっぱり私は会社員きついな。
いらないところで気を遣いすぎる。
何でも上手くやろうとしてしまう。
どんどん首が締まっていくような。
多分、やろうと思えば卒なく社会人はこなせる。
社会に、会社に適しているように見せることはできる。
だから、余計に自分が空中分解していくような感覚だ。
100人近くいるこのオフィスエリアで、
1人ただただぷかぷかと浮いて、漂っている感覚。
突然音信不通になって職場に来なくなる人には、私はなれない。
適していないのに適応できてしまうことで、自分がバラバラになる。
だからきっと、高い場所から1人で街並みを眺めていると、気持ちが前に進むのだろう。
退勤してイヤホンを、耳に押し込む。
「翳りの讃歌」が流れる。
ああ、この音楽を聴いていると、私は死んでもいいやってポジティブになれる。
君も私も、自分で。
右も左も、自分だ。
この作品の始まり方がこうじゃなければ
この作品のタイトルが違えば
きっと好きになっていなかったのだろう。
どこに進めばいいのか分からないままだが
分かっていない私の右脚が踏み出した先に
きっと意味が生まれてくるのだろう。
分からないことは分かろうとしなくていい。
分からないまま、空に浮かぼう。
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